表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/184

モンスターの海を割れ!(前編)

 

 鋭利な爪を利用した強烈な斬撃。

 強靭な脚のバネから繰り出されるキック。

 背中の黒翼が生む圧倒的威力の暴風。

 睨みつけた場所を爆破させる火炎能力。


「アリク様! 合わせてください!」

「何をすればいい?」

「火炎放射です! 使い方は!?」

「任せろ!」


 ラナの提案に乗り口内に魔力を回す。

 本来なら口が大火傷するだろう。

 だが、やはり暗黒龍の強度は侮れない。


 同時に俺達の口から吐き出される炎。

 横向きの火柱は混ざり、炎の塊と化す。

 火力任せの大技でモンスターを薙ぎ払う。

 暗黒龍2体分の超攻撃力だ。

 耐久が高かろうとひとたまりもない。


「しかし多いな……!」

「やはり私は元の姿に戻ったほうが!」


 舌打ち混じりに俺が吐いた言葉。

 モンスターの軍勢は減る気配がしない。

 ラナの言う通り本来の姿で戦ってもらうのも吉だが、恐らくそれだとラナの負担が過剰になる。


 アビスは規格外の巨躯だから無双できる。

 それをラナにやれというのは困難だ。

 今は、龍人態で戦うほうがいい。

 攻撃威力の補助が今の俺の仕事だ。

 少しずつでも、削っていくしかない。


 だが結局それでは解決しない。

 倒しながらも頭をひねる。

 これではブライの捜索すらできない。


 それはサレイ達も同じだったようだ。

 俺達の助太刀に入りつつ、訪ねてきた。


「先輩! 何かアテは!?」


 アテ、そう言われても俺にはわからない。

 ただ何か脳裏に引っかかるものはある。

 確信は無いが、体感が教えてくれた。


「シーシャ、何か見えないか?」

「いま確認しているわ!」


 通信ゴーレムでシーシャに呼びかける。

 この違和感を、確かなものにするためだ。


 その間もモンスターの海を突き進む。

 少しずつだが前へは進んでいる。

 どこが前なのかと言うのはわからないが。

 総力戦で迫るモンスターを押し返していく。


 サレイの援軍で幾分か楽になった。

 しかしお前が抜けた場所はどうなんだ?

 そう思いつつ、彼に少し視線を送る。

 すると彼も気づいたようで、先程まで彼が参戦していた場所を親指で指差した。


 親指の指す先を見た瞬間、俺は納得した。

 そこにいたのは二刀流のリーヴァだ。

 忘れてた、全壊剣は全て彼女が持っていた。

 鬼神のようにモンスターを蹂躙している。

 あれは一緒にいれば巻き込まれる奴だ。

 賢い選択だ、サレイ。



 視線を戻しモンスターに集中する。

 やはり何かがおかしい。

 戦力差を認識しても逃げ出さないのだ。

 倒され意識を失うまで戦い続ける。

 野生のモンスターでは珍しい。


 しかしそれは凶暴化で説明がつく。

 判断力が鈍っているのだ。

 つまり違和感はそこには無い。


 俺は今、疑問に近い場所を見ている。

 倒れるまで戦い続けるモンスター。

 地面に倒れゆく彼等の肉体。

 ……そうか、そういう事か!


「妙だ、ブライは野生のモンスターを操っているんじゃないのか?」

「何言ってんだ先輩?」

「倒された後のモンスターを見てみろ」


 言葉に従い、ブライはモンスターを見る。

 地面には意識を失ったモンスター達がいる。

 可哀想だが今はそういう話では無い。


 そこにまたモンスターが一体倒れ込む。

 野生でよく見かけるオオカミ。

 まだオオカミは意識を失っていない。

 そんな彼が勢いよく立とうとした時だった。

 威勢に反し、その姿は霧のように消えた。


 俺はこの光景に明らかな既視感があった。

 それは恐らく、サレイも一緒だ。


「まさかコイツら、召喚されてるのか?」


 やはりお前にもそう見えたか。

 強い負荷を負ったモンスターが消滅する。

 これは明らかに召喚術の解除と同じだ。


 痛々しく地面に倒れるモンスター。

 彼らが俺に教えてくれた。

 その総数が、明らかに少ないのだ。

 倒した数と倒れている数が一致しない。

 それが俺の引っかかりの正体だった。

 気づくと同時に、通信ゴーレムが鳴る。


「見つけたわよアリク!」

「何かあったか!?」

「ええ、光の柱と言えばいいかしら!」


 相手はシーシャだ。

 どうやら本当に何か見つけたらしい。

 光の柱……いかにも怪しい物体だ。


 だがここからでは何も見えない。

 上空も地上もモンスターだらけだ。

 遠くの視界を確保するのは難しかった。

 一度上空を偵察するか?

 いや、それはあまりに危険すぎる。


「ひょっとして、アレか!」


 流石サレイ。この視界で見つけたのか。

 だがアレと言われても、俺は何も見えない。

 それでも彼は指をさしている。

 俺も確認する為に少しずつ目を凝らす。


 ————見えた。

 モンスター達の遥か後方に、光の柱がある。

 暗黒龍の五感を借りて確認した。

 だがもしこの光の柱が関係していたら。

 少し厄介な事になってしまう。


 この光の柱、全部で4本あるのだ。

 しかも俺達を四角形に囲むかのように。


「当たり前だが一筋縄じゃいかないな」

「そんなの承知の上だ」


 ブライによる召喚術の使用。

 そしてシーシャが発見した4光の柱。

 何かが関連しているに違いない。

 だが、それを確認するにはモンスターの大群を一度あの柱の場所まで突き抜けなければいけない。


 サレイの言う通り、一筋縄ではいかない。

 それでも今は確かめに行くしかない。


「そういう事だがラナ……ラナ!?」

 

 ラナにも確認を取ろうと横を見る。

 しかし彼女は既に消えていた。

 俺達のしていた話に察しがついたのだろう。

 彼女はもう、柱に向かって進撃していた。

 モンスターを蹴散らしながら。


「俺たちもいくか、先輩」

「…………そうだな」


 少し呆れながら俺達もラナに続く。

 サレイも俺もつくづく強い相棒を得た。

 コイツの場合は、恋人になるのだが。


 俺は翼を広げ、サレイは剣を召喚する。

 久々に暴れようじゃないか、後輩。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版が2019年3月9日に発売します!
さらに濃厚になったバトルシーン! 可愛いモンスターたちの大活躍をお楽しみください!!

書影
書籍版の公式ページはこちら



― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ