表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/184

龍皇、出陣!

 

 体力の限界など忘れていた。

 蓄積されたダメージも消し飛んだ。

 リッカが地面に刺した全壊剣を引き抜く。


 そのままブライへと斬りかかる。

 交わる一対の全壊剣。

 彼はこの剣の性能を発揮できている。

 だが、こちらの剣が破壊される事は無い。

 姉妹剣だからだろうか?


 交えただけでわかるブライの経験値。

 筋力はシズマを下回るが、腕前は真逆。

 剣術を基本に取り入れているだけはある。

 それでもサレイよりは下。

 にも関わらず、妙な威圧感がある。

 何かを隠しているのは明白だ。


『挨拶も無しか?』


 不意打ちをしたお前が何を言うか。

 へらへらと笑いながら攻撃をいなす。


 離れた当初はただ問題のある人物だと、人間の範囲で思っていた。

 しかし彼の策が明るみになるうちに。

 俺以外のメンバーが散っていくうちに。

 ブライという存在の危険性を知る。

 だが、気づいた頃には遅かった。


「退け! 小僧!!」


 背後から迫る低い声。

 俺はそれに応じて身をかがめた。

 不意に空振りするブライの剣。


 大きく隙が生まれた彼の体。

 そこに強烈な跳び蹴りが入る。

 足だけを龍の鱗に包んだ男の姿。

 それは間違いなく龍皇の足だった。


 協力は嬉しいが、何故?

 協力しないと言ったのは龍皇だ。


「かつて魔王様に仕えた我が問う」

『あァ?』

「貴様は何故、その力を欲す?」


 ……そういう事か。

 初めて知った事実である。

 別段意外という訳では無い。


 暗黒龍の寿命は人間の比では無い。

 それに龍皇レベルの実力者であれば、魔王の配下であったとしてもおかしくは無いだろう。


『当然、理想の為だ!!』


 龍皇の問いにブライは答える。

 当然両者とも攻撃の手は止めない。


「そんな下らぬ事の為に、血縁者を傷つけたか!」

『……今なんつった?』


 拮抗すると同時に声色が変わった。

 ここまで激しい龍皇も珍しい。

 ブライが腹の底から怒りを表すのも同じく。


 それ以上に拮抗しているのも不可思議だ。

 龍皇の強さは既に何度も確認している。

 人の姿でも彼は無双していた。

 俺の観測が見誤ったか?


 龍皇の言葉に相当腹を立てたらしい。

 ブライの攻撃は一層激しくなっていく。

 それを寸前で躱す龍皇も凄まじい。

 やはり最強種族の統率者は伊達では無い。

 その瞳は確実に反撃を狙っている。


『俺の理想が下らねェだとォ!?』

「それでは過去の魔王と何も変わらん!」

『うっせェなぁ!!』


 乱撃から一度大振りへ。

 縦一線に振り下ろさせる全壊剣。

 これを跳びのき躱す龍皇。

 剣先は空振り、地面へと突き刺さる。


 それだけで白亜の地面は陥没した。

 大きな地響きを立ててヒビ割れていく。

 本人よりもあれのほうが脅威だ。


「気を付けろ龍皇、その剣は」

「分かっている!」


 余計なお世話である事は理解している。

 しかし常に接近戦で戦っている。

 いつ攻撃が命中してもおかしく無い。


 暗黒龍の鱗は絶大的な防御力を誇る。

 代わりに治癒能力は龍でありながら低い。

 ラナの背中の傷から俺は学んだ。

 ワイバーンであれば、あの程度の傷は数日で跡形もなく完治する。


 現状唯一暗黒龍を攻撃できる剣。

 あの剣は天敵だ。


 それを知ってなお接近戦を止めない。

 先程の言葉が気にかかる。

 過去の魔王と同じとは、一体……?


「アリク! シズマが!!」


 リッカの必死な声に呼び戻される。

 放心状態から帰ってきたようだ。

 腕の中には目を開けたまま動かぬシズマ。

 おびただしい量の出血を伴っている。


 もう彼女は手遅れだ。

 一切の魔力を感じられない。

 完全に枯渇した状態からの攻撃。

 人間に攻撃するのとさほど変わらない。

 諦めかけたその時。


「まだ、生きてる!」


 俺と目を合わせリッカは叫ぶ。

 僅かな一瞬、俺はそれを疑った。

 彼女は既に事切れていると。


 それでもシズマは瞳で訴え続ける。

 気が動転して判断が鈍った可能性もある。

 しかしその瞳に淀みはない。

 まるで確信を抱いているかのように。


 ならば俺は彼女を信じる。

 第一、魔術ならリッカの方が詳しい。


「治癒と蘇生、魔力回復がうまくいけば!」

「一人でできるか?」

「……うん!」

「なら回復に専念してくれ!」


 指示を出すと同時に変身を解除する。

 セイントデビルの複雑な能力。

 今の彼女はかなり精密に操作できている。

 S級の貫禄がやっと見えてきた。


 俺が手伝える事は無い。

 あっても邪魔されないようにする程度。

 つまり、龍皇と共に勇者を倒す。

 俺に残された最後の仕事だ。

 そこにもう一体のモンスターが並び立つ。


 アビスだ。

 ラナと戦った際の消費を回復したらしい。


「行けるか、アビス?」

「——ん」

「ならお前には攻防両方を頼みたい」

「————ん!」


 一瞬のうちに戦闘形態へと変身し、龍皇とブライの戦闘へ参戦するアビス。

 俺も負けてはいられない。


「龍皇、ここは協力しよう」

「……足手まといになるでないぞ」

「当然だ」


 ブライの戦闘力は未知数。

 かつての彼では無い事は確かだ。

 だからと言って負ける訳にはいかない。

 因縁の対決を始めよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版が2019年3月9日に発売します!
さらに濃厚になったバトルシーン! 可愛いモンスターたちの大活躍をお楽しみください!!

書影
書籍版の公式ページはこちら



― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ