物探しだって召喚術なら余裕っしょ!
4章を大幅に改稿いたしました。活動報告に詳細を乗せておりますので、よろしければご一読ください。
無人島とはまた違う磯風。
人々が放つ、生ぬるい熱気。
バックス領で二番目に活気ある街。
まあ、港に来たわけだ。
人口密度で言えば、下手すると中心街より賑やかな気がする。何せここはバックス領の海の玄関だ。
「そっちはどうだサレイ?」
「サレイのアホなら立て込んでるけど」
「え、何でリーヴァ?」
マキナから借りた携帯通信用ゴーレム。
万博から世話になりっぱなしだ。
欠点を挙げるならただ一つ。
側からは人形に話しかける変人に見える。
これだけは何とかならないかな……。
「リーヴァ、サレイ何やってる?」
「端的に言えばチンピラに絡まれてる」
「えー何故ぇ?」
さっき別行動を始めたばかりだぞ。
何でもう絡まれてんだ?
「お前召喚術は?」
「残念ながら使えない」
「わかった、なら早めに解決させてくれ」
「ウチのサレイがホントごめん」
「何、慣れてる」
流石にこんなに早いとは思わなかったが。
まあ彼のトラブル体質は知っている。
ついでに妙なカリスマも。
あとそれを解決しちゃうヒーロー感も。
「今日はやけにカラスが多いな」
「ちょっと不気味ねぇ……」
比べて俺はどうだ?
人々を怖がらせ、カラスを飛ばしている。
それも数十羽という数だ。
完全にヒーローとかがやる事じゃない。
悪魔かな?
「ラナ、何か臭わないか?」
「お魚の美味しそうな匂いしか」
「わかった聞いてすまない」
昼食抜きがだいぶ響いてるな。
終わったらさっさと飯を食おう。
「冗談はさておき、怪しいのはやっぱりここじゃないですか?」
「まあここだな」
そう言って、俺たち二人は立ち止まる。
目の前にあるのは煉瓦造りの宿だ。
ぱっと見だと港特有の倉庫に見える。
だが、入り口には堂々と「バックス港第三宿泊所」という看板が掲げられている。
ここから高濃度の魔力を感じる。
同じように少し離れた宿にも反応がある。
十中八九似通った形状の魔力。
万博や山で感じたものとも似ていた。
カラスを使い、窓から中の様子を眺める。
「覚えのある顔はないな」
「なら石だけ探して回収しちゃいます?」
「いやそれ盗難……ん?」
「どうしました?」
建物の4階、とある客室。
カーテンで遮断された、小さな個室。
だがその中はうっすらと見えた。
魔力が急激に膨れ上がっている。
発信源は何か装置のようなものだ。
まるで、単純明快に魔力を暴走させようという気すら感じるような作りの装置だ。
「『魂食らう絶壁よ、遮断せよ』」
それが何をしたいのか予測できた。
なので即座に召喚陣を展開する。
名前を『デビルウォール』。
金銀姉妹が守っている"とある場所"。
それを囲む生きた防壁だ。
ゴーレムの壁ほど巨大な範囲は守れない。
だが硬さならこちらの方が上だ。
「な、何今の!?」
「港の宿が爆発したぞ!」
「逃げろ! あと憲兵を呼べ!」
港の人がパニックに陥る。
丁度良い、そのままここから逃げてくれ。
「大丈夫か先輩!」
「あぁ、ケガは無い」
騒ぎを聞いたか、サレイが走って来た。
遅いぞこの野郎。
同時に、ラナが鼻をひくつかせる。
何かに気がついたようだ。
「この臭い……まさか!」
「わかったのかラナ」
「早く宝石を回収しないと!」
「お、おい」
制止を無視し、建物内へと飛び込むラナ。
全く無茶をするなコイツも。
お前が大丈夫でも少し心配になるだろ。
5階と3階のフロアも吹き飛んでいる。
被害はかなり甚大だな……。
「今のは余波! まだ本体が残ってます!」
「てことは今よりデカい爆発が起きるの?」
「下手をすれば港を吹き飛ばせる威力は出るな……かなりマズイぞこれは」
そこには、宝石を利用した爆弾があった。
かなり精密な作りに見える。
コレの破壊力は容易に想像できる。
ダヌアをあれほど強化したのだ。
無使役とはいえ、暗黒龍すら召喚した。
その魔力を単純な破壊能力に利用するということが、どれ程の脅威か。
「2つ隣の宿にも石がある。任せた」
「先輩は!?」
「これをどうにかする」
「わかった、ここは頼む!」
正直爆弾処理なんて未経験だ。
だが、次にいつ爆発するかわからない。
「『超力と剛力、一対の門番よ。我が下に膝をつけ』」
なら俺たちで処理するしかない。
「ゴルドラ手先器用だよな?」
『まーたいつもの導入か。今日は何やらされるの』
「爆弾処理」
『あー爆弾ね……爆弾!?』
確かに俺は召喚術専門だ。
だが、詳しい仲間ならいくらでもいる。
意表を突かれて少々驚いているが。
もう状況は飲み込んだようだ。
さすがは鬼の姉妹、胆力が違う。
『この作りなら……』
『大丈夫なのゴルド姉?』
シルバゴの言葉に、ゴルドラは頷いた。
俺は被害を抑えるためデビルズウォールをさらに召喚。加えてカース・トーテムで魔術を封印する。
爆弾の魔力流動をゴルドラは爪で切る。
慎重かつ大胆な手さばきだ。
『……できた! あとはこれ破壊して!』
意外にも短時間で処理は終わった。
だが、少し慌てた様子だ。
……あれ、装置に魔力の塊が残ってる。
石はもう取り除かれているが、装置自体に魔力が残存しているようだ。
「ラナ、よろしく」
「はい!」
テキトーな命令だが理解したようだ。
大きく息を吸い、ラナは思いきり炎を爆弾へと吹きかけて消し炭にした。
これでこっちは完了と。





