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Crazy Fairy Tales  作者: Leica
Side of Alice
6/9

第六章「王子を求めた人魚の海岸」

一節「海岸の歌声の噂」


シンデレラの世界を出て少し経った後のこと。

私は港町についていた。

もちろんそれまでに服の返り血は落としているため怪しまれることもない。

港町に入ると前の城下町よりかは活気がある。

だがやはりどこに行っても違和感はあるものだ。

この町にもなんだか違和感がある。

少しこの町を観察してみる。

人は別に少なくない。

人の活気もある。

なら何がおかしいのか。

心なしか働いている女性の数が多い気がする。

というより男性が少ない。

それがここの違和感だろう

原因は「主役」につながる可能性もある。

聞いておいてもいいだろう。

近くにいた町民に話しかける。

「あの。」

「うん?どうしたんだい?」

「私は旅のものなのですがここの町は男性が少ないように見えるのですが何かあったのですか?」

「あぁ、気づいちゃうかい?」

「はい。」

「最近奇妙な噂があってね。」

「噂、ですか。」

「あぁ。なんでも人魚の歌声が聞こえる夜に男が海に消えるらしいんだ。」

人魚の歌声。

消える男性。

おそらくここは人魚姫の世界だろう。

だとすれば男性をさらっているのは人魚姫か。

だが確証があるわけではない。

一応聞いておくべきか。

「原因とかって分かっているんですか?」

「あぁ、一応ね。多分人魚の歌声に引き付けられた男が海に行って、その後連れ去らているらしい。」

やはりそうか。

「解決しようとしたりはしないんですか?」

「今は誰も考えてないだろうね。」

「どうしてですか?」

「前に一度だけ人魚たちを攻撃したことがあったんだけどね。見事に返り討ちに会っちゃってね。それ以降人魚には勝てないもんだと思って誰も戦おうとしないのさ。」

流石にただの「登場人物」が「元主役」に勝つのは難しいのか。

でもそれなら私が行けばいいのでは?

私も「元主役」だ。

ならば戦えるだろう。

私の目的も同時に果たすこともできる。

一石二鳥だ。

「それなら私が行きます。」

「お嬢ちゃんがかい?やめときな。あの人魚の大群に一人で向かうなんて自殺するようなもんだよ。」

人魚の大群?

なるほど敵は人魚姫だけではなくその手下もいるということか。

「それに男が大群で行って勝てなかったんだ。お嬢ちゃんだけじゃ無謀だろう。」

はぁ...馬鹿なのか?

男だけで魅了されて終わりだろう。

「それは人選が悪かったのではないですか?」

「人選?」

「はい。男性だけで行けば全員が歌声に魅了されて戦えなっかたんじゃないかと。」

「確かにそれもあるねぇ。」

「なら女性だけで行けばいいかと。働いている女性であれば猟銃ぐらいは撃てるでしょうし。」

「でも人魚たちも槍を投げてくるらしいんだ。」

「なら私が全部はじいてあげますよ。それくらいならできます。」

「本当かい?なら町のみんなに話をつけてくるかねぇ。流石に男のいない社会ってのもいろいろと無理があるものでねぇ。」

「はい、そうしましょう。」

これで人魚姫討伐は町の戦力を使いながらできるだろう。

そうなれば私も楽できる。

そんなことを思っていると女性はすぐに町の人を集め作戦会議を開いていた。



二節「人魚狩り」


夜の海岸。

町の女性たちと岩場の陰に隠れじっと待つ。

やがて一匹の人魚が海面から顔を出し歌い始める。

これが開戦の合図だ。

歌声が聞こえると女性たちは岩場から飛び出て砂浜へ向かう。

それと同時に大量の人魚たちも海面からかを出す。

砂浜へ向かったどの女性も手には猟銃を持っており砂浜へたどり着くと人魚の頭へ照準を合わせ引き金を引く。

それに気づき海に潜る人魚と気づかずに頭を撃ち抜かれる人魚の二通りがいる。

海に潜った人魚は再び顔を出すときに三又の槍を取り出す。

私の役目はここからだ。

岩場から出て海岸線に近づいてくる人魚のもとへ向かう。

そして人魚の首を掻っ切る。

その後人魚が海から投げてくる槍を弾く。

私が前線で戦っている間に猟銃の再装填が終わる。

そしてまた発砲。

これを繰り返していれば負けることは無いだろう。

だが気を抜くことはできない。

私が槍をはじくことに失敗すれば女性に被害が行く。

そうなると戦力の減少に繋がってしまう。

それは避けねばならない。

海岸線の全ての状況を把握しつつ戦闘をする。

少々面倒ではあるが人魚姫を殺すためにはこれを続けるしかない。

この数の人魚を一人で相手をしなくていいとなればこのままの方がいい。

人魚姫が出てくるまでの間だそう長くはならないだろう。

そんなことを考えつつ人魚を狩る。

そうして約30分が経過した。

人魚姫はまだ出てくる気配はない。

「アリスちゃん。まだ人魚姫は来ないかい?」

「おそらくまだかと。」

「流石にこう長くなるとしんどいものがあるねぇ。」

「しかし人魚の大群は退けました。少しは楽になるかと。」

「確かにそうだねぇ。」

それにしてもまだ来ないのか。

浜辺の人魚はほぼ狩りつくした。

おそらく生き残りもそう多くはないだろう。

一度出直すべきか。

「今日は一度出直すのはどうでしょうか。犠牲は出ていないとしても疲労はたまっています。人魚姫が来る気配もありませんし十分に人魚も狩れたでしょう。」

「それもそうだね。みんな今日は一旦終わりだ。人魚姫は狩れてないが人魚の数は減らせた。私たちが人魚に勝てることも分かったし今日は十分だろう。」

その声を聴き他の町民も退却準備を始める。

今日は一旦退くか。



三節「仲間を失った姫の怒り」


町民の人たちの退却準備が終わった後のこと。

海の方から大きな殺気を感じた。

慌てて振り返る。

海の上には一つの人影がある。

ようやく来たか。

「来るのが遅いんじゃないかしら?人魚姫。」

「あの子たちを殺したのは貴女ね。」

「ええ、そうよ。それが引き金になって貴女が来ると思っていたのだけれど、なかなか来なかったわね。何をしていたのかしら?」

「そうね、貴女が一人になるのを待っていたのよ。貴女を殺すためにね!」

そう言って槍を投げてくる。

とっさに避けるが少しかする。

「当たったわね。」

「かすっただけよ。」

「でもそれだけで十分よ。」

そう言いながら人魚姫はもう一度槍を構えて投げてくる。

その槍をよけようとした時だった。

「っ!?」

体が思うように動かない。

それでも避けようとどうにか動く。

だが体全体を動かすことはできず左腕に槍が刺さる。

「くっ...」

「どうかしら。体が動かないでしょう。」

「何を...仕込んだのかしら...?」

「体を麻痺させる毒よ。」

人魚姫近づいてくる。

体は動かない。

「さてとそろそろ死んでもらおうかしら。」

人魚姫が槍を構える。

はぁ、なんで...

なんでこんなにこいつは馬鹿なんだろう。

おかしくて笑みがこぼれる。

「何がそんなにおかしいのかしら?死を目前にして頭がおかしくなったかしら?」

「いいえ、あなたがあまりにも馬鹿だから笑っているのよ。」

「私が馬鹿?何をもってそんなことを言えるのかしら?」

「そうね、貴女が私しか敵としてみていないからよ。」

私がそういったとき。

「死ねぇ!人魚姫!」

一人の女性が鈍器で人魚姫の頭を殴る。

それを受けて人魚姫はふらつき倒れる。

その後何人もの町民が人魚姫を囲み袋叩きにする。

人魚姫は抵抗もできずにただ暴力を振るわれる。

「残念だったわね、人魚姫。貴女の敵は私だけじゃない。そこにいる町の女性皆が貴女を恨んでいるの。それに貴女はもう『主役』じゃない。もう貴女はどこに行っても優遇されることは無いのよ。」

町民から罵詈雑言を浴びせながら殴られる人魚姫に声をかける。

「さようなら人魚姫。あなたの負けよ。」

しばらくして人魚姫は動かなくなる。

「アリスちゃん。大丈夫かい。」

「はい、まだ体も動きませんが何とか。」

「今日はうちに来なさい。手当もしてあげるから。」

流石に今日はもう動けない。

おとなしくついていくとしよう。

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」

女性に担がれ町へ行く。

今日はここに泊まろうか。



四節「賑やかになった町」


女性の家で手当てを受けた後、私はベッドに入っていた。

外では人魚姫を倒したことを祝し、宴会を開いている。

私はあの手のものは苦手なので不参加にさせてもらっている。

前の町もそうだったが自分たちの憎むものを殺すとやはり嬉しいものなのだろうか。

私にはもう復讐する相手すらいないのでわからない。

ただ殺したい相手を殺すとすっきりするというのは分かる。

私だって他の「元主役」を殺した時はそんな感覚になる。

それは「狂気」による気持ちの昂ぶりがそうさせているのだと思っていたが人の本質的なものなのかもしれない。

そんなことを考えていると部屋の戸が開く。

「ケガの方は大丈夫かい?アリスちゃん。」

「はい。おかげさまで。」

「なら良かった。」

女性がベッドの横に腰掛ける。

「ありがとうね、私たちのために人魚姫を殺してくれて。」

「いえ、私は何も。多くの人魚を狩ったのも皆さんの方ですし。」

「そんなことないよ。アリスちゃんがいなければ。勝つことも、戦おうとすることさえもなかっただろうからね。本当にみんなあんたに感謝してるんだよ。」

「皆さんの力になれたのならうれしいです。」

少しの間二人とも沈黙する。

その後女性が口を開く。

「朝になったらもう行くのかい?」

「はい、私にもやることがあるので。」

「そうかいそうかい、随分と大変なんだねぇ。」

「まぁ、それなりには。」

軽く苦笑いをする。

「でもあんたぐらい強い子なら何でも出来るよ。頑張ってね!」

「はい、ありがとうございます。」

「じゃあ今日はゆっくりお休み。また明日から頑張れるようにね。」

「はい、そうします。」

「おやすみ、アリスちゃん。」

「おやすみなさい。」

そういうと女性は部屋を出ていく。

私もそろそろ寝るとしよう。

明日も朝は早い。

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