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SOYUZ ARCHIVES - 整理番号:S-22-975 - EXTRA  作者: Soyuz archives 製作チーム
55/73

Ex-Chapter55. ドラコロホルモン(1/2)

——ショーユ・バイオテック


「また真木君がいないのか!」



異世界についてあらゆる生物を実験・解析・分析・論文執筆を行う研究所の異世界支部でメンゲレの邪悪でない叫びが木霊する。



彼が呼びつけているのは真木博士。

家庭環境ととんでもない悪食以外とても優秀な研究員なのだが、この悪食が過ぎることで頭を悩ませていた。


ことはバイオテック本部が神奈川県伊勢原市小稲葉o-アニス酸にあるころにさかのぼる。


「まったく君という人間はどういう神経をしているんだ!?私が夜勤で夜中誰か泥棒が入ってないか見る事はある、そりゃあある。


だがそんな時に、懐中電灯でウシガエルの皮をはいでる君を発見した時は思わず絶叫したからな!


ただでさえ高等生物の解剖は吐き気を催すから植物分野に来たというのに、なぜ私はスプラッタ映画を見せられねばならんのだ!」


「まだまだあるぞ!」


「隣にあるどぶ川にいくらウシガエルがいるからとかなんとかいって、投石して殺戮の限りを尽くした挙句、まだそれでも食い足らないのか市内全域の鯉まで手を付けて!?


放流されたヤツもさぞ当たり前かのように捕獲してると市から!直々に苦情が!この研究所に来たんだぞ!私へ!ダイレクトに!」



「それはそうと鯉こくは確かに美味であったがな。辺りでウシガエルを殺して食ってるならまだyoutuberの面白企画で済むだろうが、取り出した内臓を餌にミドリガメを捕まえて食ってなかったか?しかも冷凍保存して、定期的に使えるようにしていたよなキミ」



「確かに給与はまぁその、非常に申し訳ないが、何もそこまでなんでもひっとらえて食うことはないだろう?——……なんだ真木君?ウシガエルは元々食用だから構わない?

違う、そういうコトではない!

なんていうかその、文明人らしからぬ蛮行と食い意地をどうにかしろと言ってるんだ!」




「こないだなんて、エントランスに鯉が入れられた桶が大量に羅列されたぞ!なんだこれは!新手のテロリズムか!?破壊活動か!?

確かに私は生まれてこの方何十年になるが、顔がどーーーもナチスっぽい邪悪な顔つきなのは認めるが、バイオテックのイメージに関る!」



と、いうように真木博士にはとんでもない前科があったのである。

その一方で肝心の彼はゲンツーにある冒険者ギルドの門をたたいていた……







————————————







——シルベー県

ゲンツー 冒険者ギルド



この異世界において冒険者ギルドは想像通り、何かを行ってその対価を貰う集団。



軍人ではない上に収入が不安定なため非課税かつやり口が野蛮だからと言って、階級を持っている人間からすれば、下劣な集団のように扱われていることが多い。



蛮族であるとか、犯罪ばかり起こす外国人労働者と当てはめれば既定現実の人間にでも分かりやすいだろうか。



「まぁ手堅くはぐれ飛竜の討伐にでも行きますか」



「それがいい、割と報酬もいいしな」



斧や弓を背負った、如何にもファンタジー小説に出てきそうな男たちが、張り出された依頼掲示板を見ながら話し合う。



ダース山での戦闘で多数のドラゴンナイトが撃墜されたこともあって、どうやら湿原周りに逃げ延び、凶暴な性質に先祖返りした飛竜が定着しつつあるらしい。



輸送業者にとってはとんでもない脅威に他ならないため、排除するように依頼が出されたのだろう。

現代兵器をもってすればカモに出来るが、ファルケンシュタイン帝国の人々はそうはいかない。



そんな矢先、後ろから声をかけてくる人間がいた。



「なんだアンタ、悪魔の館の人か?」



全身に胴長長靴。

腰にマチェットと何かを入れた麻袋、胸にサバイバルナイフ。背中にはオート5・ショットガンと大荷物を背負った無表情の男。


どうあがいても真木博士である。



もはやモンスターハンターの新作が出なくてもどうだって良さそうな程にハンターな彼を見て、脇の男が思わず聞く。



「……ところであんた、何ができんだ。相手にすんのは可愛いあのペガサスちゃんじゃあないんだぜ」



悪魔の館、つまりバイオテックの人間はメンゲレ含めフィジカルが基本的にモヤシもいいところ。

それに厄介な依頼を出してくるクソッタレと認知されている。


半ば嘲笑もあるが、彼は一通りできることを口にするとみるみる男の顔が変わっていく。



「カエルの追剥ぎ・動物の解体から骨格標本の作製・加工に狙撃・投石。ついでに細胞培養と遺?なんたら?工学?

最後のはちっともわからんが獣神崇拝っぽくてナイスだ。だろう相棒?」



「ああ、俺たちが求めてたベスニズムって感じだな。マジで最高。報酬はいらねぇってマジか?そうと決まればグズグズしちゃいらんねぇ、ベーナブに行くぞ」


かくして奇妙な3人組は早速湿原へと渡ることになったのだが。






——ショーユ・バイオテック


一方バイオテックでは。


「案の定だった、あの野郎……。

ウェーダーに七輪、マチェットにナイフと銃がきれいさっぱり無くなってた。ソ・USEは意図的に応答してないな?」



「やられた……完全にヤツは『狩る』気だったとは、完全に失念していた。

流石に異世界の学名がついていない訳の分からないものは理性と本能で食べないだろうと思っていた私が愚かだった……ッ!」



「あのナマコ初めて食った系の男を侮っていたようだ、初めここに来た時ミサイルに撃墜された飛竜を喰ってた男だからな……Holly Shit!!!!私を愚弄しやがって!覚えてろ!!」



研究所にメンゲレの悲痛で邪悪な叫びが木霊する……。








———————————————








——ベーナブ湿原



一般的に想像はしにくいだろうが、湿原というのは水没した草原のような場所。



奥に行けば行くほど水深が深くなり沼のような様相を呈し、数奇にもこのベーナブ湿原の南端は海と繋がっているという。



地面はほとんど泥で、下手な靴で行けば足を取られて沈みかねない。

冒険者トリオは大きな木板を足に張り付けて進み、博士は装備品が水に触れない程度に沈みながら突き進む。



「目撃情報は割と人里近くってことだ、あいつらは先祖返りしたら人を平気で喰う。なんでも野宿してたらいきなり襲われたってのがほとんどらしい

……名乗り忘れたな、俺はアクス。斧一本でナマモノ系のシノギをやってる、それで相方のほうが」



「ファイテオン、適当にファイターって呼んでくれ。アクスが斧なら俺は弓だ。飛び道具使いが来てよかった。俺だけじゃ手に負えないことも増えて来てんだ。

あんたは?———ああ、マギってのかい」




狩場までついたはいいが、人を襲うようなワイバーンは基本的にずる賢い。



それ以前に野生動物は人間の目の前に出てこないことが多く、間合いに持ち込むには「おびき寄せる」しかないだろう。



特にこういった獰猛な生物なら猶更だ。



ファイテオンが説明を始める。



「人食い竜は野営してる時に襲ってくるらしい、と情報を仕入れておいた。恐らく食い物の匂いに寄ってくるんだろうが……囮として強烈に匂いが出るようなものがいいな」



現実世界でも、人を襲うヒグマは匂いを嗅ぎつけてやって来る実例が後を絶たない。

キャンプでもすればいいのだろうが、流石にそれで待ち伏せるのは命がいくつあってもたりないだろう。



ではこの場で「強烈に匂いが出て、野生動物が寄ってくるようなモノ」は何だろうか。

真木博士は腰元に括り付けられた麻袋から何かを取り出した。



それが秘策なのだろうか。


違う!


手のひら大に砕いたレンガの欠片だ!

すると、何かを察知した博士は当たり前のように水面に投げつけたではないか!



SMAAAAASHHHH!!!!!!



水底に沈む前にやたら響きの良い音が響き、ぷかぷかと何かが浮いていた。



バイオテックに報告すれば確実に新種とされる水生の大型ガエル。



彼はウシガエルをこうやって休日に大量捕獲し、タンドリーチキン風に味付けし、終いにはご飯のお供にしていたのである!



迷いもなく真木は沼へ飛び込むと、草と泥をかき分けながら「石をぶつけたソレ」を回収し、こう伝えた。



「これを使う」



事の一部始終を見ていたアクスは胸を叩き、待っていたと言わんばかりに感激しているではないだろうか。



「わかってんなアンタ。それにしてもこういうシノギは初めてじゃないだろ。

ソレ焼くと美味いからな。ファイテオンは嫌がるが。——あんたもそうなのか?分かってくれる人がいて助かるよ!」



ここで言われている相方のファイテオンは両生類が基本的にダメである。

拷問的仕打ちに苦しみ始めた。



「勘弁してくれ、ヌルヌルとかてかてかはダメだっつってんだろ!……それしかないなら仕方がない!」


狩人に綺麗も汚いも言っていられないのが世の常だ……



登場兵器


・オート5

真木博士の私物と思われる5連発セミオートのショットガン。

設計はかなり古いが、がっちりとしたアメリカ製。

恐らく弾は全てスラグ弾。


・ショーユ・バイオテック

伊勢原市のド田舎に本拠地がある生物化学研究所。ラボと言いたまえ!

どこぞのサンドボックスゲームで適当に作ったような真四角の高層建造物なのが目を引く。

所長がものすごく邪悪で、見た人間すべてに「ナチ」という印象を抱かせること以外は真っ当な研究所。

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