結局外道なのが1番強い
「最近さぁ、どーも皆んなが俺を敬ってない気がするんだよ、お前はどう思うよ?」
まだ夏も半ばの昼下がり、俺は一人円卓に座りテーブルの上に乗せている鶏に問いかける。
しかし鶏は何も答えてくれない、ただつぶらな瞳で見つめ返してくるだけだ。
領地の民はアズリエルさんアズリエルさん、兵士の奴らはトリスタントリスタン、確かにアズリエルさんの功績は凄いし軍資金で街の拡張したりしたし?トリスタンは入団そうそう兵士に合わせて頭を丸刈りにした凄いやつってなってるけどさ?
アズリエルさんの方はわかるんだよ、でもトリスタンはただハゲてるだけで皆んなが勘違いしただけなんだよ。
「まぁ百歩譲ってそれは良いとしてさ、その二人と比べられて今まで以上に俺への不満が強いわけよ!」
テーブルをダンッ!と強く叩くと、鶏は俺を激しくつついて廊下に飛んで行ってしまった。
「お前も・・・俺を裏切るのか・・・」
俺は少しアンニュイな気持ちになりながら、鶏の後を追うようにホールの扉を開ける。
そして無表情に地面を見る。
「・・・」
「・・・いや、違うんだ。違うんですアーサー王」
扉の先で大の字に寝転がっているトリスタンを無視して行こうとしたら、トリスタンからチャットが流れる。
「違うも何もお前何してんの?ウチは自由主義だが常識的なルールを踏まえて自由だからな?」
「わかっている、わかっているとも!私とて勇者、その辺の礼節はわきまえている!」
トリスタンは寝転がったまま弁明を続けると、急に真剣な表情を浮かべる。
「実はカツラ殿が先ほど鶏とぶつかった際に飛ばされてしまったのだ」
「・・・それで?」
「私はカツラ殿になけなしの毛根を譲渡してしまったからな、呪いの効果でカツラ殿を被っていないと指一本動かせないんだ」
指一本動かせなくなるくらい毛根を渡したって・・・それもう将来的希望も無くなったと言えるんじゃないか?
しかしふむ。
「そこで頼みがあるのだが・・・アーサー王、その位置は少し恥ずかしいので移動を・・・」
尚も説明を続けるトリスタンの足元に移動してしゃがんでいると、理不尽にも文句を言われてしまった。
「おいおいお前こそ人に物を頼む態度じゃないんだからお互い様だろ、大体床に寝転んでるやつと話す位置なんて俺にもわからんからな」
「そ、それもそうなのだが・・・その・・・すまん、私が悪かった」
「分かればよろしい」
トリスタンは顔を真っ赤にしながらも説明を再開する
ちなみにどうでも良い情報だが彼女は黒だ、何が?とは言わないが。
「それで?頼みって?」
「ああ、カツラ殿はカツラ故に自分で動く事が出来ないだろう?このままでは行方不明になってしまう」
あれは物だから行方不明では無いと思うが・・・
「というかトリスタンよ、お前はカツラを洞窟で見つけた時に言ったよな?」
「な、何をだ?」
俺は立ち上がると、寝転んだまま頭の上にクエスチョンマークを出すトリスタンを見下ろす。
「私がちゃんと世話するから城で飼うことは出来ないだろうか?もし出来なかったらアーサー王の言う事を何でも聞くと」
「そこまでは言ってないはずだぞ!?」
いや、トリスタンの言葉は俺の灰色の頭脳にしっかりインプットされている、多少の言葉違いはあるかもしれんが大体合ってるはずだ。
「今回のこれは・・・完全に俺の手を煩わせてるよなぁ?」
「う、それは・・・」
「お前は言わなくても俺の世話んしてくれるし、出来る女だと思っていが・・・残念だ」
トリスタンは俺が見せつけるようにシステム画面を開くと、慌てたようなアイコンを頭の上に浮かべる。
「ま、待てアーサー王!わかった、私の出来る範囲であれば何でもする!だから解雇はしないでくれ!」
「そうか・・・」
溜息を吐きながら、インベントリからカツラを取り出す。
「なぁ!?何故アーサー王がカツラ殿を!?」
「こいつはユニーク防具枠だからな、無くなっても所有権を持ってる俺が装備を外したらインベントリに戻ってくる」
『おいおい、俺を防具呼ばわりとは偉くなったもんだな?お前のしけた毛根も吸い尽くすぞ?』
物騒な事をぬかすカツラを無視してトリスタンの頭に乗せる。
「お、おお・・・カツラ殿、よくぞ帰ってきてくれた」
『ったく、嬢ちゃんは俺がいないと何も出来ないなぁ』
カツラは少し嬉しそうなアイコンを出すと、髪をワイルド系の薄緑色に変化させる。
『こいつぁゴブリン共に世話させてた時にエンカウントしたフォレストウルフの毛だ、ワイルドだろう?』
「ああ、ああ!流石カツラ殿だ!」
いやそれって髪じゃなくないか?
何か感動的なシーンっぽい演出してるから言わないけど・・・というかカツラは毛なら何でも吸収出来んのかよ・・・
涙を流しながら祈るポーズをするトリスタンに咳払いを一つ。
「ところでトリスタン、お前さっき何でもするって言ったよな?」
「え?あ!?いや・・・」
トリスタンは一瞬ポカンとした表情を浮かべるが、何かに気づいたように顔を青くする。
「・・・ハメたなアーサー王?」
「んー?何の事かなぁ?」
トリスタンの恨みがましい視線を受け流しながら、俺はどんな要求をするかニート細胞を働かせる。
俺の世話んさせる?いや、こいつは普段から甲斐甲斐しく俺の世話してるし・・・
エロいコスチュームを着せる?悪くないがいかんせん手持ちにそんな装備は無い。
一発やらせる?残念だがこのゲームは成人用じゃないから無理だし・・・
灰色の頭脳を巡らせていると、急に背後から悪寒を感じる。
「はぁはぁ・・・アーサー、緊急事態です・・・じゅるり」
「のわぁ!?いきなり俺の背後に立つなぁ!?」
いつのまにか俺の背後で荒い息をするランランから距離をとる。
「っち!もう少しアーサーの尻を眺めていたかったですが仕方ありませんね」
ランランは心底残念そうな表情を浮かべると、真剣な表情にエモーションを変更させる。
「魔王軍が大規模な戦闘行為を開始しました。現在我が領北の領地が次々吸収されていっています 」




