表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/58

第六話「虚無の森」

 あの失禁レースゲーム事件から一週間後。


 俺は久しぶりにユアルのソロプレイモードを起動していた。


「MODの導入は……お、いけてる」


 倉本らが共同製作したMODの導入が成功していることを確認した俺は、さっそく謎のお絵かきゲームを済ませワールドを生成した。

 まだ試作段階らしいが、どうだろうな。




「……お、初期地は森か」


 ロードが終了し、周囲を見渡す。

 ふむ。木の種類は全部同じか。


 俺はひとまずその辺の石を拾って木を伐採することにした。


「ふんっ! おらっ!」


 石で必死に殴りつけるが、あとどのくらいで木が倒れるのかがさっぱり分からない。

 ヒビが入るエフェクトなりなんなり用意しとけよ……


 終わりの無い作業に辟易しだした頃。

 ポコッと音を立てようやく木が倒れ、木材となった。


「ふー……」


 身体的疲労は無いはずなのに何でこんなに疲れてるんだ。

 そう愚痴りつつも木材をせっせと拾い集め――


「うおッ!?」


 バチッと音を立て後ろに吹っ飛ばされる。

 なんだ!?


「うっわ気持ち悪ぃなぁ!?」


 見れば眼前には全身緑色のトランクス一丁の男。

 表情は半笑いで固まったまま動く気配はない。多分その顔しか設定されてないのだろう。


「敵モンスターか!」


 というかステルス性能が高すぎる。

 一発でHPの三分の一を持ってく火力といい、序盤に出していい敵じゃないだろ。


「食らえ!」


 持っていた石で緑男に殴りかかる。

 絵面が犯罪的すぎるが仕方ない。


 だが石ではリーチが緑男と同じなのか、緑男が吹っ飛ぶと同時に俺も吹き飛ばされる。


 クソッ。撤退して武器を作るか。

 今ある木材だけでも石斧が作れるはず。


 俺は緑男に踵を返してその場から逃げ出した。

 とりあえず森を抜けて草原に出よう。


 そして俺は木の間から出てきた二体目の緑男にぶん殴られて死んだ。






「リスポーン、と」


 リスポーンした瞬間に緑男にぶん殴られノックバックしつつ、勢いそのままに逃げる。


「リスキルの危険性が高すぎるな」


 今度は前方に湧く緑男にも注意しなければ。

 ……おっと、危ない。ルートを軽く右に逸らし前方に見えた緑男との戦闘を回避する。

 先ほどの反省を活かし慎重にルートを選びながら逃走する。


 後ろからドタドタと足音がうるさいのでチラリと振り返ってみる。

 そして俺は見た事を後悔した。


「全員ついてきてる……」


 索敵範囲がでかすぎる。

 これこいつらをある程度初期地から離れさせてからリスポーンした方が良いのではないだろうか。

 そんな作戦を思いつき、ではどのくらい離すべきか等と考えていると、前方にふいに開けた空間があらわれる。

 その開けた空間には薄く青みがかった液体が楕円上に広がっていた。

 

「池か」


 ひょっとしたら緑男を撒くのに使えるかもしれない。

 俺は池へと飛び込み、その蜂蜜のような感触に悲鳴をあげた。


「粘性の調整ガバガバじゃねぇかッッッ!!!」


 やたらねちょねちょと纏わりつきこちらに不快感を与えてくる水。

 いやひょっとしたら蜂蜜溜まりとかそういうオブジェクトの可能性も無くは……いやこの見た目でそれは無いな。池として作ってあるはず。


「く……」


 後ろの緑男達がとうとう池に辿り着く。

 だがこの手の敵モンスは水中で動きが鈍るってのが鉄板だ。なんとかこっちにおびき寄せて……


 緑男が池に入る瞬間、どうやら水中での動きを入力していなかったらしくアバターの初期状態であるTの字になりスイーッとすべるようにしてこちらに近付いてきた。


「うぉおおおああああああああ!?」


 続々とTの字になった半裸緑男が俺に接近してくる。

 だが移動モーションもないということは当然攻撃モーションもない。

 特に何をしてくるでもない緑男はひたすら俺に接近しぐいぐいとその身体を押し付けてくる。

 必死に拳でノックバックさせ池を進んでいると、正面からもTの字の緑男がスイーッ……



 俺はゲームを終了した。




「ホラゲーMODかな」


 俺はポツリとそう呟いた。






【MODの動作に関する報告及び質問総合スレ】



137:新人


 森MODの動作確認してきた

 あれツール作成までいけたやついるの?


138:名無しの開拓者


 新人ニキおっす

 あれ初期地が草原になるまでリセマラゲーだよ


139:新人


 ああ……


140:名無しの開拓者


 野人にリスキルされたんでしょ?


141:新人


 いや池で囲まれて萎えた


142:名無しの開拓者


 池あるのか


143:炭鉱マン


 池 ×

 蜂蜜溜まり ○


144:名無しの開拓者


 野人強すぎるよなぁ


145:名無しの開拓者


 蜂蜜溜まりとは


146:炭鉱マン


 粘性の設定がガバ


147:新人


 そうそう

 しかも野人に水中のモーションが設定されてないからTの字になった野人に追い回される


148:名無しの開拓者


 草


149:名無しの開拓者


 草


150:炭鉱マン


 そうなんか

 俺、池があったの草原だから知らんかった


151:新人


 はー、初期地が草原になるまでリセマラすっかな


152:名無しの開拓者


 そこそこ確率渋いよ

 なんか森の生成確率えぐい


153:名無しの開拓者


 それな

 俺百回ぐらいワールド作り直してやっと草原だった


154:名無しの開拓者


 体感、ガチャでSSR引くぐらいの確率


155:新人


 それ無理じゃん……


156:森マン


 またまた俺、何かやっちゃいました?w


157:新人


 ぶっとばすぞ


158:名無しの開拓者


 野人が常に半笑いなのまぁまぁ腹立つからやめろ


159:名無しの開拓者


 野人の索敵範囲ナーフして


160:炭鉱マン


 池の粘性ガバガバなのなんとかしろ


163:名無しの開拓者


 ダメージ軽減の方法がない上に回復が自然回復待つ以外ないような環境であの火力はまずいのでそこもナーフして

 

162:森マン


 いやまぁ、試作段階だから……


163:新人


 あ、あと木がどんぐらい削れてるか分からんのが精神的につらい

 ヒビのエフェクトが広がる、ぐらいのやつでいいから追加してくれ


164:森マン


 もろもろ把握したんで頑張って調整します……


165:炭鉱マン


 はい。


166:名無しの開拓者


 がんばって




167:将棋マン


 将棋MODアップデートしました!

 追加要素:AIと対局後のプレイング診断


168:名無しの開拓者


 なんか草


169:名無しの開拓者


 将棋マンさん!!!!!!!


170:名無しの開拓者


 虚無でやさぐれた心に染みる


171:炭鉱マン


 この掲示板の良心


172:将棋マン


 なんかよく分かんないけど好評っぽくて嬉しい


173:新人


 良かったね





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] くそ面白い、作者さんは天才だと思う
[一言] 将棋modだけ不具合とかの話一切なくて、かなり有能なのがいいな
[良い点] 笑う
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ