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落ち込んだ幼馴染を励ます(糖分多め)

砂糖を少々入れておきます

【これは俺とサラがお互いの気持ちを確かめ合ってからすぐの頃のお話】



 俺と付き合い始める前から『神女優』として高い評価を受けていた紗良ではあったが、そんな紗良にも天敵と言える存在がいた。



――演出家、宮本新九朗みやもとしんくろう



 日本を代表する演出家であり文化勲章も受賞している業界きっての大物だ。


 確か去年喜寿のお祝いの会が開かれたというニュースを聞いた記憶があるので結構なお年の方だ。


 紗良はその大物演出家が取り仕切る、とある舞台の主役に抜擢されて今は稽古の真っ只中だったりする。


 いつもはうちに来る日を事前に決めてから来るのだが今日は突然、何の前触れもなくやって来た。



「サラ……大丈夫か?」


「……大丈夫じゃ、ない」


 俺の問いに紗良はぽつりと呟くように言った。


 最早家族同然となったうちの家族と一緒に晩御飯を食べて今は俺の部屋で二人だけで過ごしている。


「そんな端っこにいないでこっちに来たら?」


 俺は部屋の隅で床に体育座りをしてうずくまっているサラにそう声を掛けた。


 俺はベッドに腰掛けてその隣をポンポンと叩いてサラを誘う。


 しかし、サラはチラっとこちらを一瞥しただけで腰を上げる気配はない。


 話を聞くに、今日の舞台稽古で件の演出家にけちょんけちょんに演技をけなされたらしい。


 あくまでも俺の考えだが、芸術関係はどうしても好みというものがあるから、全ての人から高い評価を受けるというのはすごく難しいことだと思う。

 そしてこれまでの話を聞くと、どうやら紗良は今回の演出家さんとはどうにも反りが合わないとしか思えない。

 しかし、紗良曰く、今回その舞台に出ることになったのはその演出家さんの指名があったからだそうだ。

 正直訳が分からない。

紗良の演技が気に入らなければ紗良を使わなければいいのに。しかも主役でだなんて。

 紗良も紗良で、話が来た以上は逃げるわけにはいかないとか言って敢えてその指名を受けたとか。

 凡人の俺には理解ができない世界だ。


 そして俺の目の前にはその理解できない世界で傷ついた大事な恋人がいる。


「ほら。サラ、おいでっ」


 部屋の隅でどよ~んとした空気を振り撒いている幼馴染であり恋人でもある彼女の元へと歩み寄り手を伸ばす。


 体育座りのままうずくまっているサラがちらっと顔を上げたがすぐに顔を伏せた。


 う~ん、今日はかなりの重症だ。


 いつもは声を掛けただけでこっちに来てくれるのに今日は文字通り腰が重い様だ。


「サラはよく頑張ってるよ。大丈夫、まだまだこれからだよ」


 俺はサラの傍まで行くとサラの頭を撫でながら耳元でそう囁いた。


「ホント?」


「ああ、サラはまだ高校生、10代じゃないか。まだまだ人生経験も足りないし、学ぶことはいっぱいあるはずだよ。少しずつ頑張っていこう」

 

 顔を上げたサラの頭を撫で続けながらそう励ました。


 風呂上りでサラサラの絹糸のような髪の毛の感触が心地いい。


 ふわっとシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。俺と同じシャンプーを使っているはずなのにどうして女の子からはこうもいい匂いがするのだろうか。


 これは俺の中での七不思議の一つだったりする。


「慎ちゃんも協力してくれる?」


「ああ、俺たちはずっと一緒だ。二人で一緒に頑張っていこう」


「うんっ、一緒に頑張るっ!」


 ようやく天の岩戸が開いたかのようにサラ顔を上げて俺に抱き付いて来た。


「ほらっ、こっちで一緒に寝よう」


「うんっ!」




 サラ曰く、俺からパワーを補充しないと欠乏症になるらしい。


 あまり深刻ではないときは軽くハグする程度で補充できるそうなので、そのときにはそれぞれ別々に寝る。


 しかし、深刻なときにはベッドで一緒に寝るようにしている。


 今回は一緒に寝ないとダメなのは最初からわかっていたので電気を消して一緒にベッドの中へと入る。

 いつもであればサラが俺に抱き付いたり、頬ずりしたり、俺が頭を撫でてあげるとすぐに寝息を立てるのだが今日はよほど深刻なのかそれくらいではまだ足りないようだ。



「ねぇ、キス。キスして」


 ベッドの中でサラが俺に抱き付きながら耳元でそう囁く。


「しょうがないな……」


 惚れた弱みかサラに俺はめっぽう甘い。


 俺はサラの頬にちゅっと軽くキスを落とす。


「ちがうっ、それじゃないの! それだけどちがうの~」


 サラが俺の身体にぎゅっと抱き付きながら抗議の声を上げた。


 サラに顔を向けると薄暗い部屋の中でもぼんやりとサラの顔が見える。


「はやくぅ~、はやくしてよぉ~」


 お前誰だ! と言いたくなるようないつもとは違う甘ったるく媚びる様な声。


 いったいどこからそんな声を出しているのかわからないが付き合い始めて新たに知ったサラの一面でもある。

 

「まだ、んんっ……」


 うるさいサラの口を俺の唇で塞いで黙らせた。


「ちゅっ、んちゅっ、んんっ……」


 1度だけでなく2度、3度と深いキスを落とす。


 それから幾度ともなく濃厚なキスを重ねてからどちらからともなく唇を離した。


「ふぅ~、キス、キス気持ちいい……。もっと、ねぇ、もっとして?」


 稀代の大女優にアンコールを求められては応じないわけにはいかない。


「んっ、んちゅっ、ちゅっ、んんっ!」


 サラの口からくぐもった声が漏れた。


 俺がサラの口内に舌を入れたことで驚いたようだ。


 サラの口内に入れた舌を動かしてサラの舌を探すがなかなか見つからない。どうやらサラは舌を奥に引っ込めてしまっているようだ。


 俺が更にサラの舌を探して奥深くへと入っていくとようやくサラのかわいらしい舌を見つけることができた。



――つんっ、つんつんっ



 奥で縮こまっているサラの舌を何度か突いてやるとサラの舌はおっかなびっくりといった様子で少しずつ俺の舌へと伸びてきた。


 そして次第にサラの方からも俺の舌に接触してくるようになった。


 暗い室内でお互いが唇を、舌を貪る水音と荒い息遣いだけが聞こえる。


「はぁ~、キシュしゅごいっ、あたまぼーっとして、あたまバカになりゅぅ~」


 舌っ足らずな声で呟くように言ったサラの身体はすっかり弛緩してしまっていて俺に抱き付くその腕にも力が入ってない。


「サラはいい子だね。もう今日はゆっくりお休み」


 ぽーっとしているサラの頭を優しく撫でる。


「へへっ、えへへっ」


 サラはそう嬉しそうな声を出すとぎゅっと力を入れて俺の腕に抱き付き、顔をピタリとくっつけてきた。


 そうして静かになったと思ったその数分後、隣からは「すー、すー」という規則正しい寝息が聞こえてくる。


「お休み、サラ」


 サラの耳元でそう囁くと、俺も直ぐに眠りに落ちた。








――次の日



「うあああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ~~~~~~~~~~」



 俺は隣で寝ていた恋人の絶叫で目が覚めた。


「慎ちゃん、そのっ、昨日っ、昨日のことってその……覚えてる、よね?」


「当たり前だろ」


 酒に酔っていたわけでも意識が朦朧としていたわけでもない。


 そもそも大切な彼女のかわいい姿を忘れるなんてことは俺にはできない。


 しっかりと脳内のハードディスクに保存済だ。


「はっ、恥ずかしぃ~~~、死ぬっ、恥か死ぬ~~~。うう~~、くっ、殺せっ! ひと思いにっ、ひと思いに殺せっ!」


 どうやら愛しの彼女は昨夜の自分の言動に思うところがあるようだ。


 なお、どうやら女騎士の役を発動した模様。


 冗談はさておき、昔から俺に抱き付いたり同じ布団で寝たりということはこれまでも普通にしていたわけだし、昨夜のこともそれと何が違うのか正直俺には理解できない。


 しかし、本人にとってはまったく違うことのようだ。


 幼馴染とはいえ一から十まで感覚や価値観を共有できているわけではない。


 これから恋人として、将来結婚すれば夫婦になり家族となって一緒に生活していくわけだから少しずつお互いを理解していきたいものだ。


 俺はそう思いながら一人で悶絶している愛しい幼馴染を生暖かく見守った。





 ちなみに数年後、件の演出家が現役を引退したとき、これまでで最も優れた役者は誰だったと思うかという質問に対して『女優藤嶋紗良』と答えたことは俺にとって驚きだった。


 どうやら最後の大仕事として紗良を育てようとしてくれたらしい。


 それにしてはかなり厳しかったように思うがそれが当たり前の時代の方だったのだろう。


 その甲斐あってか紗良はその後、女優としての頂点を極めることになるわけだがそれはまた別のお話。

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 ポイントは『田舎×夏×年下幼馴染』です。

 ハピエン・純愛モノです。


『田舎に住む年下幼馴染♀に婚約者ができたらしい』

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【本話について】


『イチャイチャ』『イチャラブ』タグを付けていながら足りないのではないかと思ったので書きました。


 連載形式にしていますとこういうおまけを追加で載せることができるので重宝しています。


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 本作と本作の関連作品である「田舎に住む年下幼馴染♀に婚約者ができたらしい」とのクロスオーバー作品(続編)です。  リンクを張って飛びやすくしました。  

幼馴染たちの協奏曲(コンチェルト)~続・後日談
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