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古い通り道

作者: 瀬川なつこ

夏の終わり。

道路に転がったボール。

コートの人の薄汚れた煙草の火。

彼岸花の咲く小道を歩む雲水さん。

お祭りの気配がして、

近くの神社で、練習の笛の音が

ピーヒャララと聞こえてくると、

路地裏に彗星が落ちて、

町中の子が、虫網片手に駆けだし始める。

人魚の生き胆を知っているかい?

とある尼僧が食べて、八百比丘尼になったそうだよ。

なんとその尼さんは八百年も生きたのだそう。

ここに、変わった干物がある。

頭は猿、身体は胴体は魚。

これはもしかして…食べると長生きできるか、全身の毛穴から血がでるかのどちらかだそうだ。



古い通り道。

櫻の枝を持った小鬼がタップダンスを踊って通り抜けていった。

不思議な事もあるものだ。

落としてしまった小指を探して通りを歩いていると、

鬼に喰われたはずの小指が、

なぜか宿場町の温泉の洗面台の処に落ちていた。

夢まぼろし。

顔中に毛が生えてきて、毛倡妓になった、夢。

宿場町。思い出の片隅で、不思議は息を巻いて君の訪れを待っている。


学校のグラウンドは夕昏時になると、寂しがり屋。

子供を探して黒マントが、街を跋扈する。

緋色の着物は、猫を喰う。

蟻地獄の蟻が、もがきながら、蟻地獄に喰われる悪夢。

蟻地獄はウスバカゲロウという美しい昆虫になる。

あめふらしが、傘を片手に宿場町にやってきた。

人の魂を上げると、お金をくれる。

喰らうのか?

そう、喰らうのだ。

死神なのだ。


どんどん、水位が上がってきて、おぼれ死ぬ夢。

おれはどこにいるのだろうと、

メビウスの輪に入り込んで疲れ切り抜け出せない男。

娘が全裸で下駄だけ履いて、口に椿を挿されて、

見立て殺人ですね、これは、と言われて、途方に暮れる家人。

夢の幕間。

お坊様が、道にあるお地蔵様に、彼岸花を捧げる呪い。

お坊様もたまに、やる。


秋の始まり。

コオロギの音色。

鈴虫の音色。

涼し気な風に、風車が廻って、風待ち草。

旅人が、宿場町を歩んでいきます。

通り雨、秋雨。

瓦の上から、ぽたりぽたりと雫が落ちて、

コートの内側に入り込みます。

冷たいので、旅人も、足早に去ってゆく。

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