10.試験
10.試験
鬼押出し園を出てロマンチック街道を北上。いよいよ宿泊地の草津温泉に入る。例によってガイドは草津温泉にまつわる話の中に試験の答えを上手に交えてくれている。そしてバスは宿泊宿である草津温泉ホテルリゾートに到着した。
「今日は一日ありがとうございました」
日下部はドライバーとガイドに挨拶をしてホテルのフロントに向かった。夕食の時間やその他の諸注意を聞くためだ。その間、メンバーはロビーで待つ。最後に鍵を受け取りみんなが待つロビーに戻る。部屋割りは旅行プログラムに記載されている。各部屋の責任者に鍵を渡し、部屋へ移動する。
「部屋に着いたら一旦幹事部屋へ集合してくださいね。お約束の試験を行います」
集まった順に問題用紙を渡す。渡されたものから順に問題を解いていくことになる。時間制限はない。
「皆さん、試験を受けるのは分かっているので、当然、筆記用具は用意していますよね」
「あっ!」
やっぱり居た。毎回必ず居る。筆記用具を持たずにどうやって答えを記入するんだ!
「日下部さん、なにか貸してもらえますか?」
「まあ、そうなると思ってちゃんと用意してありますよ」
日下部は事前に用意しておいた消しゴム付きの鉛筆が入ったケースを取り出した。そうこうしているうちに名取が早くも答案用紙を持って来た。相変わらず早い! しかもそれでいて名取は毎回好成績を収める。
「風呂行って来ます」
そう言って名取は一足早く風呂へ向かった。それから次々と答案用紙を出しては自分の部屋に戻っていく。
「考えても解からない者は解からないか…」
そう言い残し川島も早々に答案用紙を提出する。最後に残ったのは柿沢だ。
「時間制限は無いんだよね? もうちょっとで出てきそうなんだけど出てこないんだよね…」
気持ちは解かる。柿沢は前回の試験では16人中14位の成績で、点数は僅か27点だった。27点は普通の試験なら赤点だ。しかし、それより下が後二人も居たのが前回の試験だった。そして、そのうちの一人が前述の川島だった。ようやく観念した柿沢が答案用紙を置いて部屋を出ると、日下部は早速採点を開始した。




