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SOYUZ ARCHIVES - 整理番号:S-22-975 - EXTRA  作者: Soyuz archives 製作チーム
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EX-Chapter47. 異世界への使者 -機械化計画-

ちょうどポポルタ線攻略後、そしてゾルターン城に殴り込みをかけるまでもう一歩という所。

ラムジャーを許さない市民の会は会議を行っていた。



Soyuzの侵攻と共に敗残兵が発生。

その多くがロンドンと合流し、今まで順調に数を減らしていた賊が急速に増加傾向にあることが大きい。



しかし数を増やした敗残兵は帝国軍所属だった兵士たち。

厳密に言えば彼らは敵かどうかあいまいな立場である。



ここで視点を変えればラムジャーの被害者や民を脅かす畜生とも捉えられる。



今更ながら帝国との問題を複雑化するような相手と交戦するのか。



また、恨むべきラムジャーの手先であるロンドンを増やした提携組織「Soyuz」といかに協力するかといった問題が浮上したのである。



そうなれば会合の一つや二つが行われるのも当然の成り行きといえよう。










———————————————










——アルス・ミド村



「それでは両者、意見を」


市民の会の面々を集め、議長をロジャーに据えて話し合いが始まった。


発言権が与えられたのは暗視装置や自動小銃といったSoyuz一式で装備を固めた通称スパイダー・アイ分隊長 カナールから。




「侵攻によって敗残兵を出したのは事実で、装備が充実していない部隊は返り討ちにあうことが増えてきた。武器装備、それに練度からするに、我々は正規兵を相手するように出来ていない」



「にも関わらず、友軍に支援を求めないとはどういうつもりか?頼らないのであれば具体的にどう手を打つんだ?」



いきなり喧嘩腰だが、それにも根拠がある。

事実。支援を受けられず敗走するという実態を目の当たりにしているからだ。



ファルケンシュタイン帝国軍はSoyuzに対してほとんど手も足もでない状況が続いているが、それはあくまでも「現代兵器相手」である。



ガビジャバン王国やラムジャーを許さない市民の会相手であれば、とんでもない脅威なのは言うまでもないだろう。



弓やほとんどの飛び道具が効かないアーマーナイトが出てくれば、脅威度はT-72らの戦車と変わりないし、場合によっては逆に蹂躙されることも珍しくない。



それに対Soyuz用のソーサラーの比率が増えてきた今、凄まじい火力で進めないということもざらだ。




それを誰のせいだと責めるよりも前に、武器兵器を揃えるのが先ではないか。

これがカナールの主張である。



「しかし我々は彼らの傀儡ではない。思念を持ち、返り討ちにあうのも確かだが自分たちの手でラムジャーを討たねば意味がないのではないか?」


「逆にきかせてもらうが、いつまでも車両の兵員をSoyuzの人間だけにするつもりなのか?」



しかし市民の会というのは多くの人間が集まる組織。



当然立場というのもあるし、それは崩せない。

いつまでもおんぶされている訳にはいかないのだ。



ナルベルンはラムジャーという都合よく利用される立場から脱却し独立を保つ。そのためにこの組織は存在しているのだから。



理想と現実。

加熱した会議は危険な領域に突入する……












—————————————————











センシティブな内容を扱った議題なため、案の定この話し合いは激しい思想や意見のぶつかり合いになるまでヒートアップ。



なんとか議長であるロジャーが手綱を握り、お互い納得のいく結論を出すに至ることができた。




彼は出した結論を確認がてら読み上げる。



「まず一つ。装備の供与などのSoyuzとの関係に関しては、やはり依存し過ぎていた面は認めざるを得ない」



「しかしながら今後激化していく戦闘において勝利するには彼らの物資や武器と兵器が必要なのも事実である」



「そこで、製造などは不可能だとしても兵器を扱う兵員の育成などに力を入れることにする」



技術レベル的に不可能だとしても、それを扱うことができる人間を育てることは決して不可能ではない。現在の立場であれば交渉さえどうにかなれば実現はできる。



「2つ目に帝国軍脱走兵からロンドンに合流した兵士の扱いについては、これまで通りロンドンと扱い排除を続行。しかしながら投降された場合は既定に則り捕虜として確保する」



「また、ロンドンと合流せず逃亡を続けている帝国兵を発見した場合は、捕虜ではなくゾルターン村民と同様にラムジャーの被害者として保護することをこの場にて決定した」



意見がぶつかっていたままでは、何も進まない。

両者の意見を聞きながら不満の出ない折衷案を出すというのが議長としての仕事である。



これがなかなか難しい。



人々を陽動し、戦いを指揮することに長けたロジャーであってもこればかりは苦労を隠せなかった。



ラムジャーを許さない市民の会という組織の長として、やらなければならない事が増えたのも事実。

しかしロジャーは多忙になるよりも、前向きな一歩を踏み出したことを誇りに思っていた











——————————————







ところで、組織のトップという立場をどう想像するだろうか。



高給取りで裕福な暮らしを送っていそうだとか、現場に無理難題を押し付けて自分は楽をしているという姿を思い描くだろう。



しかし。隣の芝生は青く見えるという言葉があるように、苦労が絶えない立ち位置に置かれていることが多い。



現にU.U方面総司令官である権能中将が多忙を理由に、姿をめったに表さないのが分かりやすい実例の一つ。



今や中間管理職から司令官という大管理職にクラスチェンジしたロジャーも、ありとあらゆる仕事にひっぱりだことなっていた。



「……次だ次!」



声を張り上げ、半ば自分を奮い立たせながら次の業務に勤しむ姿は立派なリーダーである。



開放され復興に急ぐゾルターンの村々を視察、その後に各方面の慰問を終えた彼が向かうのはホームグラウンドのナルベルン自治区。



独立を貫く自治区の中核でもあり、ラムジャーを許さない市民の会にとっての聖地だ。

郵便も兼ねる飛竜の直行便をチャーターしてまで向かった理由とは果たして何か。









——————————————









——市民の会総司令部 

大樹の根 応接室




古代に残された遺跡を基に作られた司令部 通称:大樹の根にある意味帰還した理由はたった一つ。

提携している友軍Soyuzとの会談に他ならない。


兵や一部兵器。実働部隊を動員している彼らなくして今までの救済できなかった。



だが話し合いの場と言っても、その実態は定期報告のようなもの。



よりにもよってその席に現れたのは一人の大男。


ありとあらゆる料理を山盛り茶碗に乗せて丼にする脅威の日本人 冴島大佐だった。

彼もまた、ロジャーと同じく多忙故に一か所に留まれない人間の一人である。



「今週の報告を」



冴島は事務作業のように淡々と出来事を問う。

繰り返すが彼は暇そうで忙しく、忙しそうで暇な立場の人間だ。



「アルス・ミド村以西の集落からはロンドンの排除が完了しました。復興状況も7割と言ったところ。建設機械師団のお陰もあります」



「しかしドルルタンからは賊の質が高くなり、我々が撤退を余儀なくする場面も増えてきていまして……」



Soyuzの部隊がいるからといって安心はできない。



何時でも彼らが付いているということではないし、時には市民の会のみで構成された兵員で残党狩りをしなくてはならない時もある。



「……ゾルターン県現代化が進みませんな」



だが大佐、いやSoyuz側も「はいそうですか、では頑張ってください」ともなかなか言いづらい。



このロンドンというトンデモない大悪党は見境なく襲うため、非武装になりがちな建設機械師団も襲撃されるかもしれないのだ。



この頃輸送路が確保できたとは言え、ロンドン排除のために白燐クラスター爆弾の散布やら飽和砲撃するのには厳しいのである。



砲撃は兎も角、人道的ではない上に不発弾回収に尋常ではない手間がかかるクラスターはおいそれと投下できない。



取り扱う人員もナチス的な博士が課す厳しい検疫をパスしなくてはならない以上、現地の人々を有効活用すべきである。



厳しい事情を薄々聞いていたロジャーはある話を切り出した。



「そこでですが兵器供与などは検討してはいただけませんでしょうか」



現代ではファルケンシュタイン式のように、人に装甲を求めるのではなく車両に装甲を求めることが多い。


つまり、中身の兵士は300kg近い鉄板を身に着けなくても良いのである。



今までアーマーナイトになれなかった人間やソルジャーとして戦線に赴きたくない人間が集まってくるのは大きい。



「わかりました、検討します。しかし仮に第一線の兵器類などは貸与できませんが。それに伴い教官を割り当てましょう」



敗残兵問題は何も市民の会だけの問題ではなくなっている。

早々に手を打たねばならないのはどちらも同じか。



冴島は一旦離席すると、ある場所に連絡を取った。













—————————————











しばらく外と連絡を取っていたようだが、伝説の白米男はすぐに戻って来た。


すると手持ちのソ・USE接続タブレットに画像を表示しながら説明を始める。



「すぐに貸与できるものが……VTT323シリーズとPT-85。それにコメット巡航戦車の3種となります」



VTT323とは北朝鮮のキャタピラ式兵員輸送車である。

だがあの国はこの手の車両に対し火力を強化したがる傾向が見られるのは言うまでもない。



基本的な仕様は連装14.5mm機関銃が載せられた砲塔。

砲塔を外したバリエーションに、なぜか多連装ロケットが当たり前の様についている。

そんなベーシックと見せかけて非常に個性的な兵器たちである。



曰く。T-34の戦車砲を改良した85mm砲を搭載した、水陸両用軽戦車PT-85も含まれているようだ。



それにもう一方のコメットは第二次世界大戦末期の戦車だが、物騒な名前の社会安全軍に使われた曰く付き。


警察には手に負えないが、どうも特殊部隊を送り込みたくはない。



ロケットランチャーは持っていないが、銃を乱射してくる厄介極まりない世界中にありふれた状況で使われていたもの。



必要とあれば盾になり、オーバーキル気味の矛になる。何かと戦車はどのシチュエーションでも役に立つ。



「加えて…我々専用とはなりますが5式中戦車と、AMOS VTTを出しましょう」



5式中戦車は言わずもがな。ようやく車体だけ完成した日本版パンターを21世紀によみがえらせたもの。


それよりもAMOS VTTを出すとは大盤振る舞いである。



AMOSと呼ばれるSFチックな120mm連装迫撃砲を備えた砲塔モジュール。


火器管制もろもろついて、戦車砲のように水平に撃ちだせる便利な機能まである優れもの。


そんなお得なユニットを、あろうことか北朝鮮の車両に無理やり移植。



力技という最新テクノロジーを用いて何とか押し込んだ。

見た目は完全に嫌な予感しかしないものの、火力は折り紙付き。



どうみても不安しか残らない外見を除いて極めて有効な兵器である。



「いかに我々と友好的とは言え、Soyuzは外部勢力であることをお忘れなく」



だが最新で有効な装甲車両故に、深淵の槍といった諜報機関による調査を避けるため、Soyuz専用なのだろう。



それに市民の会との友好関係が崩れた場合、使われないためというのもある。



「……わかりました」



車体に対して大げさな砲塔を乗せたAMOS VTTに言い知れぬ何かを感じつつも、ロンドン討伐は一歩前進したと言えるだろう……



登場兵器


・コメット巡航戦車

英国製の巡航戦車。17ポンド(77mm)砲を備え攻守速バランスのそろった戦車である。

最大の装甲は102mmと分厚く、最大速度も50キロも出せる他、17ポンド砲は100mmの装甲を貫通できる。


・VTT323

北朝鮮の装甲兵員輸送車。やたらとのっぺりした車体は中国の63式兵員輸送車に似ている。

砲塔には連装14.5mm機関銃を備えており、アーマーナイトが出現しても蜂の巣に出来る他、やろうと思えば対空ミサイルやロケット砲をオプションで付けることが可能で異世界での戦闘をサポートする。


本国では323式装甲車と呼ばれているらしい。




PT-85

北朝鮮の水陸両用の軽戦車。

非常にそっくりなソ連の「76」とは異なり、85mm砲を装備し火力が向上している。

浮かねばならないため装甲は期待しない方がいいだろう。


5式中戦車

日本陸軍が開発した中戦車。

本来であれば車体しか完成していなかったが、Soyuzの力によって21世紀によみがえった。

主砲の75mm砲はさることながら、副武装に37mm砲と機銃を備えているかなり珍しい戦車。

本来であれば低脅威治安地区での治安維持に使われていたモノらしい。


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