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だらけサキュバスの貴重でもないツンデレシーン

 

 先日、アンデッド化したダヌアと戦った。

 状況も含め、かなりしぶとい敵だった。

 だが最後にはあっさり勝利した。

 全てはカナスタとリッカのおかげである。


 さて、そのリッカなのだが。

 最近面倒なことになっている。

 原因は膨大な魔力の摂取である。


『アリク! 今起きてる!?』

「……今お前に起こされた」

『ママがカンカンなの! 匿って!』

「俺の話聞いてた?」


 俺は召喚術を使っていない。

 しかし空中にはサキュバス用の陣がある。

 この召喚術を使ったのは他でもない。


 リッカ(・・・)、彼女本人だ。


「んぅ……」

「……ぅ?」


 まずい。

 隣のベッドにはラナとアビスが寝ている。

 普段は起こしても起きないラナだが、夜中に騒がしいとすぐ目を覚ます。


 動物的な本能なのだろうか。

 普段からその寝起きであって欲しい。


「隠れろリッカ」

『へ? 何dむぐっ!!?』


 返事を待たず布団の中へ引き摺り込む。


「あれ、今誰かの声が」

「気のせいだろ」

「そうですかね?」


 そう、気のせいだラナ。

 俺の布団は不自然に膨らんでいない。

 動いたりなんてしていない。


 きっと寝ぼけているのだ。

 だから早く寝てくれると助かる。


「————ふ、ぁ……」

「あっ、ごめんなさいアビスさん」

「——もっかい、ねる」

「はい。アリク様も夜更かしは程々に」

「ああ、おやすみ」


 何故かちょっとだけ叱られた。

 それもこれも布団の中のリッカが原因だ。


 二人の寝息を確認し布団をめくる。

 なに、いやらしい事なんか起きない。

 そもそもリッカは自分がサキュバスであるという事を嫌っており、その本能に逆らっている。


 俺は彼女の意思を尊重している。

 ご家族は種族通り育って欲しいようだが。


「次からは騒ぐなよ」

『……ごめん』

「騒がれるのは嫌だから匿ってやる」

『ありがと』


 全く、厄介な能力を得たものだ。

 彼女は自分の召喚陣を展開できる。

 自身を召喚できるのだ。

 場所は限られず、どこへでも。


 つまり、今の彼女は瞬間移動できる。

 しかし宝の持ち腐れ。


 だらけきった彼女に能力を使いこなせるわけもなく、こうやって俺のところにしかこない。

 普通なら旅行とか考えるのにな。


『というかさ、何で布団に引き入れたの?』

「ここ以外のどこに隠れる」

『バレたら普通にいるよりヤバくない?』


 ……あ。

 完全に失念していた。


「ま、まぁ結果オーライだ」

『あっそ……少し覚悟したのに』

「言い訳の覚悟は俺もしたぞ」

『そういう事じゃないし……バーカ』


 何を言ってるんだコイツは。

 いまいち意味が理解できない。

 まあ複雑な心境と年頃の少女なわけだ。

 俺は受け止める事しかできない。


 ……あとでご両親には連絡しよう。



 * * * * * * * * * *



『何でこんな事しなきゃいけないのー!』

「夜中匿った代わりだ、少しは働け」


 そのまま早朝、畑仕事を手伝わせる。

 もうすぐ収穫という事もあり少し忙しい。


 だが決して重労働ではない。

 リッカのようなモヤシ体力でもできる。

 なのに愚痴しか吐かないのは何故だ。



「おはようございますアリさん」

「お、来たか」

「手伝いに……そちらの女の子は?」


 早朝の農作業は俺とマキナがやっている。

 モンスターも基本はこの時間寝ている。

 だから普段は二人体制だ。


「サキュバスのリッカだ」

『……どうも』

「あーアンデッドと戦った時の」

『うん』


 さっきまでの威勢はどこへやら。

 彼女は信頼していないとこうなる。

 昔の俺もこんな対応だった。


 だが、マキナは一応信頼できる人間だ。

 たまに何か企んでいるが。

 それを説明しても距離は縮まない。

 人見知りなのだ。


 本人も変えたいとは思っている。

 だから俺と使役関係を結んでいる。


 家族の頼みだからと言って、本人に意思がなければそもそも契約などしない。


「あっ、アリさん。これ」

「トマトか……かなり熟してるな」

「早めに収穫したほうがいいですよ」

「トマトはマキナの担当だし、任せた」

「はーい」


 手際よくトマトを収穫するマキナ。

 彼女は異様に土いじりがうまい。

 ゴーレムマスターだからか?

 いや、関係ないか。


「……食べてみます?」

『私が?』

「そうです」


 収穫したトマトをリッカに差し出す。

 採れたての瑞々しい逸品だ。

 俺がいうのも何だが。


 おずおずと、リッカはトマトを口にする。

 さて、どんな反応をするか。


『美味しい、かも』

「でしょう? 何せボクが調合した土です」


 緊張しているリッカがあそこまで言えるという事は、かなり良い出来栄えのはずだ。


 ……よし。

 俺は小さくガッツポーズをした。

 これなら、他の野菜も期待できる。


『あ、あのさ! アリク!』

「ん? 何だ?」


 突然、リッカが話を切り出した。

 頬にトマトの皮が付いたままである。


『無茶を通してのお願いなんだけど』

「別に構わんが」

『そ、そう……なら』


 小さく深呼吸をし、リッカは叫んだ。


『私も常時召喚(・・・・)になりたいんだけど!』

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