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開戦の一矢! 勇者パーティVS召喚術師!!

 

 中心街は大いに賑わっていた。

 普段から騒がしいが、その比では無い。

 最早悲鳴にすら近い歓声が上がる。

 全てメインストリートからの声だ。


 何でも今回の来賓は一部で有名人らしい。

 声の質的には若者が多い。

 つまり、流行というものか。


 王侯貴族が人気になるのは珍しくない。

 特に若者の熱狂は過去にもある。

 カリスマ性と美貌があれば大人気だ。

 所謂ファッションリーダー的存在。

 どうやらその手の来賓らしい。


「おっと、召喚術師殿」

「怪しい奴はいないか?」

「見る限りはいないと思われます」


 会談は予定通りに行われる。

 シーシャの言っていた事は正しかった。

 上流階級のメンツというのは難しい。


 それの為に命を張る価値はあるのだろうか。

 当然、俺には全く理解できない。


「ラナ達はどうだ?」


 携帯用通信ゴーレムに話しかける。


「まだ安全です!」

「——無事」

「上空は?」

「特に無いかなー」


 来賓側の護衛にラナとアビス。

 シーシャの護衛に金銀姉妹とメリッサ。

 観客へと混じった俺とマキナ。

 上空ではリッカが監視している。


 他にも大量のカラス。

 隠すように設置したイビルアイ。

 他にも様々なモンスターを投入している。

 またゴーレムも張り巡らされている。

 最強の管理体制だ。


 それでも油断はできない。

 相手は狙撃を得意とする射手だ。

 宝石の大半をまだ隠し持っている。


 俺達は後手に回っている。


「ダヌアはどうだ?」

「さっき見た時に動きは無かったですね。愚痴は吐いてますが」


 ダヌアは隔離されている。

 憲兵も時間毎に交代し、常に監視状態だ。

 加えて最強のスライムもいる。

 アイツならダヌアを任せても大丈夫だろう。


「引き続き監視を頼む」

「はい!」

「——ん」

「りょーかいー」


 上空、観客共に問題なし。

 護衛の憲兵に紛れている訳でも無い。

 ならば勇者様達は逃げたのか?

 いや、そんな事は無い。


 あの日を境に検問は厳しくなった。

 検問以外の防壁や上空も監視されている。

 それどころか、魔力の微弱な強弱すら今の俺たちには有力な情報として手元にあるのだ。


 彼らは確実にここにいる。

 どこかわからないが、潜伏している。

 何かを引き起こす為に。


「……俺も動くか」


 カラスとイビルアイに視界を繋ぐ。

 俺達ができる彼等への牽制。

 それは居場所を見つけ出す事だ。


 相手は暗殺の力を持つ射手・ホノン。

 ネム達のように気配を出すような事は絶対にしない。

 勇者様もどこにいるかわからない。


 宿屋や周囲の建物の屋上。

 ゴミ捨て場にもカラスを飛ばす。

 これ以上離れると狙撃は難しくなる。

 シーシャが提示した本に記載されていた。


「……本当に、これで合っているのか?」


 思考に一抹の不安がよぎる。

 疑え。本には何と書いてあったか。

 内容は「射手の歴史上最高狙撃距離」。

 俺はその距離よりやや大きい範囲を調べているに過ぎない。


 ——その前提が間違っている。

 勇者様は言った。

 ホノンは今日、伝説になると。

 果たしてただの暗殺が伝説になるか。

 確かに有名な1つの時間にはなるだろう。

 それを伝説と言えるだろうか。


 伝説の意味が他の部分にあったら。

 記録に残る程の偉業は伝説と呼べる。

 本に記録が載る事になるのだ。

 ただの人殺しのはずなのに。

 これは、伝説と呼べるだろう。


「まさか、伝説を作るって」

「どうしましたアリさん」


 イビルアイの視力を最大に引き上げる。

 大量のイビルアイを一度に行使する。

 彼等はそこそこ強力なモンスター。

 少しだけ負担もかかる。


 だがそんな事を気にしていられない。

 もし俺の予感が的中しているなら。

 すぐにでも動かなければ、先手を取られたまま奴らの思い通りに事が進んでしまう。


「今すぐ防御に移れ」

「何故ですか?」

「射手を見つけた。俺はそこに向かう」

「……わかりました」


 記録上の最大射程よりさらに遠く。

 広いようで狭い中心街。

 その端にある建物の最上階の1つ下。

 彼女達はそこにいた。


「『翡翠の翼よ、その身を翻せ』」


 停滞しているかのように流れる時間。

 俺は最大限ガルーダを加速させた。

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