結婚式の夜 ※ 第三者視点
両家の親族だけで行われた二人の結婚式の夜。
藤嶋家の自宅には三人の女性が集まっていた。
新郎慎吾の母、藤嶋百合恵。
新婦更紗の母、藤堂美樹。
そして慎吾の妹である藤島優である。
慎吾と更紗は既に二人での生活を始めていたためこの夜、自宅に戻ってくることはない。
「は~、それにしてもここまで長かったわ~」
「ごめんなさいね。うちの子、すっっっごく鈍くて……」
申し訳なさそうにそう零したのは慎吾の母百合恵である。
「紗良ちゃん、滅茶苦茶わかりやすかったのにね~。まっ、お兄ちゃんらしいといえばお兄ちゃんらしいけど」
優がにゃははと笑う。
藤堂更紗が芸名を『藤嶋紗良』に決めたとき、その意味に気付いていないのは慎吾だけだった。
「そうそう、あの子『サラちゃんから苗字を貸してって言われたから貸したから』っていきなり言うんだもの。もうびっくりしちゃったわよ」
「私もサラに、その芸名、さすがに考え直したらって言ったんだけどね。でも『絶対コレ! コレ以外あり得ない!』って言うんだもの。そう言われたらもう何も言えないわ」
「まあ、男の子と女の子じゃその辺りの感覚はやっぱり違うのかもしれないわね」
敢えて慎吾を擁護するとすれば小学校低学年とはいえおませな女の子と男女の区別も曖昧な男の子という違いだろうか。
実際、慎吾は更紗に『本名のままだと自分とわかって恥ずかしいから』と言われて身近な自分の苗字にしたとしか思っていなかった。
そういうことにしときましょうかと美樹は苦笑いする。
「これで沙良ちゃんがお義姉ちゃんか~」
優は慎吾と更紗が告白して恋人同士になったあの夜を思い出した。
百合恵は更紗が泊まりに来る日には空気を読んで外泊することが多く、この日も自宅に帰ってこなかった。
藤嶋家の自宅はそこそこ壁が厚く更紗が多少大きな声を出して練習しても外に迷惑を掛けることはない。
しかし、大声を出せば家の中くらいは声が通るので、優はいつも更紗の練習を聞きながら本やネット小説を読んで過ごしていた。
この日更紗の告白シーンが始まったときにはさすがに驚いて慎吾の部屋のドアの前まで様子を見に行ったもののどうやら台本通りのセリフのようでその場から離れようとした。
ところが部屋の中の様子がおかしくそのままドアの前にスタンバっているとあれよあれよと言う間にお互いが唇を貪る水音に二人の荒い息遣いが聞こえてきたという次第。
振り返れば自分がデバガメみたいでちょっと悔しかった優は次の朝、茶碗にてんこ盛りの赤飯で二人を温かく迎えてあげたのだった。
(今日は初夜だし、赤ちゃんができたらまた赤飯を作らないとね)
今度はお子様ランチの旗でも立ててめでたさを演出してやろうと優は密かにほくそ笑んだ。
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