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白き大地を破壊せよ!!

 

「さてマスター、私はどうすればいい?」

「マス……まあいいか」


 何故呼び方がアビスと一緒なんだ。

 全部この呼び方を教えたマキナが悪い。

 まあ、今は窘めないが。



 やっと準備が整った。

 リヴァイアサンと和解し、戦力も揃う。

 ついでにシズマとの合流も果たした。

 これで当初の計画を実行できる。


 突入するなら今が好機だ。

 しかしそこに、リーヴァが割って入る。


「ストップ、アンタの意見はよくわかった」

「何か不都合なことでもあるか?」

「あるでしょうが……隣にいるソイツ」


 言われて俺の隣を見る。

 そこにいるのはブライの妹、シズマだ。


「何でソイツがいるの? 共犯者なんだけど」

「シズマが直々に頼んできてな」


 リーヴァの懸念も納得できる。

 確かにシズマは危険かもしれない。

 虚影とはいえラナを洗脳した相手だ。


 だがあえて俺は彼女を信じる。

 彼女の狂気には理由がある。

 罪悪感も人並みに抱えていた。

 それに彼女とは約束した。

 俺へ力を貸す代わりに、ブライと戦う時は彼女を同行させると。


『大丈夫、この子は信頼できるよ』

「リッカ……アンタマジで言ってる?」


 渡されたリッカの助け舟。

 それはシズマの心を読んだものだった。

 彼女の記憶を覗き、過去を覗いたリッカ。

 普通の人間よりは彼女を知っているはずだ。


 シズマ自身は信頼できない。

 でも、リッカ信じるシズマは信頼できる。

 それはリーヴァも同じようだ。


 数秒前考え、ため息をつく。

 その顔は何故か少し笑っていた。


「そう言うなら、アタシも信じてやる。ただし、妙なことしたらぶっ殺す」

『大丈夫だよ。ね、シズマ?』

「う、うん。大丈夫裏切らない」

『シズマ!? 何でそんな怪しいの!?』


 冗談を交えるリッカとシズマ。

 状況的には不謹慎だが、空気が若干和む。

 同じサキュバスだからだろうか?

 それとも、これもリッカの魅力か。


 心配事は無くなった。

 改めて、俺は真っ白な地面を見る。

 非常に固いが壊れないわけでは無い。

 戦闘中に何箇所か抉れている。


 今回は力任せ。

 超火力による一斉攻撃だけが頼りだ。

 そのためのリヴァイアサンである。


「……そうだ、アリク」

「なんだ……って、うおっ!」

「戦いが終わるまで貸してやる」


 リーヴァが俺の足元に突き刺した剣。

 ……レーヴァテインの全壊剣だ。

 あの記憶を見た後だと、重みが違う。

 しかし俺は、全壊剣を引き抜いた。


 これなら俺も破壊に協力できる。

 リーヴァといえば、アスカロンの巨大な全壊剣と自らの剣を二刀流のように構えている。

 サレイもありったけの武器を召喚中。

 こちらの準備は万端だ。


「リヴァイアサン、頼む」

「了解だ。アビス(・・・)、お前はどうだ?」

「——ん」


 一つの肉体で二つの人格が回答する。

 非常に不思議な光景だ。


 その体から放たれるまばゆい光。

 それと共に、小さな少女のシルエットはみるみる巨大に形を作り変えていく。

 S級海魔・リヴァイアサン。

 変身すると、景気付けの咆哮を上げた。


 ——キィィァアアアアア!!!!——


 破壊対象はこの大地。

 全身全霊で、ぶち壊すのみだ。


「行くぞ、みんな!!」


 掛け声と共に俺は剣を振り下ろす。

 それが合図となった。


 全員が一斉に己の武器を地面に向ける。

 リーヴァは2本の全壊剣。

 サレイは大量の武器。

 リヴァイアサンは触手と怪光線。

 全ての攻撃を、地面の一箇所に集中した。


「チッ! 硬ってぇなこのッ!!」

「並の硬さじゃないな…….!」

「分かってるっての! もっと武器出せ!」

「数でどうにかなるモンじゃない!」


 サレイ達の言う通り、地面は非常に硬い。

 並の岩盤とは比べものにならない。

 地上で暴れまわっても壊れないだけある。

 だがそれでも破壊はできた。


 全壊剣による広範囲の破壊。

 これはブライもやっていた芸当だ。

 それを今、俺が真似してやっている。

 やはりまだこの剣を使いこなせていない。

 それでも並の剣よりは破壊効率もいい。


 サレイも遂に武器から兵器に持ち出した。

 城塞を破壊できる大砲を数台召喚。

 それを全て地面に向け、放つ。


 轟音と共に抉り飛ぶ地面。

 全壊剣にも劣らぬ破壊力だ。

 更にそこに、数体の龍が現れる。


「『荒ぶる飛竜よ、君臨せよ』!」

「ワイバーンか!」

「少しは役に立つでしょ?」


 シズマも地面の破壊に協力する。

 彼女のエース、ワイバーンの一斉攻撃だ。

 火球連打は少しずつ地面を削ってゆく。

 地味ながらしっかりと貢献している。


 モンスター達による火力攻撃。

 俺やサレイ、リーヴァの物理攻撃。

 その場にいる全員が必死だった。


『が、がんばれみんなーっっ!!』

「応援! もっと大きい声で!」

『え!? が、がんばれぇぇえええ!!!』

「ヨシ!!」


 それは非戦闘員のリッカも同じ。

 俺達を少しでも鼓舞しようと、彼女史上最も大きな声で応援を叫んでいる。


 しかし流石にこの破壊行動は目立った。

 敵軍勢ががこちらに向かってくる。

 俺たちを阻止するつもりだ。


『チッ、勘付かれたか!』

『——!!!』

『わかった! モンスターは任せる!!』


 アビスとリヴァイアサンが連携する。

 武装過剰の要塞のような姿。

 その操作を互いに分かち合っていた。

 アビスは敵を蹴散らすため、触手を振るう。


 ——キィィァアアアアア!!!!——


 再びリヴァイアサンが咆哮する。

 地面は少しずつ、着実に壊れて行く。

 周囲に入ったヒビと、抉れる攻撃箇所。

 砕け落ちるのは容易いと思っていた。


 しかしここで異変が起こる。

 壊し進めるうちに、地面が硬くなって行く。

 大砲は弾かれ、火球はかき消される。


 サレイはリーヴァからアスカロンの全壊剣を借り、地面に攻撃を向けていた。

 確かに全壊剣はあらゆるものを破壊できる。

 しかし大質量相手だと、若干劣勢になる。

 壊すものが多すぎるようだ。


 もはや頼れるのはリヴァイアサンのみ。

 それでも決定打には足りない。

 あと一つ、最強級の火力があれば……!


 ——グオオオオオォォォォ!!!——


 俺の願いが、幻聴になる。

 ……いや、これは幻ではない。

 確かに俺はこの耳で聞き届けた。

 暗黒龍の咆哮を。


 攻撃を続けながら空を見上げる。

 そこにあるのは、巨大な漆黒の影。

 少々見た目が変わっているが、間違いない。


「ラナ!?」

『下がってください皆さん!!』

『龍妃の娘か! 遅かったな!』


 リヴァイアサンが嬉しそうにラナを呼ぶ。

 そのラナは、心身共に完全回復。

 疲労も完璧に回復していた。

 この短期間で、一体何が起きたのだ?


 見た目も何故か、暗黒龍であるはずなのに顎から腹部が真っ白に変色している。

 魔力も非常に高質だ。

 まるでそう、龍妃のように。


 そんなラナが、口に火球を収束させる。

 火球は既に、最大威力を叩き出せる。


『合わせろ!』

『はいっ!!』


 リヴァイアサンの光線が最大出力に変わる。

 同時にラナも、その火球を放った。

 最強は混じり合い、地面に大きなヒビが入る。

 バキバキという鈍い音が響き渡る。


 そして——地面は割れ、俺はそこへ落ちた。


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