1 幼馴染は神女優
はじめまして
恋愛ジャンルは初めてなのでやさしくして下さい
俺、藤嶋慎吾には幼馴染がいる。
「ふわ~、紗良ちゃん、相変わらず凄い人気だね」
一緒に朝の情報番組を見ていた妹の藤嶋優が思わずといった感じでそう零した。
今見ているコーナーは『今大人気の女子高生神女優藤嶋紗良特集』というものだ。
色白で光るように綺麗な肌。
艶々の長い黒髪。
ぱっちりとした瞳にぷっくりとして瑞々しい薄ピンク色の唇。
薄く化粧をしているだけなのに画面の中の幼馴染は輝いて見えた。
「お兄ちゃん、幼馴染が手の届かない大スターになった感想は?」
「サラはサラだ。女優だろうがそうでなかろうが関係ないよ」
「はいはい。そう言うと思ったよ」
たははと優が笑う。
サラとは幼稚園、小学校の2年まで一緒だったいわゆる幼馴染だ。
親同士が友達同士という関係もあって家族ぐるみの交流とでもいうんだろうか。
そんなわけで自然と仲良くなった。
そんなサラだが小学校2年のときに突然「私、女優になる!」とか言い出して芸能事務所のオーディションを受けてそのまま合格してしまった。
まあ、小さい頃からかわいい子ではあったのでそのこと自体は驚かないが、それが今やテレビで特集をされるまでの存在になってしまったのだからびっくりだ。
最初は子役としてのスタートだったが、それでも周囲の大人顔負けの凄い演技をしていた。
中学、高校となってからはまだ10代前半なのに大人の役どころをすることもあった。
そんな彼女はこれまで数々の賞を受賞。
日本アカデミー賞は助演、主演でそれぞれ最優秀賞。
本場アメリカのアカデミー賞にもノミネートされ『神女優』とまで呼ばれる存在になった。
そんな幼馴染の彼女の存在は俺の密かな自慢であったりする。
「おっと、もう行かないと遅刻するな」
「あっ、ホントだ。早く出ないとね」
時計を見るとギリギリの時間になっていた。
俺と優は自宅から徒歩20分のところにある同じ高校に通っている。
俺は2年生、優は今年入学したばかりの1年生だ。
「じゃあ、お兄ちゃん、わたしコッチだから」
昇降口で優と別れて俺は自分のクラスへと向かった。
――ピコン
教室に入って自分の席に着いたところでスマホからメッセージ着信の合図があった。
『今日の特集見てくれた?』
メッセージの主は予想通り今朝の我が家の話題をさらったサラ本人だった。
というよりも数日前から今日の朝のワイドショーで自分の特集があるから『見てね♡(意訳:絶対に見ろよ)』と言われていたのでいつもよりも登校時間を遅らせて朝からテレビを見ていたというのが真実だ。
『ああ、見たぞ。いつの間にか随分出世したんだな』
『ふふっ、そうでしょう、そうでしょう。もっと褒めてくれてもいいんだよ?』
『サラは俺の自慢の幼馴染だよ』
そう返してしばらく反応がなかった。
しかし、俺にとってはこの反応は慣れたものだ。
『は~、これでこの1週間乗り切れる。そろそろ時間でしょ? またね』
たっぷり待って5分後、そんなメッセージが返ってきたところで朝のホームルーム開始のチャイムがなった。
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