表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/184

サキュバスの秘策!

 

 光の柱は1本では無かった。

 残り3本、距離は非常に離れている。

 まるで俺達の拠点である要塞を、四角形に包囲しているような配置だ。


 モンスターの数が減らないのも頷ける。

 無限に沸き続けるモンスターの軍勢。

 しかも、世界を変えてしまう力まである。

 早急に解除しなければ世界が危ない。


 だが俺達も状況に窮していた。

 周囲のモンスターを迎え撃つ俺とサレイ。

 作戦を整える暇すら無い猛攻だ。

 そこへ疲労したラナも参戦しようとする。


「無理はするな!」

「大丈夫です! 私は頑丈……ぐ、っ!」


 攻撃を受け体勢を崩すラナ。

 普段ならこんな事はあり得ない。

 傷は無いが、当然の状態と言える。

 俺が目覚める前もラナは戦っていたのだ。


 彼女にも休息を与えなければ。

 その為にも今いる場所から離れるべきだ。

 こんな場所で、休めるわけがない。


「ここは任せたぞサレイ」

「わかった!」


 ラナを抱えて俺は飛び立つ。

 サレイならば絶対負ける事は無いだろう。

 彼を信頼し、俺は空を駆ける。


 空中のモンスターも減っていない。

 俺の進路を遮るように次々と襲ってくる。

 加えて俺はラナを胸に抱えた状態だ。

 回避はできるが、応戦は難しい。

 肉弾戦はできず飛び道具頼りの戦いだ。

 一人ではきつい……ならば。


「金銀姉妹! 空路を開けられるか!?」

『無茶を言いますね……ゴルド姉!』

『応ッ! 行けウシオニ!!』


 近くにいた金銀姉妹へ応援を頼む。

 まだウシオニの全容を見てはいない。

 それでも制圧力の高さは簡単に伺えた。

 蜘蛛の足に似たウシオニの腕に、俺の前を塞ぐモンスター達は一吹き飛ばされていく。


 リヴァイアサンにも劣らぬ応戦能力。

 だが、応援もこれが限界らしい。

 姉妹のいる場所は激戦区と化していた。

 力を貸してくれただけありがたい。


 しかし要塞までの空路は開かれていない。

 確保した制空もすぐ奪い返されていく。

 休める場所を探すなら、今しかない。


『アリク! こっち!!』


 何処かから声が聞こえる。

 当たり前だが金銀姉妹のモノではない。

 声のする方向は、まっすぐ眼前だ。


 声の主は喧騒に紛れ判別できない。

 それでも確かに俺を呼ぶ声が聞こえた。


 翼を力一杯に羽ばたかせ、風を掴む。

 最高速度で声のする場所へ飛ぶ。

 少しずつ閉ざされる空路。

 それよりも早く空を切り裂いていく。


 止まる手段は考えていない。


『アリク! こっち……って早くない!?』


 まとな着陸などできない。

 ほぼ衝突や墜落と何も変わらない。


 少し湿った体表を全身に感じながら、俺はリヴァイアサンの背中を滑っていった。


『だ、大丈夫?』


 変身したアビスは喋る事ができない。

 俺達を呼ぶ声の主はリッカだった。

 そういえば開戦直後からここにいたな。


「俺は大丈夫だ。ラナは?」

「私も何もありません」

『ま、まあそれなら良いんだけどさ』


 幸いにも身体には傷一つついていない。

 ラナも同様だが、悪い事をしてしまった。

 疲れた体に今の衝撃は応えるだろう。

 これも含めて回復できれば良いのだが。


 幸いここは要塞並みの安全地帯だ。

 多少騒がしいが、攻撃が届く事は無い。


 俺は一息つき、ラナに休むよう告げた。

 どうやらそれが気になったのだろう。

 何があったのか、リッカが俺に尋ねる。


「それがだな」

『なになに……?』


 簡潔に俺は経緯を話した。

 光の柱の存在とその正体を。

 聴き終えると、彼女は小さく手を上げた。


『それって、私じゃ力になれない?』

「お前が…………?」

『アリクは見てたんでしょ? ラナちゃんがその制圧魔術っていうのを解除するところを』


 確かに俺はラナの作業を真横で見ていた。

 一挙手一投足、全てを俺は観測した。


 リッカの発言から真意は読み取れない。

 だが、口で言わなくてもよくわかる。

 彼女の顔は自信たっぷりな表情だ。

 そんな顔をされたら、疑うなどできない。


「任せられるか?」

『当然っしょ!』


 満面の笑みを浮かべるリッカ。

 昔に比べると、本当に変わったな。

 まさか自分から力を貸してくれるとは。


 そのまま自然な流れで俺達は握手する。

 先に差し伸べてきたのはリッカだ。


『——オッケー、大体わかった』

「何がだ? 何かしたのか?」

『アンタの記憶に少しだけ潜行したの』

「今の一瞬でか!?」

『どうよ、結構強くなったでしょ?』


 たった一瞬握手をしただけ。

 それだけで俺の記憶を覗いたらしい。

 ……本当に成長したな。お前が自分の強さを誇れるようになれて、俺は少し嬉しい。


 って過去に耽っている場合では無い。

 早く光の柱を停止させなければ。


 リッカの思惑はまだわからない。

 何故俺の記憶を覗いたのか。

 ラナの作業を見た事が何になるのか。

 今は想像がつかない。


 が、今は全て彼女に任せよう。


『アビス! ラナの事は頼んだよ!』

『————!!』

『よし! アリク、行くよ!!』

「任せろッ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版が2019年3月9日に発売します!
さらに濃厚になったバトルシーン! 可愛いモンスターたちの大活躍をお楽しみください!!

書影
書籍版の公式ページはこちら



― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ