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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Eternal doll

作者: 鶴羽 雪月

人形って素敵ですよね。

そんな人形が織りなす悲しく美しい世界へあなたを誘いたいと思います。

「おじーちゃん、あのにんぎょうな~に?」


 4、5歳くらいの少年が問いかけました。


 だいぶ早めの夕食を取り、沈みかけの夕日の優しさが微かに部屋に入り込んで来るころ、少年の指差す先にあるのは硝子に囲われ、お互い大切そうに寄り添い合って飾ってある二体の人形でした。

 その問いに少し困りつつも、この部屋の主である少年の祖父は口を開きました。


「あの人形はこの屋敷に昔からある人形じゃよ」

「いつからあるの?」

「そうじゃのぅ・・・。おじーちゃんが生まれるもっともっと前からじゃな」

「すごいむかしからあるんだ」

「その時のこの屋敷の持ち主のご子息様が作られた人形で、悲しいお話と一緒に残ってるのじゃよ」

「かなしいおはなし?」

「うむ。それはの・・・」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



 ある時代の小さな町に、人形造りと造った人形で劇を開くのが好きな貴族の青年が居ました。

 青年が造る人形は芸術性の高い、いわゆるビスク・ドールや子供向けのかわいいパペット、釣り糸で操つるマリオネットなどで造りが細かく、商人や他の貴族からも注目されるほどです。

 生まれてから大分永い時が経っていると解る人形も、丁寧に整備されている事や大事にされていることが一目で見て取れるほどに美しく綺麗に保たれています。


 それだけでも青年の人形を想う気持ちが周りの人たちには伝わりました。


「兄ちゃんスゲー!」

「今日も素敵な劇だったわ」

「次も楽しみじゃのう」

「売れるんじゃねーか?」


 口々に賞賛の声が上がります。


「皆さん毎回ありがとうございます。ですがまだまだですよ」


 人当たり良くわけ隔てもなく何より劇の腕も確かなので老若男女問わず気に入られ、楽しみにされていました。




 いつもの庭園の少し丘になっている彼のお気に入りの場所、色とりどりに咲誇る花を臨みながら近くにそびえる大樹の下で日向ぼっこやお昼寝が楽しめる場所で、今日も人形劇を開いていた青年は運命的な人と出逢います。


「あの・・・!わ・・・わたしに人形の造り方を教えてください!」


 空に夕焼けの朱が射し劇の幕が下り、片づけの為に軽く整備をしていた時です。

 振り向いた先に佇んで居たのは、つい最近から劇を観に来るようになってくれた青年より少し年下と思える少女でした。


「私もまだ教えられる程ではないですが、お力になれるなら。」


 いきなりの大きな声に少し驚きましたが、そう微笑みながら答えました。

 青年も同じ趣味を持ってくれる人が増えるのは嬉しいものがあったのでしょう。

 快い返事を貰えた少女は驚き顔を浮かべながらはにかんだように頬を綻ばせました。


「ほんとですか!?よかった・・・」


 その笑顔と茜の光を反射させる髪が幻想的に映り、青年は瞳を奪われていました。

 はっと我に返った青年は、なぜ造り方を教わりたいのか訊ねました。

 見惚れていたのを誤魔化すように早口になっていたのにはお互い気づいていません。


「わたし、恥ずかしいですけど・・・夢があるんです。それは・・・」


 それは、その少女の夢は彼と同じ、全ての子供に笑顔を、自分の造った人形で、劇で、世界中の全ての子供を笑顔にしたいという大きすぎるけれど素敵な理想ゆめでした。


 平民ですが綺麗な灰色がかった銀髪の見目麗しく、人形に関してはまだ修行中な少女と、貴族らしさを纏いつつも親しみやすく、太陽の様な暖かい色を含んだ金髪の青年。

 そんな同じ理想ゆめを持つ二人は次第に引かれ合い、お付き合いを始め、共に人形を造り劇を開いて町の皆を楽しませていきました。

 貴族と平民なのでなかなか世間的に上手くいきませんでしたが、お互いの両親が温かく応援してくれていたこともあり幸せを感じていました。


 ですが、そんな幸せも永くは続かなかったのです・・・




「娘の為にお越し頂いてありがとうございました」

「一人でも多く喜んで貰えれば・・・それに、わたしもお話させて頂いて楽しかったです」


 二人が出逢ってから数年後、身体が弱く家から出られない子の為に少女が一人出向いて劇を開いた帰り道。

 大通りと言わないまでもそれなりに人で賑わっている通りのお店から、ガラの悪い男達が飛び出して来ました。

 どうやら借金の取立て屋らしく、差し押さえで店の物を持ち出そうとしているようです。


 気の毒とは思いますが少女には何も出来ないので遠巻きに見ながら歩みを進めていると、リーダー格の男が上面が硝子張りの木箱に入った首飾りを持って出て来た時、男の足に子供がしがみついてきました。


「ママとパパの大切なものだからダメー!!」

「うるせーぞ!クソガキ!」


 お店の子供のようですが、子供は男に蹴り飛ばされ倒れてしまいます。

 男はすでに気絶している子供に近づき、近くに落ちていた木材を手に振りかざしました。


「恨むんなら金を返せないテメーの親を恨みな」


 木材が振り下ろされた時、気づくと少女は子供の前に飛び出していました。

 木材は振り下ろされた力のまま少女の頭を強かに打ちつけ、鈍い音と共に砕けていきました。

 少女は操り人の居なくなった人形の様に静かに崩れ落ち、その頭からは大量の鮮血が止め処なく溢れ、通りの舗装と少女自身を濡らしていきます。


 暫し辺りは静寂が支配し、目に見えてうろたえながら部下に引き上げるよう怒鳴り散らしている男の様子で喧騒が戻って来ました。


「きゃあぁぁーーー!」

「誰か衛兵と救護兵を呼んで来い!」


 すぐに駆けつけた衛兵に逃げ出そうとしていた男達が取り押さえられ、辺りは肌が焼けるかと思えるような熱気に包まれ、怒声と驚声、泣き声や乱雑な足音などの色々な声や音で騒がしく、右往左往駆けずり回っているのを横目に自分の身体はまったく力が入らず、何とも言えぬ肌寒さに晒されているものだと薄れ行く意識の中そう感じ、愛する青年ひとが騒ぎを聴き駆け寄ろうとする姿を虚ろな瞳で視たのを最後に、少女のいのちは幕を下ろします。

 その髪は、初めて二人が出逢った時のように紅く、朱殷あかく濡れ輝いていました。


 駆けつけた青年は徐々に冷えていく少女の身体を抱え、ただただ声を掛けながら視ていることしか出来ませんでした・・・




 最愛の少女ひとを失ってから数日後、葬儀が済んでからというもの青年は自室に塞ぎ込み、一心不乱に、何かに取り憑かれたかのように人形造りに没頭し始めました。

 屋敷の皆も傷心の青年に声は掛けづらく、時間が経てば落ち着いてくれると思いしばらく様子を見ていました。

 しかし、一月経てども二月経てども青年は顔を見せようとはしません。

 給仕係が青年の部屋の続きの間に食事は運んでおり、少量ながらも減っている事があるのでまだ安心はしていましたが、数ヶ月も篭りきりでは流石に心配にもなります。


 屋敷の主人に頼まれ侍女長が侍女一人を連れ様子を窺う為に青年の部屋を訪れました。

 侍女を部屋の前で待機させ侍女長は続きの間へ入ります。


「坊ちゃま、失礼いたします」


 作成部屋に続く扉をノックし、声を掛けた後開くと視界に飛び込んできたのは・・・

 幾十幾百もの数え切れないほど大量の人形の様な物・・・が、置かれる場所など意に介さないといった風に乱雑に転がされている光景でした。

 人形師の部屋なので大量の人形が置いてあるのは理解できます。しかしあまりにもその数は異常でした。

 少女が亡くなる前に出入りしていた時はこんな数では無かったはずです。


 数だけでなく人形の様な物・・・、造り欠けなのか失敗作なのか・・・。中には人形と形容し難い物も含まれ辛うじて原型があり判別がつく有様の物が大多数を占めており、それらがさらに嫌悪感を抱かせ、軽く吐き気が込上げて来るのを押さえ込みながら部屋の主を探します。


「坊ちゃま!ぼっち「出来た・・・出来たんだーーー!!」・・・坊ちゃま!?」


 叫び声の後にガタンッ!という物が倒れる音が聞こえ、侍女長は急いで声のした方へ人形らしからぬ物を掻き分けながら向かいます。

 部屋の奥、隅にある作業台の周りには相変わらず不気味な人形が転がっており、その中に埋もれるかの様に青年は倒れていました。

 自分は、仕える主人のご子息である青年をすぐに助け出すべきなのだろうと思いつつも、侍女長の瞳は見開かれたまま台の上から離せませんでした。


 作業台の上に居る一体。状況を視るに今しがた造られたばかりなのであろう完成された人形(ビスク・ドール)

 なんと表現したらいいのか、ただただ美しいと言わざるを得ず、これほどの物は世界中探しても他に無いだろうと思えるほどに綺麗な、腰のあたりまである灰色がかった銀色の髪を持つ、亡くなった少女に瓜二つそっくりな人形に時を忘れ呆然と見入っていました。


 しばらくそうして見惚れていると、その人形の口元と目元に悲しげな儚い笑みが湛えられた様な気がしたことで、青年が倒れているのを思い出しました。


「そうでした・・・!坊ちゃま、大丈夫ですか!?」


 あまり揺さ振らない様気をつけつつ抱き起こしてみると、やつれてはいるものの規則的な息遣いで眠りについている顔がそこにはありました。

 侍女長は安堵し、取り合えず先程の失態を自分の中で無かった事にしつつ部屋の前で待たせていた侍女を呼びに行き、青年を寝室に運び休ませました。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「その時の人形がこっちのじゃな」


 そう言いながら少年の祖父は、硝子に囲われていた人形の片方、お話の中に出てきた通りの銀髪の美しい人形を手に取り、抱きかかえました。


「きれい・・・」


 まだあまり物を知らない幼い少年の目から見ても、近くで見ると感嘆の声が零れるほどに完成された美しさを持っています。


「あれ?さっきわらってたのにさみしそうなかおしてる?」

「そう思うかの?皆そう言うんじゃよ。顔は変わってないはずなんじゃがのぅ・・・」


 確かに人形の顔は置いてあった時と何ら変化はないのですが、やはりその顔はどこか悲しそうな印象を受けるものでした。


「まぁ、おじーちゃんもそう感じるんじゃがの」


 はっはっはと少年の祖父は笑います。そんな祖父の話を聞いているのか聞いていないのか、少年は興味深げに人形をいろんな角度から覗き込んでいます。

 そんな姿を微笑ましく見守りつつ、少年の祖父はもう一体の人形を抱き寄せました。


「こっちもきれい!」


 そう言って眺めているのは金髪の人形。まだお話の中には出てきていないもう片方の人形です。


「綺麗じゃろう?さて、次はこっちの人形の・・・続きのお話じゃな」


 そして少年の祖父はまた語り始めました。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「おぉ・・・、目が覚めたか」

「よかった・・・よか・・・っ」


 青年が倒れ運び出されてから数日、眠り続けようやく目を覚ました青年の視界に映り込んで来たのは、心の底からほっとしたという顔の父と安心し泣き崩れている母の姿でした。


「心配お掛けしてすみません。ところで・・・」


 ベッドの上で身を起こし頭を下げ、心配掛けてしまったことに謝りながら、青年は気になっていることを訪ねかけたところで目的のものを見付けました。

 ベッドの脇、暖かい色を灯すランプが置かれている小さな台の上、光を浴びてきらきらと輝く銀髪を持つ奇跡の様な造形。

 青年の愛した少女ひとによく似た人形でした。


「やぁ、そんな所にいたのかい。傍へおいで」


 青年は人形(少女 )へ話しかけながら自分の腕へと抱き寄せました。

 はたから見たら危ない趣向の人に見えるその光景。

 青年の両親がそう思うのも無理からぬ事で・・・


「お、おい・・・大丈夫か?頭打ってないか?人形が好きなのは知っているし受け入れてもいるが、さすがにその、それは・・・」

「安心して下さい。別にそっちの趣味に目覚めた訳ではありませんから」


 青年の言葉に深く胸を撫で下ろす父親。

 最愛の人を失い塞ぎ込んで居たのだろうと思い色々と心配していた様です。

 最悪気が触れてしまっているのではないかと。

 そんな父親の心配を余所に、言葉を遮りながら答えた青年は続けます。


「解っていますよ、彼女が居なくなってこれが私の作った唯の人形だということは・・・ですが・・・」


 そこで青年は言葉を切りました。

 塞ぎ込んでいる場合でも落ち込んでいる場合でもないということは青年が一番よく解っていました。

 あの優しい彼女が望む訳ないと・・・ですが、やはり心の整理が付かなかった青年は少女そっくりの人形を造り、少しでも気を紛らわそうとしたのです。

 愛しい少女ひとの死を受け入れ、けれど決して忘れる事無い様に。


「もう大丈夫です。心配お掛けして済みませんでした」


 再度青年は頭を下げ謝ります。

 青年の両親は貴族の名に恥じずしっかりしている自分たちの息子に何とも言えない気持ちになりました。

 親でなくとも心配するのは当然ですし、親としても謝られたい訳ではありません。

 想っているからこそ心配している、自分たちの子供なのだから心配を掛けて欲しいと思うものです。

 もちろん心配事が無いに越したことはないのですが、やはりたまには甘えてくれても・・・と感じていました。


「謝らなくとも・・・いや、いいんだお前が無事なら」


 そう言いながら父親は妻と青年を抱き締めました。

青年一家は、少女が亡くなってからおよそ一年振りの家族団らんを迎えたのです。


 傍らに居る人形の顔は、微かに微笑んだように見えました。




 青年は目を覚ましてから、以前の様に人形劇を開くようになりました。

 子供の笑顔が好きだった少女はもう帰って来ませんが、二人で目指した理想ゆめの為。そして、それが少女の供養にもなると信じ、傍らに人形(少女)を連れて。


「兄ちゃんだー!」

「辛いだろうに、わしがばーさんに先立たれた時なんて・・・」

「あんたの話はいいんだよ」

「・・・ひどいのぅ」


 1年もの間姿を見せていなかったにも関わらず、町の皆は笑顔で青年を出迎えてくれました。

 心配はしつつも気を回し過ぎないような皆の気遣いに、青年の心は一杯になり涙が溢れて来てしまいそうになりました。


「おや?その人形は・・・」


 青年がいつも劇の為に牽いてくる、腰ほどの高さで舞台が備え付けられている荷台の青年のすぐ後ろ、町の皆にも馴染み深い容姿の人形に皆の視線が移りました。

 そう、青年が何か月もの時間を費やし造った美目麗しい人形、少女の姿を持った人形です。


 言葉を発した町人は、複雑そうにしながら続きを喋ることができませんでした。

 年少の子供たちは素直に綺麗だと絶賛し、年長の子供たちや大人たちは言葉が出てこない町人と似たような顔になってしまったので、青年は口を開きました。


「彼女を忘れない為に、彼女を感じていたい為に人形(彼女)を造りました。実際に彼女の暖かい優しさが感じられるような気がするんですよ。皆さんの心配も理解できますし、お掛けして申し訳なく思います。ですが一応は心の整理は付いているつもりです」


 一人で気持ちが沈んでうなだれてしまっている時、少女の温もりや少女が傍にいるような気配、そんな青年の弱さを包み込み慰めてくれるような優しさを、青年は時折感じておりました。


「彼女が居なくなってしまったのが、もう辛くないかと言われれば嘘になりますが、彼女の為に、何より、楽しみにして下さっている皆さんの為にこれからも劇を続けさせて頂きますよ」


 気を遣わせないように歓迎するつもりだったのに、結局気を遣わせてしまった事に心苦しく思いながらも、町の皆は改めて決意の青年を暖かく出迎えました。


 枯れ行く葉が落ち、だいぶ肌寒くなって来た風に乗った暗い足音と共に・・・




 季節は冬になり、はらはらと雪が少し舞うようになって来たころ、原因不明の病に倒れた者が現れました。

 体調はすぐに良くなりましたが、しばらく様子見の為に町医者に掛かりつけになりました。


 1、2週間経ったある日、急激に体調を崩し咽喉が物を通さず、無理に食べたとしても戻してしまい高熱も続き、徐々に衰弱していき寝たきりになり、町医者の努力も空しく命を落としてしまいました。

 それを皮切りに複数の人が同じ症状を訴え一人、また一人と命を落としていき気づいた時には町中に不治の流行病が広がっていました。


 町の領主は国に掛け合い移民の打診をしてくれていますが芳しくありません。

 それもそのはずで、迂闊に移民を受け入れると流行病を拡散させる事になってしまうからです。

 もと居た町医者は早々に命を落とし、別の医者が国から派遣されましたが治療法は見つからず、難航していました。

 その為町の出入り口と近隣領地には検問が敷かれ、人の出入りが制限されました。


 多くの犠牲者が生まれ、青年も貴族である自分に出来る事を惜しまず行っていましたが、冬が終わりに近づいて来たころに自身も流行病に罹ってしまいました。

 いまだに治療法は見つかっておらず、症状を少し遅れさせるのがやっとと言ったところです。


 青年は発症してから発症したことを家の者に伝えず、うつさない為に部屋に籠り誰も寄せ付けないようにしました。

 青年ももう永くはありません。その永くない時間を使い青年は最後まで人形造りを行いました。

 このまま死んでしまうならいっそ、自分に似せた人形を造りその人形になり、人形(少女)と共に居られればと願って・・・




 刻一刻と死が近づき手にはほとんど力が入らなくなり、もう幾許の猶予も残されていない時についに人形が完成しました。

 最後の力を振り絞り、覚束ない足取りで病に罹ってから書いた手紙を廊下への扉の隙間に挿み、作業していた椅子に沈み込みました。


「今、君の所に行くよ」


 こうして青年は静かに息を引き取ります。


 作業台の上には少女の人形と、完成したばかりの陽の光のような暖かい金色の髪を備えた青年と同じ姿形の人形が、お互いに微笑みあっているように仲良く寄り添っていました。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「これでお話はおしまいじゃ・・・って、寝てしまったかの」


 外はすっかり陽が沈み、壁に掛けられたアンティーク調の時計を見ても随分遅い時間であることが分かります。

 少年は祖父の膝に腕を乗せ、頭を埋めながら眠り込んでいました。


「ちょっと長かったかのぅ」


 まだ4、5歳の子供には難しい話だったかもしれません。

 それにしてはおとなしくわりと長い間話を聞いていたものです。


 少年を抱え寝室に寝かしつけてから、離れ離れだった人形を硝子の箱に戻します。

 やはり悲しげな顔に見えていたのが幸せそうな顔になっているように感じられます。


「実は本当にお二方の魂が宿ってるのかもしれんな。なんてのぅ」


 そう一人呟き笑いながら祖父は部屋を後にしました。


 後に残された二体の人形は、そんな少年と祖父を暖かい微笑みで見つめていたような気がしました・・・

いかがでしたでしょうか?

人形に魂が宿り見守る事しか出来ない少女側の心象も描きたかったのですが、いかんせん文章力が足りず・・・orz


人形に魂が宿ると言えばホラーばっかりな気がしまして、この子を創りました。

自分が思った通りに伝わるかどうかは分かりませんが、見る人によって変わるのも素敵だなって思います。


読んで下さった方、ご感想頂ければ幸いですです♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界感は凄く良い。胸が締め付けられる用な、哀愁漂う幻想的な雰囲気が素敵だと思う。お互いを何処までも思い会う愛情が良いと思います。 [一言] 次回作も期待しています♪
[良い点] 言葉にならない、言葉にすると陳腐になってしまいそうな、繊細な感動と余韻を覚えました。美しくも悲しい物語が人形という素材を上手く演出していたところを良かったと思いました。 [一言] ありがと…
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