暗黒龍と謎の少女〜お嬢様を添えて〜
4章を大幅に改稿いたしました。活動報告に詳細を乗せておりますので、よろしければご一読ください。
ラナと謎の少女が見つめ合っている。
というか睨み合っている。
いきなり一触即発の気配だ。
「「ど、どうした……?」」
サレイと俺の反応が重なる。
何この嫌なシンクロ。
「サレイ、アタシの名前言ってみ?」
「え? リーヴァ?」
「この子、ラナって言うんだって」
「うん、それで?」
サレイが素っ気なく質問する。
だが俺も同じだ。
この二人は何をそんなに争っている?
怒る理由もさっぱりわからない。
「なんかキャラが被ってんの!」
「そんなの知るか!」
「キャラだけじゃないんですアリク様!」
「全体的にかぶってんのよサレイ!!」
全体的に被ってる?
確かに同じパートナーポジっぽいし。
話によれば長年の付き合いだし。
俺もだが何か隠してるみたいだし。
あれ、確かにめっちゃ被ってる。
あれか、ドッペルゲンガーってやつか。
って事はリーヴァって子も暗黒龍なの?
「……屋敷で騒がないでもらえるかしら」
「すまんシーシャ、すぐ止める」
「別に騒がしいのは嫌いじゃないけど」
そうだ、俺たちは屋敷に来てたんだ。
状況が状況。かなり面倒な事になっているので意見を仰ぎに来た。
なのに喧嘩が始まったのだ。
「話は聞いたわ、ご苦労ねサイ」
「いや、サレイです」
「え? サイじゃないの?」
「それコイツにマキナがつけたあだ名」
聞いた瞬間、シーシャはマキナを睨んだ。
あーあ知らないぞ。
「……悪気は無かったんです」
「よろしい、マキナは晩御飯抜きよ」
許され……てないなこれ。
罰が晩御飯抜きで終わりってことは、少し良心的なのか? 基準がわからない。
「さてサレイ? あなたの話は本当かしら?」
「ウチの領主様からの情報です」
「発信元は確かと言うことね」
「はい」
さて、本題の続きだ。
既に俺の状況はサレイが話をしてある。
聞いた瞬間のシーシャは疑っていた。
だが今は少し悩んでいるような様相である。
俺も信じたくないし悩みたい。
「アリク様、つまりどういう事です?」
「俺ピンチって事」
「ヤバイじゃないですか!」
そうだよ、ヤバイんだよ俺。
「せっかく名声を上げたのに……アリク、あなたも大概不幸よね」
「はは……はぁ」
「でも良かったわ、宝石が入手できて」
愛想笑いで返事する。
もう不幸も大概にしてくれよ。
というか不幸の事柄に勇者パーティ関与しすぎだろ、もう完全に俺の疫病神じゃないか。
シーシャに手渡した宝石を彼女は眺める。
やはりダヌアの持っていた白濁の宝石とほぼ同様の品らしい。
「ちょっと待ってなさい」
シーシャは空中に手をかざす。
……魔術か。
そういえばシーシャも魔術を使える。
召喚術はまだ素人レベルだが。
彼女の魔術により平面の何かが現れる。
大小の地形と小さな赤い光。
この地形、見覚えがある。
「バックス領内の地図か、これ」
「えぇ。それでこの赤い光が魔力の強度」
バックス領か。どおりで見たことがある。
という事はこれで石を探すのか。
中心街のお屋敷あたりも、赤い光が強く輝いている。
「港付近が妙に高濃度だな」
無人島への船を出してもらった港。
確かに潜伏するにはうってつけの場所だ。
人は多いし、建物も高い。
だが港で災害が起きるとしたら? 山と同じような事案でも、被害の拡大は予想できる。
もしそうなる前に防がなければ。
「まずは策を立てましょう」
「策? そんなのバーってやってヴァってやればいいだけでしょ」
「リーヴァさんには淑やかさが足りません!」
「アンタに言われたくないし!」
まーた喧嘩が始まった。
マキナが提案しただけなのに。
俺とサレイは互いのパートナーを抑えた。
一応従者はラナのはずなのに、何で俺たちが振り回されてるんだ。
「ではアリさんとサイさんは偵察を」
「マキナは?」
「ボクは今回お留守番です」
マキナが留守番、意外だな。
アウトドア派な奴だと思ったが。
「召喚術は適材適所、そうでしょう?」
「まあそうだが」
「ボクには入手した宝石を研究するというお仕事があります。土や石はボクの本領ですしね」
なるほど、そういう事か。
それなら彼女ほどの適任者はいないな。
これで役割は決まった。
召喚術師チームが港の偵察。
マキナとシーシャが宝石の情報収集。
そうと決まれば出発だ。
「なら任せた」
「はい、お任せください」
軽く互いを応援し、召喚陣を展開する。
乗るのは俺たちとサレイ達の四人。
なら、コイツだな。
「『幻想の大翼よ、天上を駆けよ』」





