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SOYUZ ARCHIVES - 整理番号:S-22-975 - EXTRA  作者: Soyuz archives 製作チーム
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EX-Chapter 01. Highness memory

タイトル【殿下の日記】

———ウイゴン暦5月4日

[私はあの教えを信じ、神々の使いを探しにアイオテの果てにまで逃げていた。

ナンノリオン県の魔道都市マガアリオで捕まって幽閉されてから脱出した直後から追跡されていると知った日かというもの満足に寝ることもできなかった。

そんな最中、Soyuzという組織に接触することができたのは不幸中の幸いといっていい。


 私は逃亡生活中に人民の生活というものは少なからず見ていたが、帝国軍が政権を握ってからはありとあらゆるところから税金を巻き上げ、軍用にできるあらゆる物を強制的に生産させ、膨大な軍需品需要を満たしている。そんな祖国を見るたびに目をそむけたくなった。だけどいくら逃げても現実はそこに広がっている。この国は残酷になってしまった。そんな気がする。


私の身の上ではもう少しできることがあったのだろうが、もうそんなことを考えている余裕などなかった。もうこの国を基に戻すためになりふり構ってられなかった。

神にでもすがるようにアイオテの草原をさまよっていると、ついに「神の使者」に接触することができた。


信じがたいことに違う世界からやってきたのだという。それは神の世界なのか否かはわからない。

彼らは神話通りすさまじい力を有していた。いともたやすく馬車を木っ端みじんに破壊してしまったのだ。改めて私は自分の卑劣さに気が付いた。


自身の力で立ち向かうこともせず、他人の背を借りる真似など、ましてや他勢力の力に頼って祖国の内乱を止めようとしているのだ、と。このことは絶対に忘れてはならない。


私は穢れた人間なのだ。エイジや他人がいくら取り繕うともその事実は揺るがない、なくならない。

ゴンノウ中将との契約などは特にそうで他国の侵略を許したようなものだ。


祖国は解放されるのか、元通りに戻るのか。—どうしていいのか、私にはわからない。だけど助けを求めたとしても、ここには私しかいないのだから。]










——ウイゴン暦5月5日

[この日は私の鏡写しのように一日中曇っていた。エイジも相当気が滅入っていたのでたまには楽しい話でもしようと思って、あれこれと話をしてみた。

彼らはどこから来たのだろうか、であるとか昼食に支給された袋入りの謎のものに対して、だとか話題は尽きない。だがエイジはいつも通り笑ってばかりだ。


なんとかこの鉛のように重たい気分を紛らわせるためスタッフと呼ばれる人と加熱の仕方などを指南してもらったが、なかなかに上手いようにできている。


【戦地でも食事は士気に関る】と大臣は言っていたが、ここまで来るとは感服する。


火とは違う形で熱を出すらしく、雨が降ったところで火起こしすることなく温い食事がとれるらしい。魔力に依存することなくどこでもこのようなことができるとなるとなかなかに考えモノである。魔法に頼らないということは魔導士が居ないのだろうか。

こうでも考えていないと気が滅入りそう。


肝心の中身はというと肉団子や薄く固いパンのようなモノ、クラッカーというらしい。

中にも粉を溶かして飲む、あの毒々しい色の果実で風味をつけた飲み物といい、食していて気分も良くなる。


鬱蒼とした気分が少しばかりよくなった。食は胃も心も楽しませるとどこかにあったものではあるがこういう効果もあるらしい。


思えば帝国の兵士が持つ食糧は持ち運びを考えて現地で具を追加するものが多いとは聞いていた。それぞれ楽しみ方は違うのだろう。

これを合わせたものができないものだろうか。


——異様なほどに味が濃いのはいささか良いのか。と疑問に思った]






——ウイゴン暦5月6日


[今日は久しぶりに大手を振って外に出た。エイジはしばらく寝ていない日々が続いていたため昼頃をすぎてもぐっすりと寝ていたため一人で出ることになった。

此処は石造りで間違いないが積み上げた後がない土壁のような壁と、屋根のとがっていない金属質の家屋が連なっている。


金属で小屋をつくることができるのだろう。確かに鉄は錆びるが腐ることはないし、それに頑丈だ。錆びることさえなければ。


知的好奇心だけが陰鬱として気分を晴らしてくれる。


それにスタッフと呼ばれる人々の服装の一つ一つを見ると、なかなかに面白いものが見えてくる。戦いをすると思われる人は驚くべきことに鎧がなく、変わりにポケットを多く持つ。そう思っていれば何かを作る人間はというとその正反対で突っかかりがない。


油が染みついているような滲みもあったが、それらからも身を守るようにできているのだろう。確かに煩わしいものが付いていると何かに引っ掛かってしまうことは確かに多かった。父上がいた頃裁縫を皇族の着るような装飾の多い服で習うときは袖口が邪魔で仕方なかったことを考えると、なぜあの服でやったのだろうと疑問で仕方がない。


たまに自分がなぜこのような身分なのかと思う事も多々ある。

だけどいますることと言えばこうして日誌をつけながら、吸収できるだけの知識を頭に詰め込むくらいだ。私は高貴なお姫様という存在には二度となれない身になってしまったのだから]


これ以降のページは白紙のままだ…

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