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最強召喚術師は"もっと"強くなりたい

 

「虚影召喚?」

「ああ、知らないか?」

「召喚術なら先輩の方が詳しいでしょ」


 初動は非常に早かった。

 シーシャや要人の救護要請のおかげだ。

 大陸中心部から、討伐隊が派遣された。


 中でも幸運なことが1つ。

 それは隊長がサレイである事だ。

 彼が勇者というのは嘘じゃなかった。

 おかげでこうして情報をやり取りできる。


「ふー食った食った!」

「お帰り、リーヴァ」

「お前の相棒借りてるぞ」

「……アンタ等まーだ話してんの?」


 お腹をさすってリーヴァが戻って来た。

 来るなり中心街の食べ歩きだ。

 余裕なのが少し羨ましい。


「何の話?」

「何だっけ……虚影、召喚?」

「あー、懐かしい言葉ね」


 勢いよくソファに寝転がるリーヴァ。

 そのまま小さくげっぷをかます。

 美人なのに相変わらず品性がない。


 ……ん?


「リーヴァ、お前知ってるのか?」

「知ってるも何も使ってたもん」


 俺もサレイも同じ顔で唖然とした。

 開いた口が塞がらないとはこの事だ。


 物知りというか経験が豊富というか。

 どんな人生送ってるんだ、彼女は。

 サレイもかなり魔術は詳しいぞ。

 博識のマキナすら知らなかったし。


 というか結局正体不明の彼女。

 本人曰くラナと同じ立場だとと言う。

 その割に掴みどころが無さすぎる。


 結局一体何者なのだ。


「それはまだまだ秘密って事で」


 心は読まれるし。


「虚影召喚は知っての通り召喚術じゃ無い」

「見た目は僅かに似てるがな」

「ビンゴ、そこなのよね」


 勢いよく立ち上がるリーヴァ。

 その勢いで少し嗚咽したが、持ち堪えた。

 気分悪くなるまで食うのはやめろ。


 そして始まる為になる魔術教室。

 召喚術一辺倒、少しゴーレム知ってる程度の俺からすれば有益な情報ばかりだ。

 性格が少し難ありだが。


「呪術が魔術に変わる頃、よく使われていた魔術の一つね」

「だいぶ昔だな」


 魔術史の始まり、黎明期か。

 もう1000年以上昔の話だ。

 召喚術も完全な成立はもう少し先。

 それ以上前の魔術とは。


 シズマはどこでそんな魔術を知った?

 彼女はハーフサキュバスだ。

 人よりは少し寿命が長い。

 それでも1000年は生きられない。

 長くて300年がいいところだ。


 リーヴァもリーヴァだ。

 何でそんな魔術を使った事がある?

 お前いくつだ?


「機能は2つ、1つは転送や転移」


 疑問もよそに解説は続く。


 転移、白濁の宝石を出したアレか。

 確かに便利な魔術だ。

 見た目が無駄に派手ではあるが。


「もう一つはが重要……鋳造よ」


 鋳造、聞き慣れない単語だ。

 武器や工芸品の制作に使う技術。

 決められた型に素材を流し込むアレだ。

 普通は金属だが、形態が近いらしい。


 虚影の内部で型を作り、そこに規定量の魔力を流し込む事で、様々なものを創造する。

 それが虚影召喚の理論だという。


 ここで大切な事項が1つ

 型の代わりに情報を流用できる事だ。


「ということは、あのラナは」

「精神を型の代わりにしたコピーって事」

「なんか難しい話だなぁ……」


 俺もふんわりとしかわからない。

 だがあの肉体が模造である事はわかった。

 でもただの模造品では無い。

 召喚術と違い、モンスターの自我を介さないため完全に操作できる。


 ダメージも型となった本体へ行く。

 情報を骨格にすれば、より強度も増す。

 非常に厄介だ。


 しかも厄介なのはこれだけでは無い。

 もう一つの懸念材料がある。


「サレイ、お前武器に詳しいよな?」

「まあ戦術がた」


 話の流れを変え、もう一つ情報を聞く。

 ブライの持つ剣についてだ。


 しかし形状の説明が難しい。

 ちょうどそこに鉛筆とメモがあった。

 絵を描いて見せてみる。


「こんな剣、知らないか?」

「ほぼ鉄板なんだが」

「形的にはこれであってるぞ」


 ……正直、絵は苦手だ。

 でも特徴はつかめているはず。

 頼む、伝わってくれ。


「……全壊剣?」

「あー確かに似てるな」


 リーヴァの挙げた名前に彼も納得する。

 ナイスだリーヴァ。


「全壊剣がどうしたの?」

「ブライ……勇者が持ってた」

「その話は本当か!?」


 俺の話にサレイが食いついた。


 全壊剣は世に2本しか無いらしい。

 サレイも探していたのだとか。

 だが、問題はその性能だ。


 振り回すだけで建物を破壊する威力。

 それ自体が全壊剣の効果らしい。

 破壊力に特化した単純に強い大剣。

 ブライも手放さない訳だ。

 持っているだけで強くなるのだからな。


「先輩、聞いてくれ」


 途端にサレイは真剣な顔をする。

 俺も少し身構えてしまう。

 昔はこんな顔を作れる奴じゃ無かった。

 ……成長したんだな。


「討伐部隊の出発日時は10日後だ」

「それは知っている」

「その対象に……暗黒龍も含まれてる」


 初めて知った情報だった。

 それに対し、俺は驚愕した。


 彼女がラナである事は知らされている。

 シーシャもそれを言ったはずだ。

 大陸の中心部は冷徹らしい。

 ラナの事も、兵の事も考えていない。


「人類は暗黒龍を倒した事が無い」

「それでも挑戦する……か」


 暗黒龍に人間が挑む。

 そんなの遠回しな自殺と変わらない。

 一度も討伐された事の無い人類の天敵。

 それが世間での暗黒龍の印象だ。


 つまり人類は打ち負かしたいのだ。

 天敵を倒し、全生命体の頂点に立つ。

 その武勲が欲しいのだろう。


 ……その為にどれだけ犠牲を要する?


 ラナだけじゃ無い。

 サレイも、リーヴァだってそうだ。


「先に俺達が事件を解決させる」


 方法はこれしか思いつかなかった。

 期限はわずかしか無い。

 その間に勇者パーティとの決着をつける。


 ラナも、仲間も、他のみんなも。

 無意味な争いで傷つけさせはしない。


「提供できる情報はこれくらいよ?」

「でも力を貸す事はできる」


 そう言ってサレイは手を伸ばした。

 情報は十分な程もらった。

 ここからは俺が策を立てる番だ。

 だいたいの作戦はもう計画している。


 ………そうだな、よし。

 力を貸してくれるなら頼んでみよう。

 最強に胡座をかくのも終わりだ。


「少しでいい、俺に剣を教えてくれ」


 俺は更に上を行く。

 モンスターだけじゃ無い、俺も強くなる。


 最強の、もう一つ先へ。

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