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カリスマお嬢様は召喚術に興味があるようです

 

「お嬢様、アリクを連れて参りました!」

『早かったわね、入れて頂戴』


 白を基調とした豪勢な屋敷。

 まさかこんな場所へ訪れる日が来るとは。

 流石のラナも少々緊張しているようだ。

 目も泳ぎっぱなしである。


「くれぐれも失礼のないように」

「了解。ここまでありがとう」


 憲兵と最後の問答をする。

 そして、俺の倍はある高さの扉が開けられた。



「ご機嫌よう、アリク」

「お招きいただき光栄です……えーと」

「シーシャ・バックス。ようこそバックス領へ、歓迎するわ」


 お嬢様と呼ばれていたこともあり、彼女が幼いであろう事は予想できていた。

 しかし、その気品は紛れもなく本物だ。


 幼い体躯から溢れる威厳が凄まじい。

 不思議と彼女に見入ってしまう。


「私の体がそんなに不思議かしら?」

「い、いや、そんなことは」

「そんな感じでもう少し楽になさい」


 小慣れてる感が半端ない。本当に子供か?


「すっごい素敵なお屋敷です! 真っ白で良い匂いもして!」

「そうかしら? ウチは小さいほうよ?」


 薄紫の髪をかき上げ、ほのかに微笑む。

 ラナのバカ。楽にしすぎだ。


 しかし怒るような気配は一切ない。


「えっと、何で呼ばれたんだ?」

「あなた、農村を守ってくれたのでしょう?」

「まあ流れで」


 だから呼ばれたのか。

 てっきり勝手に住んだ事への注意かと。


 あの時は飯と布団しか頭になかった。

 倒し方も少し手を抜いていたし。

 まさか英雄扱いされるとは。


「盗賊を捕まえてくれたと聞いたけど?」

「それも流れで」

「正義感が強いのね、尊敬に値するわ」

「後味悪いのは嫌ですし」


 会話につかみどころがない。

 一方的に質問されているからだろうか。


 なら、こちらからも少し質問してみよう。


「盗人を捕まえた時に思ったんだけど、いつもあの人数なのか?」

「ウチで盗みを働いたのよ。だから特別」

「何を盗まれたんだ?」

「母の形見のネックレスよ、大したものじゃないわ」


 十分大したものじゃないか?

 やはり貴族の物差しは違うのだろうか。


 母親の話が出て気づいた。

 そういえば、家族はどうなっている?

 辺りに親や保護者の類はいないようだが。


「名義上は父が領主になっているわ」

「そのお父上はどこにいるんだ?」

「病床でね、実質私と議会で仕切ってるの」

「へぇ、結構苦労してるんだな」

「そうでもないわ? だって楽しいもの」


 政事を楽しんでいるのか、その年で。

 各国の関係すら知らない俺と大違いだ。

 仲良くなったら教えてもらいたい。


「って、そんなのどうでも良いのよ」


 目をカッと見開き、何かを思い出したかのように口を開いた。こちらも少し驚く。


 どうでもいいのか、今の話題。


「アリク、あなたの素性を調べたわ」

「俺の素性、ですか?」

「えぇ、ごめんなさいね」


 深刻そうに言うが、大それたものか?


 ただのモンスター好きな少年時代。

 色々事件があった数年間。

 召喚術の職能を知り、めっちゃ勉強して。

 ラナの面倒とかを見ていたら、いつの間にか召喚術師たちから最強と呼ばれていた。


 特筆する点がなくて恥ずかしいくらいだ。

 これが他職の最強ならなぁ。

 もう少しドラマ性もあるんだろうなぁ。


「と言っても、召喚術を極めたあなたが何処かの勇者パーティに引き抜かれたという部分しかわからなかったわ」


 そこだけかよ。


 一番最悪だった時期じゃんか、最近だし。

 せめて少年時代のエピソードをだな。


「何で勇者に引き抜かれたあなたが、こんなとこにいるのかしらってね?」

「えっと、クビになりまして」

「……それは大変ね」

「ホントですよ。あぁ全く」


 話に出すだけで勇者様のことを思い出す。

 その度に心火を燃やすんだ、俺。


 離れてわかる、勇者様のゴミっぷり。

 こき使うだけ使って終いにはポイ。

 なにこのブラックパーティ。


「そこで一つ、提案があるの」


 提案? 一体何の話だ?

 まさか、仲違いを解消してくれるとかではないよな? そんな事されても困る。

 あそこは異常だ。今だからわかる。


 もしそうだったらどうするか。

 そう悩んでいた時だった。


「あなたの強さ、見せて頂戴?」

「え?」

「結果次第で色々支援してあげるわ。資金繰りもキツイでしょう?」


 つまりは俺を試したいということか。

 確かに資金繰りには困っている。

 ギルドに入ろうにも、勇者からクビにされたという負の実績は簡単に拭えない。


 そう考えると、彼女の案はぜひ受けたい。

 特にデメリットも無さそうだ。


 返事の代わりに、俺は一度頷く。

 するとシーシャは誰かを手招きで呼び寄せた。


「彼女はマキナ。ウチの顧問魔術師よ」


 彼……いや、彼女が対戦相手か。


 不思議な雰囲気の女性だ。見た目は俺より年下なのに、僅かな色気を感じる。

 それでいて、どこか少年のようだ。


「良い戦いを期待しているわ……クク」

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