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新たなるチカラ

 

『よぉアリク、生きてたかァ!』


 戦場にブライの下卑た声が響く。

 辺りを見渡すも、彼の姿は見当たらない。

 操られたモンスターの軍勢。

 そして対抗する人々が広がるのみ。


 彼はここにいない。

 別の場所に身を隠しているようだ。

 強大な力を手に入れてなお隠れるとは。

 彼の狡猾さが伺えるようだ。

 だが、それも終わりだ。


「お前の不死は攻略できる」

『ギャハハ! 勇者でも無いテメェが?』


 相変わらず随分傲慢な思考だ。

 相手が勇者で無ければ、自分自身も倒される事は無いとでも思っているのだろうか?


 残念ながらそれは的外れだ。

 8000年前の激闘の風景を思い出す。

 魔王はお前の思っている存在とは違う。

 不器用だが、治世に命を賭けた男だ。

 強さも俺達とは比にならない。


 "魔王"と"勇者"だから成り立つ戦いだ。

 お前では魔王は務まらない。

 お前いう通り、俺は勇者では無い。

 それなら釣り合っているだろう?


『……やってみろやァ! テメェが生きてたら試させてやるよォ!!』


 激昂した怒声を残し、彼の声は途切れた。

 残るのはモンスターと人が激突する音。

 予想通りブライはここに居ない。

 軍勢をかき分けて見つけるしか無い。

 慎重を通り越し臆病さすら感じる。


 ブライも死を体感している。

 魔王ですらその苦痛には応えていた。

 彼も恐らく、死の痛みを克服していない。


 後はブライを見つけて彼を倒すだけだ。

 だが彼の臆病さが厄介な面に現れた。

 凶暴化したモンスターによる肉壁。

 これは純粋な脅威である。


 生半可な強さではこれを突破できない。

 ここは一度、誰かの意見を聞こう。


「マキナ、軍勢はどこまで続いている?」

「バックス領の中心街3つ分程度です」

「それがほぼ全方位か」

「一応退路は存在しますが」


 予想はしていたが、やはり多すぎだ。

 退路を確保されている事が奇跡である。


 それもモンスターは洗脳状態。

 無理矢理凶暴化させられている。

 召喚術師として、これは使役と呼べない。

 けれとも彼の戦法には理があった。


「……まずは蹴散らすか」

「僕もそれが一番だと思います」


 彼等には悪いが、倒すしか無い。

 パーティを離れた当初の草原と同じだ。

 まずは命あっての物種。

 全てはブライを倒して償わせるしか無い。


「行くぞ!!」


 俺が号令を発す。

 同時に、敵の流れ弾がこちらは飛来する。

 着弾寸前で全員揃って飛び退ける。

 散開するには良いタイミングだ。


 サレイやマキナ、単体で戦える者は右へ。

 俺と俺の使役するモンスター達は左へ。

 戦力の振り分けも丁度良い。


『アリク様! 私に乗ってください!』


 早速暗黒龍に変身したラナ。

 アビスはリヴァイアサンへ変身した。

 巨大なアビスの背にリッカも乗っている。


 ラナの提案は、今までなら飲んでいた。

 だが今は首を横に振る。

 俺の移動の面倒を見る必要は無い。

 可能な限り自由に戦って欲しい。


 それに……俺には新しい力がある。

 お前達と本当に肩を並べ戦える能力が。


『早速試すか、我が力』

「ああ、貸してくれ龍皇!」

『フッ……存分に使うが良い!!』

「ありがとう!!」


 胸の中で何かが燃え上がる。

 僅かに走る、全身が痺れるような痛み。

 しかしそれもゆっくりと慣れていく。

 同時に俺の肉体にも異変が起こる。


 服を突き破り出現する翼。

 手も足も伸び、龍のように形を変える。

 その全ては漆黒に染まっていた。


『その姿って……!!』


 言いながらラナは暗黒龍から変身する。

 人間態では無く、戦闘用の龍人態へ。

 黒い翼に黒い龍の手足、太い尻尾。

 尾を除けば俺と大して変わらない。

 頭に生えた角までお揃いだ。


 変身完了。

 ラナ風に名付ければ、アリク龍人態。

 魔王はこんな使い方をしていなかったが、試してみると意外にも思い通りになるものだ。


「一緒に戦おう、ラナ!」

「…………はいっ!!」


 これまでに無いキラキラした表情のラナ。

 龍皇の助力とはいえ同じ姿になれた。

 俺も、少し暗黒龍に近づけた気がする。


 そのままの気力で敵陣へ飛び込むラナ。

 嬉しいのはわかるが少し張り切りすぎだ。

 翼を羽ばたかせ俺も後へ続く。

 体の使い方は自然と理解できた。


 暗黒龍の肉体性能に度肝を抜く。

 こんなにも体は軽いのに、敵に繰り出す一撃はとてつもない重量感に溢れている。

 一撃の余波が地響きへと変わっていく。

 爽快感と恐怖が同時に味わえた。

 やはり暗黒龍は最強のモンスターだ。


 そんな暗黒龍の首領と融合している。

 龍皇となると、アレも使えるはず。


「龍皇、あの技はどう使うんだ?」

『もっと明確に言え』

「睨んだ場所を燃え上がらせる技だ」

『ああ、アレか』


 話しかけると使い方はすぐにわかった。

 それ以上の会話は交わしていない。

 使用方法を思い出すような感覚。

 早速、立ち塞がるオオカミの群れを睨む。


「燃えろッ!!」


 俺が叫ぶと共に睨む先の地面が赤熱する。

 直後、その地面は勢い良く爆発した。

 龍皇のものと違う明らかな失敗だ。

 精度の調整が予想よりも難しい。


 だが失敗でも十分な威力だ。

 これなら戦闘中にもしっかり使える。

 後は少しずつ慣らしていこう。


「道が開けました! 行きましょう、アリク様!!」


 新たな力で、俺とラナは戦場を駆ける。


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書籍版が2019年3月9日に発売します!
さらに濃厚になったバトルシーン! 可愛いモンスターたちの大活躍をお楽しみください!!

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