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Crazy Fairy Tales  作者: Leica
Side of Alice
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第七章「心の壊れた狂気の少女」

一節「異変」


人魚姫を殺した後も私はいろいろな世界に行っては「主役」を殺して回っていた。

しかしいつからか私に異変が起きていた。

私の「狂気」の能力の治まりが遅くなってきたのだ。

いつもであれば他の「主役」を殺した後はすぐに収まっていたはずなのだが最近は治まるまでに時間がかかる。

短いときは一時間ほどだが長いときは数日たっても収まらない。

さらに異変はこれだけじゃなかった。

最近私の中で「何かを壊したい」や「何かを殺したい」などの破壊欲求のようなものが生まれ始めている。

「狂気」を発動している時であればいつもの事なのだが今では「狂気」を発動していないときでさえこの欲求を感じる。

この欲求のせいで最近は無抵抗な一般市民でさえ殺してしまうような気がする。

何とか理性を保ち自制しているがいつかはこの欲求が爆発してしまうような気がする。

そしてもう一つ。

これは歩いている途中で気づいたものだが、この世界にも異変が起きている。

本当はすでに起きていたことに私が気づかなっただけかもしれないが、この世界が壊れ始めている。

正確に言うと「主役」を失った「物語」が崩壊していてる。

おそらく私以外にも「主役」を殺して回っている存在がいて私が来た頃にはもうその世界の「主役」が殺されていたからだと思うが、大地が割れあたり一面火の海になりいわゆる災厄のようなものが起こっている世界があった。

その災厄を見た後に私が回った世界を見に行ってみたがそのほとんどがすでに崩壊していた。

これがグリムの言う「終焉」の前兆なのかこの世界のルールなのかその両方なのかは分からないが何か良くないことが近いうちに起こる気がする。

いや近いうちに必ず起こるだろう。

そしてそのきっかけを作っているのはおそらく私だろう。

しかしそんなことは私に関係ない。

壊れるなら壊れればいい。

もう私に帰る場所なんてないし生きる意味もない。

それなら世界の全てが壊れようとも私にとっては死ぬことと何も変わりはしない。

だが最近ふと思う。

こんなことを考えるようになったのは「狂気」のせいなのではないかと。

もう私には自分の本心を確認するすべがない。

なぜなら私自身が「狂気」に呑まれ始めてしまっているからだ



二節「狂乱の始まり」


変な考え事をしているうちに新しい世界にたどり着いた。

いや、たどり着いてしまった。

この世界の町に入りいつも通り情報収集をしようとした時だった。

「くっ...!?」

急な頭痛が私を襲う。

それと同時に私の脳内の破壊欲求がどんどん大きくなるのを感じる。

私の異変に気づいた町民が私に近づいてくる。

何かを言っているようだが何も聞こえない。

頭に響く「殺せ」という声がうるさい。

脳内の破壊欲求を理性で抑えようとするもうまくいかない。

「来るなっ!!...私に近づくなっ!!!」

そう叫ぶのが精一杯だった。

私の声を聴いて町民は離れていく。

しかしもう手遅れだった。

私の理性を繋ぎとめていたものが切れた。

私は「狂気」に完全に呑まれた。


しばらくしてふと気が付く

周りには血の海と死体の山しかなかった。

生きている者はいないだろう。

「全く、これじゃああの悪夢と同じだわ。」

そう呟くことしかできなかった。

私は狂ってしまった。

狂いながら大量殺人をしてしまった。

狂いながら...笑っていた。

もう私は私ではないのだろう。

心を壊し狂った笑みを浮かべながら私はそう思った。



三節「手遅れの少女と狂った猫」


「やあアリス、何やら楽しそうなことをしてるじゃないか。」

背後から声がする。

「こんなこと何も楽しくないわよ。」

「ならどうして笑ってるんだい?」

「さぁ?私が聞きたいくらいよ。そんなことより...」

振り返り声の主を確認しながら問いかける。

「どうして貴女がここにいるの?ねぇ、チェシャ。」

「さぁ、どうしてだろうね」

気味の悪い笑みを浮かべながらチェシャ猫はそう答える。

「貴女は悪夢の中で殺したはずでしょ。どうして生きて私の目の前にいるのかしら?もしかしてもう一回殺されたくなったの?」「まさか、あんなに痛いのはもうごめんだよ。」

「ならどうして生き返っているのかしら?『アリス』ももう殺したはずよ。」

「そうだね。確かに『アリス』は死んだ。でもキミは生きているじゃないか。」

「私と貴女は関係ないはずでしょ。だって私は不思議の国を持っていないのだから。」

「確かにボクはキミの不思議の国の住人じゃない。でもキミの中にはあのアリスの魂があっただろう?だからボクはキミを拠り所に生きれるのさ。」

「なるほどね。でも私の前に現れる必要はないでしょう。」

「確かに必要はない。でも面白そうな事があれば行く。それがボクじゃないか。」

「...迷惑な猫ね。」

「それは誉め言葉?それとも罵倒?どちらにしても嬉しいけれどね。」

全く面倒くさい猫だ。

「それで、何をしに来たの?」

「キミが何やら楽しそうな事をしていたから見に来ただけだよ。」

「なら帰ってくれるかしら?」

「どうして?」

「人殺しなんて何も楽しくないからよ。」

「たとえ狂気に溺れていたとしても?」

返す言葉がない。

そうだ、理性では否定しているけれど狂気に溺れてしまえば理性なんてものはない。

だとしたらこれは私の本心なのだろうか?

「それは違うねアリス。君は人殺しを楽しむような人間じゃない。」

「心を読むんじゃないわよ。」

本当に厄介な猫だ。

「でもそうだろう?キミは何もない日々の方が好むはず。何もない日々をあのメイドさんと紅茶を飲みながら過ごす方が好きだろう?」

「まぁ確かにそうだけど。」

「だからキミの人殺しは本心じゃない。狂気に溺れてしまった証拠さ。」

狂気に溺れてしまった証拠。

確かにその形容の仕方は間違いではないかもしれない。

「ねぇチェシャ、私はこれからどうするべきだと思う?」

「さぁ?キミの運命だ。ボクが決めることじゃない。ただ一つ言えるとするならキミはもう手遅れだ。」

手遅れか。

確かにもう戻れはしないな。

「まさか本当はそれを言いに来たんじゃないでしょうね。」

「さぁ?どうだろうね。」

そう言ってチェシャ猫は姿を消す。

「役立たずな猫ね。」



四節「狂気の少女」


もう狂気に完全に飲まれてしまい元々の自分の目的なんて覚えていない。

本当は何を求めてこの旅に出たのか。

何を求めて歩いてきたのか。

そんなことはもう分からない。

ただ分かることは自分が人殺しを楽しんでいること。

そして自分が「主役」を殺したがっていること。

この二つだけは私の理性の中ではなく狂気の中に残っている。

でも人殺しなんてする気は起きない。

だから私の狂気の願いは後者だけ叶えてあげるとしよう。

私の次の目標は今までと変わらない。

「主役」を見つけて殺す。

ただそれだけだ。

しかしあたりを見渡して思う。

残ってる物語なんてほとんどない。

もうほとんどの「主役」が死んでしまったのだろう。

私以外にあと一人と仮定すれば残るは...

「メイジ―。そろそろ私も貴女の望む『オオカミさん』になれたんじゃないかしら?今から殺しに行ってあげるわ。」

彼女を殺せばすべてが終わる。

この「悪夢」のような「現実」を終わらせることができる。

それを希望に歩いていく。

この世界の終わりに向かって。

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