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当時、わたしの彼となる人は、たいてい、高校の真向かいにある男子校の生徒だった。
理由はいくつかある。
出会いの機会が多いこと、毎日登下校を共にできること、一緒にいられる時間が多いこと。
でも、一番の理由は、その高校に魅力的な男の子が多かったせいだと思う。
彼氏にするなら、だれにでも自慢できるようなかっこいい男の子でなくてはいやだった。
そして、わたしのわがままを笑顔で許してくれる人じゃなくてはいやだった。
だいたいの男の子は、彼女にする条件の許容範囲内なのだろうか、それを苦することなく受け入れていれてくれた。
だから、自分のそばには必ず恋人がいるのがふつうだった。
わかれても、早いときには翌日には、すでに新しい人と肩を並べていたこともあった。
「ねぇ、ちょっと待って」
月並みの台詞で、わたしを呼びとめた。でも、わたしはそれを気にしない。
気のきいた言葉や如才のなさよりも、はっきりと見て取れるルックスのよさとやさしい笑顔こそが重要だった。
彼も、告白はありきたりの言い方だった。
「相良女子高の、 岩本さんだよな?」
その声にわたしは振り返った。続く言葉も安易に予想はついた。
だから、美しく笑って見せた。彼の心をわたしだけにするために。
「そうです」
背の高い男の子だった。たぶん百七十は超えている。
凛々しさを感じさせる輪郭の整った顔は、わたしの大好きな顔立ち。
日焼けした肌。すんなりと伸びた手足に、包み込まれそうな大きな胸。
そして、一重の鋭い眼はまっすぐとわたしを見つめている。
――か、かっこいい。
わたしの思いを知ってか知らずか、彼はその鋭利な瞳を和らげて笑った。
「つきあってくれないかな、おれと……」
その日から、わたしたちはつきあいだした。
続くとは思っていなかった。続ける気もなかった。
いつもの通り、わがままに呆られたら、次の人を探せばいいと思っていた。
だけど……。
――高校に入ってから、いったい何人目の彼氏だったっけ?
そう、たしか六人目。彼の名前は、高藤司。あれから四年も経つというのに……。
わ、わたし……また、昔のことを思い出していたわ。もう、やめなくちゃ。こんなことしても、なんの意味もないもの。