7話、決闘
冒険者になるにしても、魔術師、魔道騎士になるにしても戦いは避けられないだろう。
悪魔や魔族、魔物だけではなく人同士でも。
故にどの学園にもドーム型の決闘場が存在する。この学園には4つあり、その一つ「第一決闘場」の中心に2つの影がある。その周りで影を見る多くの視線。
噂を聞きつけやってきたこの学園の生徒のもの。 生徒って言ってもほとんどが2、3年生だ。人数はおよそ40人。突然決まった決闘の観客にしては、だいぶ多い。それもそのはず「自主練なんか面倒くさい」そう思っているところに、双狂のヴァルタが「今年入った魔法が使えない落ちこぼれをボコす」って言っているんだ。暇潰しには丁度いいと思って集まった人がほとんどだった。
『あれが無剣の使い手?』
『なんだか弱そう』
『おいおい嘘だろう。魔法が使える俺たちが負ける相手に魔法なし?!』
誰もラルの味方をするものはいなかった。
「本当にやるのか?今なら泣きながら謝れば許してやるぞ」
少し可哀想になったのか、逃げるチャンスを口にした。
「あぁ、やるさ。君のような人間が一番嫌いだから…」
そして決闘の始まりの合図が
『3,2,1,開始』
始まった双狂と無剣の戦いが。
開始の合図と同時にラルはヴァルタに向かって走り一刀を振り落とす。
ヴァルタはその攻撃を大剣で弾き、1発、2発とラルに追撃をいれ攻め入るチャンスをゆるさなかった。ラルは隙き無く飛んでくる剣を防いで、また一歩と少しずつ後ろへと下がっていく。その戦いはまるでライオンに襲われているシマウマがギリギリで逃げ切っているかのように。
『やっぱりあの無剣押されっぱなしだ』
『ギリギリのところで精一杯逃げてるって感じ』
『そうそうにケリがつきそうだ』
予想内の結果に観客がざわめきだした。ただ一人違和感を感じているものがいた。
受け止める事を許さないヴァルタの剣が押し返され始めているからだ。
(何だこのガキ。俺の剣を受け流している!?)
ここで初めてヴァルタがこの決闘で大きく一歩後ろに下がった。
「逃げるのだけは上手いじゃないか〜」
焦りを隠すように言い、相手の心を揺さぶるように挑発した。
「いくらお前が逃げるのが上手かろうがお前の剣は俺には通じない!」
「そんな事はないさ、やってみないとねっ!」
そう言うとラルは地を蹴った。
戦いの風向きがかわった。
そのことに観客は言葉を失った。滅多なことが無い限り褒めないヴァルタが褒めた。それすなわちヴァルタが認めた事を意味する。それどころか認めたどころではなかった攻撃すればするほどなめらかに攻撃を返して反撃。
環境に慣れたシマウマは進化してライオンを襲う。もはや恐怖でしかない。そんな現象が目の前で起こっているのだから。
ヴァルタが上から下に振り下げた大剣をラルが大きく横に弾き、ガラ空きの銅を薙ぎ払った。
そしてライオンはシマウマに負けた。誰もがそう思った。
双狂のヴァルタ
バディで恐れられてる『双』
始めて書くバトルシーン難しかった