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Crazy Fairy Tales  作者: Leica
Side of Alice
2/9

第二章「新たな世界とオオカミ狩りの少女」

一節「不意な遭遇」


私の世界を出てしばらく歩いた見たところ、ようやく新たな世界にたどり着いた。

どうやら物語同士は隣接しているわけではなく、間は森で埋められているようだ。

ただ新しい世界に入れば空気が変わったような感じがする。

今までいた場所とは全く違う。そんな感覚を覚えた。

そういえば私に発現した能力だが、あれはなかなかに使えるものだった。

ここにたどり着くまでの間に何度か賊に襲われる事があったがこの能力のおかげで対処できている。

しかし難点として能力を使うたびに気が狂ったような感覚に陥る。

正気を保ちつつ使えればいいのだがそう上手くは行かない様だ。

このことから私はこの能力を「狂気」と呼ぶことにした。

この「狂気」の力についてはもう少し考えたいところだが...

「よぉ、嬢ちゃん。こんなところで一人で何してるんだい?」

「ここは俺らの縄張りだぜぇ。死にたくなければ金を置いてさっさと帰りなぁ!」

はぁ、またこれか。

どうせこんな奴らは相手にもならない。「狂気」を発動して片付けよう。

そう思ったときだった。

「オオカミさーん。遊びましょー?」

少女の声がして。


――グシャ


目の前で賊の首に斧が振りかざされた。

「あ、兄貴ぃ!」

「あなたも。えいっ!」


――グシャ


またしても不愉快な音がする。

この少女は一体?

「あーあ、もう死んじゃったかぁ。もうちょっと遊びたかったなぁ。」

「あなたは、一体...」

「んー?私?私はメイジ―。メイジ―・ブランシェット。皆からは赤ずきんって呼ばれてるの。」

さっきまで赤かったはずの目を青くしてその少女は言う。

なるほどこの子も...

「私はアリス。あなたはここで何をしてるの?メイジ―。」

「私はねー、ここで一緒に遊んでくれるオオカミさんを探してるの!でもみんなすぐ死んじゃうんだぁ。」

それはそうだ。あんな斧を振りかざされれば誰だって死ぬ。

「アリスは何をしてるの?」

「私は、そうね旅といったところかしら。」

「旅?それじゃあ近くにお家は無いの?」

「そうなるわね。」

「じゃあ私の家においでよ!私の家というよりはおばあさんの家だけど。」

「いいのかしら?」

「うん!じゃあこっち。着いてきて!」

こうして私は赤ずきんに連れられ彼女の「おばあさんの家」行くことになった。



二節「元主役同士の対談」


しばらく森の中歩くと一軒の小屋が見えてきた。

「ここがおばあさんの家だよ!」

家というには少し小さすぎる気もしたが、もともと私が住んでいた家が大きすぎるからだろうか。

そんなことを考えつつ中へ入る。

中におばあさんはいない。

「あら?おばあさんは?」

「気が付いたらいなかったの。多分オオカミさんに食べられちゃったんだと思う。」

平然とした顔で彼女は言う。

しかしそれは少しおかしいのではないか?

「だとしたらここはオオカミに襲われたのよね。」

「多分そうだと思う。」

「じゃあどうしてあなたは無事なの?」

「んー、分かんない。おばあさんのお見舞いに来てそのあと寝ちゃって、起きたらおばあさんだけいなかったの。」

そんなに近くにいても分からないものなのだろうか。

「じゃああなたはオオカミを見ていないの?」

「オオカミさんはその後に来たよ。」

「後に?」

「うん。」

「じゃあどうしてオオカミのせいだと思ったの?」

「それはね、ここがそういうお話だからだよ。」

やはりか。彼女はここが物語であることを知っている。

「そう、やっぱりあなたも『主役』だったのね。」

「なーんだ。気づいてたんだ。」

「森であなたが賊を殺してた時に気づいたわ。」

「じゃあ、あなたも?」

「ええ、そうよ。私も前まで隣の物語の『主役』だったわ。」

「てことは私たち似た者同士だね!」

それが良い事なのか私には分からない。だが彼女にとっては喜ばしいことだったのだろう。

「でもどうしてあの時に気づいたの?」

「それはあなたの目の色がさっきと今とでは違うからよ。」

「目の色?」

「あなたがあの時使っていた能力、あれは私も持っていてあの能力を使っているときは目が赤くなるの。それはあなたも同じだったのよ。」

「へ―そうなんだぁ。全然知らなかった。」

やっぱりこの力について他の主役たちもよく知らないのだろう。彼女も意識して使っているとより無意識に使っているらしい。

「まぁ私もこの力が何なのかはよく知らないわ。」

「でもさぁ、アリスもこの力が使えるってことは武器を持ってるんでしょ?どんなのか見せてよ!」

彼女は私の武器に興味を示している。やはり普通の少女ではない。

だが武器を見せるぐらいならいいだろう。ついでに金稼ぎでもしようか。

「それじゃあ『オオカミ狩り』に行くのはどうかしら?」

「いいね!行こ行こ!」

そして私たち二人は「オオカミ狩り」という名の「賊狩り」をするためにおばあさんの家をでた。



三節「楽しいオオカミ狩りの時間」


グシャリ、グチャリと森の中に不愉快な音が響く。

森に入るとすぐに賊は出てくるが、一瞬にして私かメイジ―に狩られる。

何人かの賊を狩ったところでメイジ―が口を開く。

「アリスの武器は時計の針みたいだね。」

「みたいじゃなくて時計の針そのものよ。」

「でも剣だよね。」

「そうね。」

「いいなぁ。」

「何が?」

「アリスの武器が綺麗なのが。」

そんなこと気にもしていなかった。確かに装飾はきれいだ。

「でもそんなの人を斬るためにはあってもなくても変わりないわよ。」

「でも私の武器よりはよくない?私の武器ただの大きな斧だよ?オオカミさんを怖がらせちゃう。」

「そんな大斧を軽々と振り回すあなたの方が怖いわ。」

「えへへ。」

そこは照れるところなのだろうか...

ますます彼女の思考回路が分からなくなる。

「狂気」を使う前から彼女は狂っているのではないだろうか。

「それにしてもここの辺の賊は弱いわね。」

森に入ってから何人も殺してはいるが、手ごたえのあるものはいない。

「そうだね、すぐに死んじゃうからつまんない。」

「もういっそのこと賊の頭でも狩りに行くかしら?」

「そうしたいところなんだけど。」

「何か問題でもあるのかしら?」

「うん、この世界のどこを探しても見つからないの。」

「そうそれは残念ね。」

「でも私はオオカミさんとも遊べたしアリスの武器も見れたから満足!」

「ならよかったわ。」

私もしばらくは生活に困らなさそうなほどの金が手に入ったからこれで良しとしよう。

「じゃあそろそろ戻りましょうか。」

「うん、そうしよう!」

殺しを楽しんだからか彼女のテンションはさっきより上がっている気がする。やはり根っからの狂人気質だ。

そんなこんなで私たちは狩りを終えて一度帰ることにした。



四節「さよならとまたね」


「そろそろ行こうかしら。」

「え?もう行っちゃうの?」

「ええ、私にもやることがあるからあまりゆっくりはしていられないの。」

そう私には不思議の国を作るという目的がある。ここに長居している時間はない。

「大丈夫よまたいつか会えるわ。」

「そうだね、じゃあ今日はもうお別れだね。」

「それじゃあ行くわ。さよなら。」

「待って!」

「え?」

「『さよなら』じゃなくて『またね』って言ってお別れしよ!」

私にはそのこだわりが分からないがきっとメイジ―には何かこだわりがあるのだろう。

それぐらいなら別に構わない。

「分かったわ。じゃあ、またね。」

「うん、またね!」

そして私はおばあさんの家を後にした。


正直この世界では重要なことが確認できたと思う。

それは私以外の元主役も「狂気」を持っていること。

今回メイジ―と対立することは無かったが他の世界でもこうだとは限らないだろう。

私が自分の障害になるものを排除するのと同様に、自分の理想を叶えるために私を殺すべきと判断する人間がいれば対立することはあるだろう。

その時相手も「狂気」を持っているのであれば今までのように簡単にはいかない。

それを事前に確認できた。それは大きな収穫だろう。

これからは元主役を見つけてもうかつに近づかずに警戒することにしよう。

そんなことを考えつつ歩みを進める。

そろそろこの世界も出るころだろう。

さぁ、次はどんな世界にたどり着く?

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