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幽霊村と呪術の苗床

 

 村の中心辺りにある三階建ての雑貨店。

 そこに全村人が収容されている。

 イゴウ達の出入りも確認した。


 だが奴らも応戦の準備はしている

 俺達はもう出会っているのだ。


 慎重なネムが備えを怠るわけがない。


「『呪縛払う石像よ、出土せよ』」


 まずはカーストーテムの召喚。

 他者の魔術を封印する魔像。

 呪術にも多少効果があるのは確認済みだ。


 計200体、雑貨店を取り囲む。

 内部の呪術は止められるはずだ。


「行くぞ」


 俺の声と共に、全員が行動を開始する。

 外部からは憲兵達が突入し始めた。

 俺達は雑貨店へ駆ける。


 潜入してから行動しない理由がある。

 遠距離から行動を始める意味が。


「ぅオラァ!!」

「やはり来たね!」


 頭上から飛びかかってくるイゴウ。

 その攻撃をメイサは盾でいなす。


「こっから先は通さねーし……!」

「それはこっちのセリフさ」

「お前らは先に行け」

「——ん!」


 イゴウが用心棒なのはわかっていた。

 彼女は戦闘中、見境なく攻撃する。

 内部で戦えば村人への被害も予想される。

 だからこそ、ここでコイツを切り離す。


 予定通りラナ達に保護を任せる。

 当然、イゴウは彼女達を止めにかかった。

 ——止められるのはお前のほうだ。

 俺とメイサが行く手を阻む。


「随分良いタイミングで来たじゃねーか」


 妨害され、イゴウは吠える。

 当然だ。お前らの全てを調べ上げた。


 潜伏先だけではない。

 ネムとイゴウの行動パターン。

 どの時間に守りが薄くなるか。


 男の言っていた"夜"もヒントになった。

 村は魔力の障壁で外が見えない。

 だが外部に連絡すると、アンデッドの活動時間が外と連動している事がわかった。


 そして今は昼。

 一部のアンデッドはいるが数は少ない。

 攻め込むには丁度良い時間だ。


「メイサ……寝返りやがったなァ?」

「寝返ったわけじゃないさ。ただ」


 攻撃を弾きながら、メイサは叫ぶ。


「守りたいものを守るだけだ!」


 その言葉に怒りを覚えたのだろう。

 イゴウは容赦なく攻撃を畳み掛ける。

 しかし、そこは最強の盾使い。

 全ての攻撃を難なく防いでいく。


 俺も戦闘に参加しよう。

 隠れているモンスター達に指示を出す。


『そう簡単には攻めさせるかよ』

『私たちがお相手しましょう』


 金銀姉妹がイゴウに攻撃を仕掛ける。

 ゴルドラの攻撃は大したものではない。

 代わりにシルバゴは破壊力抜群だ。


 召喚の時間すら今は惜しい。

 なので、先に召喚させてもらった。


「取った! 喰らえ!!」

『そう簡単には行きませんねー』


 攻守交代でパターンが崩れる。

 そこをイゴウが攻め込んでくる。

 しかし、これも予想の範囲内。

 ホブゴブリンたちの出番だ。


「雑魚が! 邪魔すんな!!」

『邪魔しろと命じられましたからねー』

『銀の鬼、今ですなー』


 抱きついていた二人が振り払われる。

 これだけの攻撃で二人は消滅した。

 防御力が皆無だから仕方ない。


 彼らの役割は時間稼ぎ。

 十分な活躍をしてくれた。

 ボーナスも弾まないといけないな。

 お陰でガラ空きになったイゴウの腹に、シルバゴの拳撃がめり込む。


『盾子、挟み撃ちしましょうか!』

『私も手伝う?』

「ああ、頼むよ!!」


 メイサが盾を構えて突進する。

 反対側からシルバゴも突っ込んでいく。

 当然イゴウは回避しようとする。


 だが動かない。

 いや、きっと動けないのだろう。

 ゴルドラの超能力で固定されている。


 勇者パーティ時にも使った戦法だ。

 まさか、自らが食らうとは思うまい。


「これでトドメだ!」

『ぶっ潰れなさい!!』


 鋼鉄の大盾と鋼鉄の拳。

 二つの衝撃に挟まれる。


 彼女は格闘家だ。

 だがあまり防御面は高くない。

 全てメイサに任せていたからな。

 それは今でも変わらないらしい。


 攻撃に挟まれ派手に吹き飛ぶ。

 この一撃、恐らく彼女は初体験だろう。

 地面へと落ちた彼女に歩み寄る。


「観念するんだね」

「ネムの居場所を吐け」


 倒れ込んだイゴウに声をかける。

 ネムは外出後、どこかへ消えている。

 恐らくは呪術の本体がある場所へ。

 その場所を聞き出そうとした。


「誰が……吐くかァ!」

「危ない!!」


 不意に地面から泥のようなものが現れた。

 それを弾き、俺にぶつけようとする。

 寸前でメイサが前に出る。


 盾を構えるメイサ。

 しかし、泥は盾を貫通する。

 彼女の肉体へと付着する。


「ぐ、ああぁぁぁ!!!」


 その瞬間、彼女は苦痛の悲鳴をあげた。

 俺はわずかに理解が遅れた。


「メイサ!」

「ハハハハ! 作戦通りだし!」


 ただ泥のようなものが跳ねただけ。

 なのにメイサは苦しんでいる。


 倒れ込んだ彼女を抱きかかえる。

 真っ黒な泥が彼女の体内へ染み込む。

 これが呪術の正体か?


 苦しむメイサを笑い、イゴウは語り出す。


「一つ教えてやるよ。お前を追い出そうって言い出したのは勇者様でもネムでも無ぇ!」


 腕を振り上げ、メイサを指差す。


「メイサ、そいつだ!」

「なっ——!」

「その性悪女が、お前の不幸の元凶だ!!」

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書籍版が2019年3月9日に発売します!
さらに濃厚になったバトルシーン! 可愛いモンスターたちの大活躍をお楽しみください!!

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