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辺境村防衛命令! 召喚術師対アンデッド!

4章を大幅に改稿いたしました。活動報告に詳細を乗せておりますのでよろしければご一読ください。

 

 村の惨状に驚愕した。


 破壊されたいくつもの畑。

 僅かながら飛び散った血痕。

 村人は一人もいない。


 避難したのか? それとも……。

 ダメだ、嫌な想像をしてしまう。


「あ、あそこ!」


 ラナの指差すほうを見る。

 かなり遠いが、それが壁に寄りかかるように倒れ込んだ人影だというのは理解できた。


 間違いない、マキナだ。

 全身にひどい傷を負っている。


「村人は避難できました」

「お前はどうなんだ」

「骨を数本。鎮痛魔術は使ってますが」


 かなり無茶をしたのだろう。

 表情が疲弊しきっている。

 応急ではあるが、回復魔術は使える。


 彼女の傷を癒しつつ、辺りを注視する。

 村に近づいてから、禍々しい魔力の塊がある事は気がついていた。

 その所持者が……いた。


 その姿に俺は息を飲む。

 馬鹿な、そんなはずがない。

 彼女はもういない。

 しかし、目の前にいるのは彼女だ。


「何故ここにいる?」

「…………ァ」

「答えろ、ダヌア(・・・)

「……ァ、ァ」


 全身が黒ずみ、目も口も見開いていた。

 それでも彼女がダヌアだとわかる。

 辛うじてではあるが。


「あれはアンデッドの類です」

「アンデッド——まさか」

「はい、恐らくは呪術かと」


 繋がった。

 首謀者が勇者パーティなのは確かだ。

 呪術で死者を蘇らせたのだ。


 近代魔術の蘇生には限界がある。

 死後半日以内でなければ蘇生不可能。

 それでなくても、遺体がなければ死者を蘇らせる事はできない。


 彼女の遺体は龍皇の腹の中。

 だから呪術を使ったのか。


「ラナ、アビス、サポートは頼んだ」

「はい!」

「————ん!」

「マキナは避難しろ」


 応急手当を終え三人で立ち塞がる。

 しかしマキナは俺の言葉を無視した。


 未だ息の上がった身体で、俺たちと並ぶ。


「嫌ですよやられっぱなしなんて」

「だがマキナ、お前は」

「アリさん」


 鋭い瞳で見つめられる。

 吸い込まれそうになる眼力だ。


「わかった。無茶するなよ」

「フフフ……わかってますよ」



 * * * * * * * * * *



 アンデッドモンスターは呪術で生まれた。

 ドラゴンゾンビも、俺が使役している者も。

 そして、ダヌアも。


「ラナ」

「はいっ!」


 ラナの火炎放射で攻撃する。

 人の火吹きに似せるまで時間がかかった。

 威力は下がるが人間態でも攻撃できる。


 だが、威力低下のせいで通用しない。

 アンデッドの再生力が邪魔をする。


「回復に攻撃が追いつきません!」

「再生をなんとかできれば良いのですが」

「——攻撃、来る」


 撹乱し攻撃をそらす。

 いざ命中しそうになればゴーレムで防ぐ。

 何とかこれで耐えていた。


 暴走したアンデッドを止める方法。

 それは魔力切れしかない。

 しかし今、彼女の魔力は膨大だ。

 下手をすれば万博の時より量がある。


「アアアァァァァア!!」


 この攻撃力、グリフォン戦術は無理だ。

 ただし今は地上戦、あの時は空中だったからこそグリフォンを使ったまでの事。


 地上ならもっと専門的なヤツらがいる。

 応じてくれるかわからないが。


 二つの召喚陣を展開する。


「『新緑の精霊よ、食事の時間だ』」


 かたや新人、かたや問題児。

 両方ともまだ信頼は薄い。

 こんな事は久しぶりだ。


『あら? 初仕事かしら』


 片方の召喚陣が応じた。

 やっぱ問題児は来ないか、適材なのに。

 だがこちらが来てくれただけ嬉しい。

 彼女のいうとおり、初仕事だ。


 アルラウネのカナスタ。

 先代アルラウネの後続の子である。

 どうやらアルラウネ社会では高貴な家系の出身らしいが、吉と出るか。


「アレの魔力、全部吸えるか?」

『……わかりましたわ!』


 予想以上にノリノリで驚く。


 彼女たちの特徴、それは魔力の吸収だ。

 強力な個体であれば、近くにいるだけで魔力を吸い取ってしまうらしい。

 そして彼女は、その個体のようだ。


「皆、カナスタを援護しろ」


 ダヌアがカナスタを執拗に攻撃し始める。

 どうやら異変に気付いたようだ。


「『可愛らしきスライムよ、顕現せよ』」


 ならば支援追加だ。


『おっと、大丈夫ですかい? お嬢さん』

『え、ええ! 大丈夫ですわ!』

『そうですかい。そりゃよかった』


 ダヌアの攻撃をスライムが弾き返す。

 普通のスライムなら今の攻撃で消滅だ。


 スライムが、変わり果てたダヌアを見る。

 そうか。彼はダヌアを知っている。

 何せ彼女との初戦でトドメを刺した張本人であり、彼女を多少気遣っていた。


「色々あったんだ」

『——わかりやした』


 これで納得させるのは心苦しい。

 何よりも、仁義に熱いスライムだ。


 戦いを終えたら全て話そう。


「もう少し、あと少しなのに!」

「ボクの攻撃よりまだ回復が早い!」

『わかってますわ! 耐えて下さいまし!』

「————ん!」


 総動員で迎撃を掛ける。

 少しずつだが、回復速度が遅延している。

 それと比例してダヌアの攻撃も激しくなる。


 このままでは援護が間に合わない。

 追加の援護を用意する。


 ——が、その必要は突如無くなった。


『な、何が起きましたの!?』


 音を立てて魔力が吸い上げられる。

 ダヌアの攻撃がピタリと止む。

 一瞬の出来事だった。


 カナスタを召喚した際に同時展開していた陣から、気だるげな一人の少女が姿を現していた。


 アルラウネ以上の捕食力。

 一人の人間を容易く枯渇させる程。

 しかし、彼女は自らの能力が嫌いらしい。


「応じてくれると思ったぞ、リッカ」

『……お腹一杯になったし帰る』


 魔力が枯渇したアンデッドは凍結する。

 そこもダヌアは同じらしい。


 しかし、脅威は終わってない。

 彼女をこうした人間がいる。

 パーティメンバーで呪術を使える奴はわからない。


 だが、悪趣味な奴は知っている。

 仲間をアンデッドにするような女。

 勇者パーティの実質参謀。


「出てこい、僧侶ネム」

「……ふぇぇ」


 問いかけに、物陰から微かな声が返事した。

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