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容疑者、召喚術師

4章を大幅に改稿いたしました。活動報告に詳細を乗せておりますので、よろしければご一読ください。

 

 サレイとの思い出。

 それを語るなら外せない話がある。

 俺が召喚術師最強と呼ばれる前のこと。

 偶然修行の場が被った時があった。


 まだ武装召喚も体得していない。

 ついでに召喚術も使えない。

 初見では「何で召喚術師を目指したんだコイツ」と少々呆れていた。


 なので、その理由を直接聞いた。


「先輩の召喚術がカッコ良かったんで」

「お前それ言ってて恥ずかしくないの?」


 その回答がこれである。

 彼が召喚術師を目指した理由。

 それは俺だった。


 いつ俺の召喚術を見たのかは不明だ。

 問いただしてもコイツすら覚えてない。

 俺自身、コイツは俺と別の召喚術師を見間違えたのではないかと疑っている。



 * * * * * * * * * *



「という事は、アリさんの旧友と」

「旧友も何も、サレイのバカが召喚術師を一方的にリスペクトしてただけ。正直キモくない?」


 お茶を注ぐマキナ。

 再会が微妙な空気の俺とサレイ。

 暴言を吐く謎の少女。


 アビスとラナには買い出しを頼んだ。

 いつもは金銀姉妹に頼んでいるが、今日は忙しいと断られてしまった。まあ仕方ない。


 それより気になる事が一つ。


「なあ、サレイ」

「どうした先輩?」

「あの()、何なんだ?」

「説明するとややこしくなる」

「オーケー可能な限り簡潔に頼む」


 あの娘とは、暴言少女の事だ。

 実はあの戦闘時にも彼女はいた。

 いや、いたというより……サレイに背負われて寝ていた。とんでもない睡眠力? である。


 彼曰く、修業中に出会ったらしい。

 何でもかなり訳ありで、出会った頃からほぼ常に一緒にいる仲だとか。


 俺とラナみたいなもんか。

 勇者パーティにいた頃は離れてたけど。


「サレイ、余計なこと言ったら殺すから」

「ほら、物騒だろ?」

「めっちゃ物騒じゃん」


 何この物騒な子。

 それにまだ本質は全然話してないし。

 本当に訳ありで済ませていいのか?


「で、サレイさんは何故この村に?」

「そうそう、それで先輩に話が」

「俺に?」


 通りすがりというわけじゃないのか。

 しかし俺に用があったとは。


「先輩なら知ってると思う、あの石の事だ」

「これか?」


 山の召喚陣から手に入れた石を出す。

 ダヌアが持っていた物と同じだ。


 つまり、あの島からの盗品。

 勇者パーティの誰かが関わっている。

 だかやはり目的は不明。一体何のために石を砕き、メンバーに配布しているんだ?


「この大陸全土で見つかってる」

「大陸全土って、ずいぶん広範囲な」


 そこそこあるぞ、この大陸。

 端から端まで鉄路で10日近く掛かる。

 勇者パーティに特殊な移動手段は無いはず。


「それなんだ先輩!」

「急にどうした?」


 突然前のめりにサレイが突っ込んできた。

 ……ちょっとびっくりしたじゃん?


「あの勇者パーティ、先輩も入ってたろ?」

「あ、あぁ。今は抜けてるけど」

「万博事件から妙な噂があってな」


 それでも島に入った時期は重ならない。

 その前に追い出されてるからな。


 でも妙な噂って何だ?

 ものすごい嫌な予感がする。


「先輩のマッチポンプだっていう話が出てる」

「はぁ!?」


 ま、マッチポンプ?

 俺が仕組んで俺が解決したって事か?

 どうすればそんな情報出るんだよ。


 確かに世間を騒がせた事件だった。

 主犯のダヌアが勇者パーティ所属だということは明かされていない。まさか、それが理由か?


「クッソ……陰謀論者が!」

「でも先輩も陰謀論好きだよな」

「好きだが今は関係ない!」


 論者と同じ思考のせいでわかるのが悲しい。

 確かに今回の事件、不透明な点が多い。


 そうなると怪しいのは俺という事になる。

 何せ事件を解決した英雄だ。

 誰よりも事件の中で名前が上がる。

 しかも犯行に使われたのが召喚術だもんな。


「今は万博会場の領地に住んでてな、妙な噂が立ち始めたから伝えにきた」

「恩に着る……はぁ」


 参ったな。

 この手の陰謀論を解決するのは至難だ。

 何せ俺でも信じている陰謀がある。

 召喚術の普及率が低い理由とか。


 困り果てて肩を落とす。

 しかし、隣で話を聞いていたマキナは違った。


「何故ため息を吐いてるのです?」

「何故ってそりゃ、また評判が」

「フフフ……これだからアリさんは」

「何だよその言いかた!」


 最近コイツの当たりが変わってきた。

 からかってくるのは変わりないが。

 少し軟化したような印象だ。

 それに比例して強い口調が増えている。


「アリさんは私のゴーレム研究を応援してくれた。万博での下剋上にも、少なからず貴方の応援が営業してます」

「そう言ってくれると助かるが……」

「次はボクの番です」


 そう言って彼女は微笑んだ。


「また下剋上の時間ですよ」

「あ、それシーシャのセリフ」


 下剋上……か。

 今回で聞くのは二度目だ。


 だが、これ以上俺の評判を下げられたら溜まったもんじゃない。

 汚名返上、名誉挽回。

 少し頑張りますか。


「まずは情報交換しましょうか、サイさん」

「さ……(サイ)?」


 ……すまんサレイ。

 マキナはそういう奴なんだ。

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