01.問おう、貴女が俺のママですか?
遠い昔、悪魔との契約に捧げられた赤子がいた。どうやら俺、大島迦津弥はその身体に転生したらしい。その赤ん坊の肉体は魂を奪われた筈だったが、儀式により異界から新たな魂を入れられ生まれ変わった。改造された肉体でな。
結果、運悪く魔改造ボディーの超人の出来上がり。生後一か月、身体は青年だ。肉体は人間を超えた最強だが中身が俺であり赤ん坊だから、そのストレスで馬鹿になった。無性にママが恋しくなったんだよ。だから今も俺は母性を求めてこの異世界を旅している。
俺が使える能力は悪魔から授かった契約魔法。色々あるが、特に非強制母体化契約っていう魔法を使うことが人生の目標でもある。同意さえあればあらゆる女性を俺のママにできる。人間だろうと魔族だろうとな。
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「ああ。おっぱい飲みたい……」
朝。宿屋の窓を開け、赤ん坊としてごくごく一般的な欲求を素直に言語化する。俺の肉体年齢の言葉で表すと「腹減った」と同義であるのだ。
「オーシマさんっ。おはようございます。朝の準備はできてますよ?」
いつの間に入ってきたのか、エルフの女性が朝ご飯を持ってきてくれた。朝日に輝く長い金髪。母性溢れる包容力のある肢体。豊かに流れる大河のようなボディ。うーん。グレート。(NOT性的な意味で)
「ありがとう。ココア。早速ちょーだい」
「はい……」
ココアは少し恥ずかしそうに服の胸元を緩める。
着物のような、和風の衣装が一枚一枚はだけてゆく。
「はやくぅー」
食事を前にするとどんどん頭が馬鹿になる。抑えようと思っても頭は赤ん坊のままだ。普段はクールな俺でも、こんな原始的な欲求には逆らえないのが本音だ。
「わかってますって……」
俺のミルク偏食は呪いのせいだと適当に嘘を吹き込んである。まだ非強制母体化契約を使えていないが、彼女に無事成功したらその時真実を告げよう。
「はうぅ……」
表情を赤らめる彼女。ようやく白い肌が見えた。あと少し。
「どうぞ……」
ココアは胸元から人肌に温めたミルク入りの哺乳瓶を取り出し────飲ませてくれた。
「ちゅぱちゅぱ」
今の俺は無我夢中。天上天下唯我独尊。吾輩は赤ん坊である。
「すごい…飲みっぷりです…あうぅ…」
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「ちゅぱちゅぱちゅぱ!」
満漢全席。福徳円満。人間失格。
「あらあら、急がなくてもおっぱいはたくさんありましゅよ~♪」
「ふふっ♪ たくさん飲んで、良い子になって下さいね?」
あ、飲み終わった。
「……ああ!」
空腹が満たされ正気を取り戻した俺は、開き直っていつもの好青年に戻った。
「ああああああああ! あのっ! さっきは途中から変になって……! 忘れて下さいいいいいい!!!」
ココアは部屋からはしたない恰好で飛び出していった。こんな反応も含めて、彼女との旅はとても楽しい。