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召喚術師とそこそこデカいヒトデ型モンスター

 

 無人島生活2日目。

 俺は皆から離れ、島の裏側にやってきた。

 向こうはマキナが見てくれるらしい。


 島の裏側は主に岩場と干潟である。

 この二つには、多くの珍しい生物が集まる。

 モンスターもよく集まるのだ。


「ふーん、ふふーん」


 自然と鼻歌も歌ってしまうものだ。

 どんな出会いがあるのか。

 どんなモンスターが息づいているのか。


 もう情熱が止まらないよね。



「お、あれは……」


 干潟を歩いていると、早速少し遠くの岩場に不思議な影を捉えた。

 足がぬかるんで歩きづらい。

 が、焦らず急いで見に行こう。


 向かっている間にも、面白い発見がある。

 小型動物やモンスターのコロニー。

 そこそこ大きくなるモンスターの幼体。


 あぁ、修行時代を思い出す。

 よくここのモンスターを観察したものだ。


(おぉ……!!)


 思わず感嘆の声を上げそうになる。

 しかし、ギリギリで声を殺して観察した。


 シードラゴンの群れだ。

 人と同じくらいの大きさがある、空中を浮遊するドラゴンのようなモンスター。

 正体は魚系モンスターという変わり種だ。


 戦闘力は無いに等しい。

 しかし、集まるとかなりの迫力がある。

 そもそも群れが珍しい。メモっておこう。


 指差しで個体数をかぞえる。


「9、10、11、12……ん?」


 その時、再び妙なものを見つける。

 いや、妙というよりむしろ……意味不明。


 シードラゴンの群れに混ざって、人型の何かがゆらめいている。正直不気味さまである。

 見間違いではないか、俺は凝視した。


(……デカい、ヒトデ?)



 俺は、見たままの姿に唖然とした。

 人間大のヒトデが、二本足で立っている。

 フラフラしながらも二本足で。


 見たままがそれなのだ。

 モンスターの枠組みかどうかすら不明だ。

 ゆっくりと近づいてみる。

 しかし、全く動じる気配がない。


 ともかく俺では鑑定不可能な存在だ。

 仕方ない、ゴルドラに頼ろう。

 鑑定能力持ちだし。


「『移動召喚・ゴルドラ』」


 既に召喚している対象を再召喚する。

 その時はこっちのほうが低燃費で済む。


『何だよ遊んでたのに……って、え?』

「すまん、鑑定できるか?」


 ゴルドラもどうやら驚いたらしい。


 海で見る初めてのヒトデがこれとは、今後勘違いしないだろうか。



『アリク様、これは一体?』

「俺にもわからないが、攻撃はしてこない。お前なら鑑定できるだろ? 念話もできるし」

『はぁ……仕方ないな』

「バカンス中なのにゴメンな」


 当然ながら適材適所だ。

 念話で話が通じない事もある。

 だが、試してみなければわからない。


 ゴルドラがこめかみに指を当て目を閉じる。

 念話のポーズだ。


 そしてそれが通じたのか、巨大なヒトデは頭部の位置にある触手をこちらに向けた。


『……へぇ、女の子なんだ』

「雌雄があるって事か」

『シードラゴンを見に来たんだって』


 という事は、観光のようなものか。

 かなり知能が高いように思える。


 だがやはり思い当たるモンスターがいない。

 巨大なヒトデで、知能が高い。

 そして雌雄がある。


 普通のヒトデの中には、オスとメスを併せ持った種類も存在するからな。


『この子、新種だよ』

「やっぱりか、見たことないと思った」

『喜ばないの?』

「驚きのほうが強くて麻痺してる」

『正直私も』


 別に反応はしない。というかできない。

 新種じゃなきゃ俺は何の勉強をしていたんだ。


 まさかこんな場所で出会うとは。

 そこそこ知能も高いし。

 逆にこれまで発見されなかったのが不思議だ。


「なぁ君、名前は?」

『————』

『無いってさ、名前という文化が』

「そうか、ありがとう」


 ラナと同じか。

 人との関わりが深いと、名前文化がある。

 鬼がその代表的な例だろう。


 名前がないと呼びづらいが。

 ……一か八か、頼んでみるか。


「俺、召喚術師っていう職能なんだ」

『————』

「わからないかもしれないけど、要するにモンスターから力を借りる的な』

『————?』

「何かあったら、力を貸してほしい」

『————』


 召喚術という存在すら知らないだろう。

 だが、是非とも仲良くなってみたい。


 言葉は通じないが、シードラゴンの群れを見に来たのだ。同じモンスター好き、多分悪いやつじゃない。

 あまり期待はできないが、返事を待った。


『いいってさ』

「マジか」


 ならお言葉に甘えて。

 ヒトデの体に触れ、詠唱の呪文を引き出す。


 有名なモンスターならこれは必要ないのだが、新種というだけあってやるしかない。

 手に光が宿ると共に、情報が流れ込んでくる。

 ……これは。


「これが、コイツの詠唱呪文……?」

『まさか新種まで発見するなんて。ホント召喚術師になるために生まれてきたよね』


 ともかくこれで彼女? の召喚は可能になった。

 ヒトデに向かって頭を下げ、ゴルドラをみんなのところ送り届けるためその場を去った。


 * * * * * * * * * *


 少し気がかりなことがある。


 彼女の詠唱呪文が最上級の詠唱に似ている。

 あのヒトデが、暗黒龍と同じ……?


 ……まさかな。

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