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召喚術師的、スローライフ生活

 

 村の厚意で家を借りた。

 小さな家だが、二人住みには丁度いい。

 さてその家だが、かなり荒れた畑がある。

 面積もそこそこ広大だ。


 もともと土地が豊かという事もあり、野草が好き放題に伸びている。

 村長曰く、自由に使っていいとの事。


 ならお言葉に甘えて。


「『出でよ、強く賢き地霊よ』」


 畑仕事に適したモンスターを召喚する。


 器用で力持ち、使役しやすいモンスター。

 ホブゴブリンだ。


 だが、勇者様曰く「ただのザコ」。

 本当にわかっていない。

 大隊で意味をなすゴブリンと違い、ホブゴブリンは1匹でも十分な戦力になる。


 何回助けられたと思っているんだ。

 パーティ全体の経験値、半分くらいホブゴブリンの手柄だぞ。


『呼ばれましたかねー』

『呼ばれましたなー』


 とりあえず2匹召喚する。

 体格は人の子供とあまり変わらない。

 だが筋力は大人を軽々持ち上げるほどだ。

 エルフのような尖った耳も特徴である。


「よう、仕事だ」

『あらアリク様、何用ですかねー』

「畑仕事を頼みたい」

『土いじりですかー、得意分野ですなー』


 よし乗り気だ。さすがは大地の精霊。


 二匹の背を押し、裏にある畑へ誘導する。

 既にラナは肉体労働の真っ最中だ。


「ここだ」

『……これを畑とは言わないですねー』

『これは荒地って名前なのですなー』


 言いたいことはよくわかる。


「ラナ、仲間を連れてきた」

「助かります! やっぱ人間の姿で作業するのは窮屈です」


 愚痴をこぼしている割には、今まさに地面へ刺さった巨大な岩を引っこ抜こうとしている最中だ。さっきは丸太を片手でかち割っていた。


 それ、普通の人間にはできないよ?

 人に化けている事を忘れてないだろうか。


「ふんぬっ! 抜けました!」

『もう全部あの方一人でいいんじゃないですかねー』


 ここも要教育だな。

 女の子は素手で岩を引っこ抜かない。

 まあ力仕事では助かるが。


「でもこれじゃ明後日まで掛かりますよ?」

「こいつら足してもか?」

「はい……一日で終わらせるならあと二匹、中型のモンスターが必要になると思います」


 困ったな。今日中に耕したかったのだが。

 日没は先だが、ラナの勘は信用できる。


「もう二匹か」


 ならアイツ等だ。

 室内に戻るのももう面倒だ。

 なので、この場で召喚陣を展開する。


 やはり力仕事と言ったら(オーガ)だろう。


「『超力と剛力、一対の門番よ。我が下に膝をつけ』」


 何ならオーバースペックが丁度いい。


「久しぶりだな金銀姉妹」

『ゴルドラにシルバゴです』

『あんま間違えないで』


 詠唱通り、彼女たちは姉妹の鬼だ。


 両者共に高身長で発育も良い。

 長い銀髪のほうがシルバゴで、短い金髪がゴルドラだ。他にも細かな特徴はあるが、これで見分けられる。


「確かゴルドラ、庭いじり好きって言ってなかったか?」

『私? まあガーデニング程度だけど』


 ガーデニング……まあ畑も庭だ。

 間違ってはいないだろう。


 シルバゴのほうは気づいたようだ。

 呆れ気味にため息を吐いている。


 妹に数秒遅れ、ゴルドラも反応した。


『待って……ここなの?』

「まあ、そうなるな」

『ここは庭というより、土地よ?』

『諦めましょうゴルド姉。召喚された時点で負けなのですよ』


 召喚された事への悲哀と後悔が伝わる。

 ひょっとして、タイミングが悪かったか?


 もし無理にでも来てくれたのなら、仕事が終わった後で何か礼をしよう。


「さて、これだけいれば十分か?」

「はい! 日没前には終わりそうです!」


 ラナが目を輝かせて深くうなずく。

 よし、これで役者は揃った。


 あとは作業分担だ。

 手を叩いてモンスター達を注目させる。


「ゴルドラとホブゴブリン達は除草と細かい整地を、シルバゴとラナはパワー系の仕事を頼む。俺は両方を手伝おう」


 役割を言うと、それぞれ挨拶を始めた。


 これだ、これだよ召喚術師の仕事って。

 正に適材適所。召喚したモンスター達と連携し、やりたい事を成し遂げる。


 ああ、最高に召喚術師してるって感じ。

 こんな幸せ、初めてかもしれない。


「とっとと終わらせるぞー!」

「おー!」


 ……流石にラナ以外は音頭に乗ってきてくれないか。少し悲しい。


 もっと好感度上げよう。

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