加勢参上! 最終決戦へ繋ぐ物語!!
最大の相棒であり龍皇の娘、ラナ。
天才ゴーレムマスター、マキナ。
未だ最強の盾使い、メリッサ。
加勢の参戦により窮地は脱した。
しかしながら一つの疑問が頭に浮かぶ。
彼女達は領地の防衛をしていたはず。
まさか、もう陥落したのか?
「そんな事は無いわ!」
『危ないですよシーシャさん!?』
ラナから飛び降りた勇ましい声の主。
当然、後を追ってマキナも降りてくる。
青ざめたマキナとキメ顔のシーシャ。
その対比が二人の関係を物語っていた。
本当、頼れるがお転婆な上司である。
しかし直々にやって来るとは。
彼女の言葉は嘘でも無いらしい。
二人はうまく着地し、無駄に格好付ける。
彼女の英雄観を真面目に聞きたい。
「アリク達に集中して、こちらが疎かになっていたわよ?」
彼女が語ったその言葉。
今の状況を考えると頷けた。
モンスターは全方位から迫っている。
当然、中心部の方向からも。
使役の範囲には限度があるのか?
「マキナ! やりなさい!」
「はい!」
彼女達の策が見えて来た。
ここで決着をつけるつもりらしい。
モンスターもブライもまとめて。
マキナが作成するゴーレムが証拠だ。
正しく規格外と呼ぶ他に無い、その姿。
『オイオイオイ何だこりゃよォ!!』
「ゴーレムは日々進化するのです」
シーシャを守るように築かれるゴーレム。
端的に言えば、巨大要塞である。
軽く見積もって5階層分の城壁。
相変わらず底の見えない才能である。
『地面ごとぶっ壊す!』
「やれるものなら、どうぞ?」
いくら不死でも攻撃は通る。
変化したのは魔王の能力のみ。
筋力といえば未だシズマを下回る。
全壊剣無しで攻略は困難だろう。
しかしブライは狼狽した。
メリッサに弾かれた全壊剣が無い。
投擲したほうも消えている。
「どこ探してんの三流勇者?」
「お前の探している物はもう無い!」
俺はその行方を目で追っていた。
マキナ達がいて、2人がいない訳がない。
流石俺の後輩。全く抜け目が無い。
武装に関して2人の前に出る者はいない。
だからこそ脅威を摘み取ったのだろう。
全壊剣は両方とも回収されていた。
マキナのゴーレムも含め、見事な連携だ。
「ブライ・シン! 悪行もこれまでだ!」
『何だテメェは!!?』
「俺の名前はサレイ! お前と同じ勇者として、ここに罰を下す!」
「残念だったねーエセ魔王くぅん?」
リーヴァの悪口も健在である。
これで要塞が破壊される危険も減った。
後はどれだけ持ちこたえられるかだ。
現在ある武器は肉体とモンスター達のみ。
ならばブライのやる事は一つだろう。
『行け! モンスター共ォ!!』
全方向からの総攻撃。
こんな考えは誰にでも読める。
問題はその圧倒的物量のみ。
こちらには歴戦の仲間達がいる。
俺もこのまま倒れてはいられない。
龍皇は負傷して動けない。
1人でも多く戦える者は必要なはずだ。
少しだけ回復した魔力で剣を生成する。
だが、マキナの指示は予想に反した。
「アリさんは要塞内で休んでください」
「……俺も戦う」
「まあそう言うと思ってました」
反論するも、簡単に流されてしまう。
まるで子供をあやすかのように。
——いや、今の俺は子供同然か。
予想に反して枯渇寸前の魔力。
モンスター達を維持するだけで精一杯。
生成した剣も歪だ。
それに比べてブライはどうだ?
不死という能力のせいで常に全快。
以前より確実に強化されている。
消耗も相まって、力量は逆転していた。
「今のボク達では彼に勝てるかわかりません。それでも食い止める事はできます」
受け入れる事ができない提案。
彼女達は確かに強い。
だが、最悪の結末を考えてしまう。
本当に命を落とす者が現れるかもしれない。
それを容認できなかった。
「大丈夫。誰一人欠けませんよ」
完全に見通されていた。
俺が弱っている事も。
何を不安視しているかすら。
ああ、大丈夫だ。
僅かな心配すら馬鹿馬鹿しく感じる。
勝てるかわからないと彼女は言った。
よくよく考えればそうは思えない。
サレイやメリッサまでいるこの状況。
敗北するほうが難しいだろう。
ボロボロの俺が心配する方こそおかしい。
今は信頼するしか無いのだ。
「それともボクの策が信用できませんか?」
「はは、それは無いな」
自嘲の笑い混じりに返事する。
対して彼女も少しはにかむ。
「やりますよ皆さん」
彼女が告げると、加勢は一斉に叫んだ。
その中にラナの咆哮も混じる。
俺も今できる事をしなければ。
アビスへ視線で指示を送る。
龍皇とシズマを要塞内へ退避させろ。
リッカもついでに連れて行け。
先んじてここへ来た全員の消耗は激しい。
アビス達は回復している。
だが、精神面での疲労もあるはずだ。
『————!!』
ヒトデ態に変身するアビス。
そのままリッカと負傷者2人を背中に乗せ、俺ごと僅かに開け放たれた要塞の門へ突っ込んだ。





