メインイベント! ミスコン開幕!!(収穫祭です)
「さあ今年もやって参りました! 収穫祭の大人気イベント! バックス領1番の美人は誰だ!? ミス・バックスコンテスト!!!」
……全部説明されてしまった。
収穫祭の夜、今回のメインイベントだ。
特設会場は開始前にも関わらず大賑わい。
屋台の人々まで駆けつける始末だ。
流石にそこは仕事をしなくていいのか?
人も増えてかき入れ時だろうに。
まずは前年優勝者のスピーチか。
確かに瞳を奪そうになる程の美人だ。
だが容姿ならリッカ達も負けていない。
「では出場者の紹介です!」
ついに始まったか。
出場者を拍手で迎える。
流石、出るだけあって容姿端麗揃いだな。
歩きにも清楚から元気まで個性が出る。
予想以上に奥が深い。
「エントリーナンバー5! 辺境村の元気っ子、召喚術師の一番弟子! ラナちゃん!」
「えっと、頑張ります!」
最初に現れた知り合いはラナだった。
コイツは家族みたいなものだが。
あまり緊張もしていない。
声が出なかった頃と比べマシになった。
珍しく着飾った服装も似合っている。
……良かった、シーシャに任せて。
「エントリーナンバー6! バックス領の領主令嬢! スーパーカリスマお嬢様!シーシャ様!」
「二人連続子供でごめんなさいね」
次はそのシーシャだ。
知名度もあって、歓声が大きい。
そして相変わらずのオーラだ。
同じ子供系でも、ラナとは全く違う。
ラナのライバルはコイツで決まりだな。
「エントリーナンバー9! 表の顔はゴーレムマスター! クール系研究者! マキナちゃん!」
「よ、よろしくお願いします」
……やはりマキナは様子がおかしい。
照れなのか? 緊張なのか?
いつもの余裕がどこにもない。
だが、容姿には何の弱点もない。
10人いれば全員が美人と言うだろう。
研究者という肩書きもギャップだ。
確実に一定数の票は獲得できる。
「エントリーナンバー11&12! 姉妹で参戦! 魅力も元気も二人ぶん! ゴルドラ&シルバゴ姉妹!」
「おーっす! どうも!」
「ゴルド姉、もう少しお淑やかに」
コイツらは何か勘違いしてないか?
ここはミスコンだ。演芸会場じゃない。
既に軽い漫才が始まっている。
というか、シルバゴが引きずられている。
まあこういう色物系も必要だろう。
容姿は相応に整っているし。
何より服装が攻めている。
恐らくこの露出度、ゴルドラの趣味だな。
頑張れシルバゴ。
「エントリーナンバー17! 超美人若奥様! 旦那さんがクッッソ羨ましい! ナタリアちゃん!」
「夫の為にも頑張りまーす」
どうやら大会唯一の既婚者らしい。
それでも観客の声援は熱い。
やはり人妻は一定の人気があるのか……。
「そして最後の出場者です!」
さて、アイツの出番だ。
これまで苦悩と練習を積んで来た。
恐らく彼女の中で一番努力しただろう。
おかげでご家族からの了承も得た。
娘を頼むと伝言も貰った。
まあ、頼むといっても一人きりの勝負だ。
俺には応援する事しかできない。
そして彼女が舞台に上がる。
瞬間、会場は今まで以上の熱気に包まれた。
「エントリーナンバー21! こんな美人がいたのか! 謎多き飛び入り参戦者! リッカちゃん!」
「あ、えーっと……よ、よろしく!」
少しどもったか。
それでも会場の盛り上がりは冷めない。
予想通り、出るだけで観客の心を掴んだ。
これだけのポテンシャルを秘めている。
今回初めて、それが僅かに開花した。
後はどこまで食い下がれるかだ。
俺まで緊張してきた。
「以上、21人の出場者!」
うち7人が知り合いで、5人がモンスター。
実質三分の一が顔見知り以上か。
何かやましい気分だ。
バックス領在住だし、許されるよな?
シーシャも口出ししてないし。
そのシーシャが友人なのだけど。
……気にしない事にしよう。
「今夜、新たな女王が決定します!」
* * * * * * * * * *
「マキナが逃げたのだけれど」
「大丈夫だ、捕まえた」
「うぅ……」
通信用ゴーレムからシーシャの声が聞こえる。
今は出場者発表後のクールタイムだ。
全く、酒を片手に牛串食べていたのに。
まさか逃走を図るとは。
そして当然ながら気まずそうな表情。
一体何故こんなに緊張している?
「人前は苦手なのか?」
「そんなわけないじゃないですか」
確かにそうだ。
万博ではアレ以上の人の前で発表してたし。
つまり、その手の緊張ではない。
いまいち不明瞭だな。
マキナを抱え、会場に送還しながら話す。
「審査基準、知ってますか?」
「容姿とかパフォーマンスとか」
「何か忘れてません?」
「何か……あー歌か」
肝心な事を忘れていた。
ラナの特技である歌、これが彼女の武器だ。
確かにパフォーマンスと別枠だった。
強調するという事は、歌に何かあるのか?
「これ、受け取ってください」
「……これは?」
「耳栓です。ボクが歌う時に付けてください」
歌に何かあるんだな。





