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心の鍵~since2003~  作者: 那結多こゆり
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 ……わかったけど、でも、なんでお祖父様はあんなうそを?

 はぁ、考えても疲れるだけ。もうやめよう。


「……ねぇ、この話は、もう終わりにしない?」

「うん。そうだね。ねぇね、一恵ちゃん。ミルクティー、いい香りだよ」


 カップを鼻の高さまで上げ、彼女は匂いに浸る。

 見ていると、彼女と目が合いそうになり、わたしは急いで下を向いた。


 そういえば、可奈と同じ会社だったんだよね。退社したあとだなんて……運なさすぎ。


 そんなことを考えながら、わたしはカップに紅茶を入れ、ミルクと混ぜ合わせた。


「うわぁ、一恵ちゃん。す、すごいっ」


 カップに口をつけていた可奈は、一瞬、硬直状態に陥っていた。


 え? なんで……?


 意味がわからず、ただわたしは彼女の口元を見続けた。


「えと……砂糖入れないで飲めるなんて、すごいって思って。わたし、砂糖なしじゃ、飲めないんだ」


 え、砂糖? さっき入れたんだけどな。


 入れてあるわ、そう言ってわたしは紅茶を一口飲む。

 紅茶特有の渋味とミルクの甘さが程よく調和され、口の中に広がった。


 し、シブいぃ……。


 可奈が言うように、わたしは砂糖を入れ忘れたらしい。


「あはは。入れ忘れちゃった。わたしも、砂糖なしじゃ無理」


 そう言って、わたしは砂糖を二杯、紅茶の中に沈めた。


「一恵ちゃんって、わたしと似てる部分あったんだぁ。大発見、かな。……あ、あれ?」

「どうしたの?」

「麗子様だよね? ほらあそこ」


 可奈の目線を追うと、店内の奥に一人の女性が座っていた。


「ほんとだ。珍しい」


 唯一、彼女は本家の娘と発表されている。

 土岐島本家の人間は、あまりイベントを行わず、表に出て来ることが滅多にない。

 外に出てくるとすれば、ほとんど岩本か高藤のサポートや合同イベントだけ。


「今日、イベントあったっけ?」

「高藤は知らないけど、岩本は半日デートイベントがあるわ」

「半日デートじゃ、岩本をサポートしないよね」

「そうね」


 話しているうちに、彼女の周りが騒がしくなった。


「うわっ、一気に囲まれちゃったね。麗子様……あれ? 千世子ちよこさん」


 突然、店の入口付近に座っていた女性が、わたしたちのテーブルに来て戸惑う。


「あれじゃないでしょ、可奈。用があったから来たのよ。それに、あたし中級から筆頭に位が格上げになったのよ? ちゃんと言い直してほしいわ」

「あっ……すみません。千世子様」


 可奈に言い直しを命じながら、わたしを見下した。そして、彼女はふふん、と笑った。

 なんだか、感じの悪い女性だと思った。

 最悪な第一印象。


「で、あなたが……岩本一恵さん、よね?」

「え? えぇ」

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