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トンマーゾの後悔

「娘から話を聞いている。まずはトンマーゾ。サーラにお前の彼女を、我が家の養女にしてほしいと頼んだのは間違いないな」

「……はい」


ガツッ!ガタガタッ。

凄い音がした。

「お前!サーラによくもそんな……」

マグラーニ公爵が怒りでガタガタ震えている。


公爵に殴られて、ひっくり返ったトンマーゾは顔色が青い。

「だって、家格が釣り合わないから許してもらえないんだって。他の友人に頼んでも誰も相手にもしてくれないから、仕方ないからサーラに……」


再び殴りかかろうと、トンマーゾの胸倉を掴む公爵をお父様が止める。

「落ち着け。話が進まなくなるぞ」

「……本当にすまない。うちの愚息が」

お父様が公爵の肩をポンポンと叩く。


「トンマーゾ。サーラにその話を持ち掛けた時、少しも罪悪感はなかったのか?」

「申し訳ないとは思いました。でも、あの時はそれしかないって思って……」

「トンマーゾ。おまえの話を聞いたあの後、サーラは倒れてしまったのだぞ。丸二日以上、高熱を出して意識不明だった」


「え?」

「過度のストレスだと医者に言われた。婚約の解消を言われた時もそうだ。食欲が落ちて、一度は過呼吸になって危険な状態になった。殿下に助けてもらったがな」

「そんな……」


「婚約解消の時は、正直仕方がないと思った。気持ちが変わる事は絶対にないとは言い切れないからな。だがな、二度目はダメだ。私はおまえを赦せない」

「……」

トンマーゾが私を見つめた。しかし、殿下が私を抱き込んで見せなくしてしまう。


「サーラ……僕は後悔してるんだ。いつの間にか殿下と仲良くしている君を見て、どうして悲しんでないんだって。どうして僕を想い続けていないんだって。婚約したって聞いた時は苦しかった。本当は僕のサーラなのにって。サーラ、こうなって分かった。やっぱり君が好きなんだ!」


「は!?今更何を言っている。ふざけるな!!」

殿下が私を抱き込んだまま怒鳴った。


「サーラがどれ程辛い思いをしたのか知らないくせに。おまえはサーラの愛が揺るがないだろうと思い込んで、彼女の想いに胡坐をかいていたんだ。何をしても許されるだろうと。自分を想い続けてくれるだろうと。どれだけサーラを馬鹿にするつもりだ!」


殿下の身体が震えていた。私の事を思って怒ってくれている。改めて殿下の想いが心に染みた。

「アダルベルト殿下」

静かに殿下の名を呼び、そっと殿下の腕から出る。そしてトンマーゾを真っ直ぐに見つめた。


「トンマーゾ。婚約を解消したいと言われた時も、子爵令嬢を養子にしてほしいと言われた時も本当に辛かったわ。目の前が真っ暗になった。でもね、気が付けば殿下がいつも私を助けてくれていたの。全力で愛してくれていたの。だから私は立ち直れた。今はもう、あなたに心は残っていない。私が愛しているのはアダルベルト殿下、ただ一人よ」


殿下がギュッと私を抱きしめる。トンマーゾはその場で崩れ落ちた。


「残念だったな、トンマーゾ。おまえはそこにいる子爵令嬢と一緒になるしか道はない」

顎で指すお父様。


子爵令嬢の方は、全く気が付いていない。それどころか話している間中、親子でずっとお菓子を貪り食っていた。

「話は終わったか?」


 話が途切れた事に気付いたのか、それとも単にお菓子に飽きたのか、パルマーロ子爵が口をもごもごさせながら顔を上げた。彼女も口いっぱいに入れていたお菓子を、ゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ。

「それで?私はいつ公爵令嬢になれるのかしら?」


「なれないぞ」

お父様が冷たく一言だけ言った。

「なれない?どうして?」

「どうしても何も、私が認めないからな」


「ちょっとサーラ様、話が違うじゃない!」

キッと私を睨む子爵令嬢。

「何故でしょうか?私は話をお父様に預けたと、きちんと申しましたわ」

「確かに言っていたよ。隣で聞いていたからね」

殿下も証言する。


「だからそれですよ。それってサーラ様のお父様から、養子になる為の詳しいお話を聞いてってことですよね」

「ん?」

彼女は何と言いました?


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[一言] マリーアへのざまあがただただ待ち遠しい 
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