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Crazy Fairy Tales  作者: Leica
Side of Alice
8/9

最終章「狂気に呑まれた少女の旅の終わり」

一節「彼女の待つ場所へ」


何もない土地を歩いている。

それもそのはずだ。

なぜならもうこの世界にはほぼ何も残っていないからだ。

全て私が狂わせた。

全て私が壊した。

全て私が滅ぼした。

でもまだ一つだけ壊していないものがある。

「あの子は一体どこにいるのかしら。」

ないもないから視界を遮るものがない。

しかし何もないからこそ何も見つけられない。

ここには彼女はいないようだ。

もしかしたら既に死んでいるのかもしれない。

でも何かを感じる。

私と同じように狂った気配を。

近いような遠いような場所から感じる。

正確な位置なんてわからない。

どっちから感じるかしかわからない。

でもそれを頼りに歩いている。

私が、いや私の「狂気」が主役の死を望んでいるから。

何としても彼女を見つけなければならない。

でなければ私の「狂気」は終わらないから。


歩き始めてからどれだけの時間が経ったかはわからない。

一度どこかで休みたい気分だと思っていたら。

まだ形を残している世界があった。

「ただいま、私の故郷。」

それは「不思議の国のアリス」だった。

しかし驚くこともないだろう。

私が生きているのだからこの世界が残っているのは当然だ。

それでも異変はある。

私の世界から狂った気配を感じる。

「こんな所で待っているなんて、彼女も私を殺したくてたまらないのかしら?」

胸の高鳴りを感じながら私は自分の故郷へと踏み入った。



二節「血濡れた赤ずきんとの遭遇」


私の家の塀に一人の少女が座っている。

「メイジー、待ったかしら?」

少女が私の存在に気付く。

「待ってたよ。ずっと、ずーっとね。」

「待たせて悪かったわね。」

「謝らなくてもいいんだよ。私も探しに行けばよかったんだから」

そういいながら少女は塀から降りてくる。

「貴女は何人殺したの?」

「えーっとね、うーん五人くらい?手ごたえのあるオオカミさんはそれぐらいだったかな?」

「そう、楽しかったかしら?」

「うん!楽しかった!アリスは何人殺したの?」

「そうね、何人だったかしら。覚えてないわ。」

「えー、それじゃあ比べっこできないじゃん。」

「ごめんなさいね。でも他の比べっこならできるんじゃないかしら?」

「そうだね!じゃあ力比べでもしよっか。」

そういいながら彼女はいつも通りの大斧を手にする。

「まったく、物騒な子ね。」

「でもアリスだってしたいでしょ?殺し合い。」

「ええ、貴女と殺し合いたいからここに来たのよ。」

私も剣を取り出す。

「じゃあ、始めよっか!」

無邪気にそういった赤ずきんがこちらに走ってくる。

私はとっさに彼女の一撃を防ごうと守りの姿勢に入る。

カンと金属同士のぶつかり合う音。

それと同時に私の体は少し後ろに飛ばされる。

さすがに彼女の一撃は重い。

防ぎきることはできないか。

「すごいねアリス!今のを守っちゃうなんて!」

彼女からの称賛の声が届く。

「でももうそんなの受けたくないわ。ほんと貴女の馬鹿力はその小さい体のどこから出てくるのよ。」

「それはもちろん私にある『狂気』からだよ。」

「確かにそうね、聞くだけ無駄だったわ。」

さて相手の力量も見れた、今度はこちらの番だ。

「じゃあこっちからも攻撃をするわよ。」

「いいよ!どんどん来て!」

彼女のもとへ走り斬撃を行う。

「わぁ、アリスったらすごい速い!」

そういいながら彼女は私の斬撃をすべて防いでいる。

「余裕で全部防ぐんじゃないわよ。」

「あはは、でも別に余裕じゃないよ?気を抜いたらいつ斬られちゃうかわからないもん。」

「会話できるなら余裕でしょうが。」

「あはは、そうかもね。」

さすがに一筋縄ではいかないと思い一度攻撃の手を止め彼女から離れる。

さてどうしようか。

普通に攻撃してもおそらく倒せないだろう。

不意打ちを狙おうにも彼女にはスキがない。

あんなに大きな斧を持っていたとしても彼女の疲れるタイミングは私とそんなに変わらないだろう。

踊るように斧を振り回す彼女に勝つ手段はいったい何だろう。

勝つために考える必要があるが考えている間にも彼女は攻撃をしてくる。

それを避けながらだと頭が働かない。

「ねぇ、アリス私ばっかり攻撃しててもつまらないよー。」

「貴女が手を休めないからじゃない。」

「だってそんなことしても面白くないじゃん。ほら避けてばっかりじゃなくて攻撃をしてきてよ。」

確かに避けているだけの状況は私にとっても無駄である。

しかしこんな状態で考え事なんてできたものではない。

ならもう何も考えなければいいか。

「狂気」に任せて彼女を殺すことだけに身をゆだねて。

どうせこれで終わりなんだ。

ならもう、狂ってしまえばいい。

それで彼女を殺せるなら。

それでこの旅が終わるのなら。

私の中の「狂気」が増す。

それに気づいたメイジーが攻撃の手をやめ一度距離をとる。

「急に雰囲気が変わったねアリス。」

「えぇ、もう終わらせようと思って。」

メイジーに急接近し彼女の斧をはじく。

「なにもかもね」

体勢を崩している彼女の腕を切る。

彼女はもう斧を持てない。

「もう終わらせちゃうの?」

「えぇ、私は十分楽しめたから。」

彼女の足を切る。

彼女はもう立てない。

「私も楽しかったよアリス。」

「それは良かったわ。」

彼女の上にまたがる。

彼女はもう抵抗しない。

「それじゃあまたね、アリス。」

剣を構える。

「おやすみメイジー。またね。」

彼女の心臓部を目掛け剣を突き立てる。

彼女はもう動かない。



三節「物語の終わり」


メイジーを殺した。

「やっと、やっと全部終わったんだ。」

これで全て終わった。

「もう何も私を邪魔する者はいないんだ!」

生きている「主役」はもういない。

「あはは...アハハハハハ!」

狂った笑いが止まらない。

私は完全に狂気に呑まれ狂いきっていた。

「アハハハハハハハハハハハハハ!」

狂った愉悦。

しかしそれは突如として壊される。

「全て終わったのかい?それはよかったじゃないかアリス。」

胸元に剣が刺さっているのに気が付く。

「でもキミの邪魔をする人物はまだ残っているよ。」

剣を引き抜かれる。

それと同時に私の体が地面に倒れる。

「グ...リム...」

倒れ伏した私の前にグリムが立っている。

「キミは僕が予想した通り『終焉の種』になった。悪いがキミを排除しなければならない。」

グリムが私の前にしゃがみ言葉を続ける。

「キミは道を間違えてしまった。本来の目的を見失ってしまった。」

「本来の...目的...?」

「ああそうだ。キミが旅に出たきっかけ。それは誰のためで、何をしようとしていたんだい?」

グリムの言葉を聞いて正気に戻る。

私が旅に出た理由は。

「シル...ヴィア...」

シルヴィア。

私の大好きな人の名前。

私のことをずっと見ていた人の名前。

私の目の前で死んだ人の名前。

私の...全てだった人の名前。

「私は...どこで...間違えたの...?」

私の目から涙がこぼれる。

「キミは間違えたんじゃない。キミは元から何もできなかったんだ。だから気にしなくていい。」

「私は...どうなるの?」

「キミが死ねば『終焉』は起こらない。悪いがここで死んでもらうよ。」

「そう...」

「安心したまえ。またすぐに目が覚めるさ。」

「...?」

「それまでゆっくり寝るといい。おやすみアリス。」

私の意識はここで途絶えた。



第四節「再演の刻」


「メイジー、聞こえるかい?」

『グリム、アリスちゃんの方はどう?』

「あぁ、無事に『終焉の種』は鎮圧した。すぐに戻って『再演』の準備をするさ。」

『本当に彼女は調律師になれるの?』

「心配することはない。きっと大丈夫だ、次はうまくいく。」

『じゃあいらない子は排除する?』

「そうだね、みんなに伝えておいてくれ。」

『おっけー。じゃあみんなに伝えてくるね!』

「頼んだよ。」

『はーい。』

「さてと、アリス次はうまくやってくれよ。期待してるからね。」


The end of the story

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