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心の鍵~since2003~  作者: 那結多こゆり
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 きょとんとして、司の顔を見ていると、彼の拳が軽くわたしの額を叩く。


「なによ?!」

「だから、守に……」

「は? まもるくんって、だれよ」


 疑問の瞳で、司に訊く。


「あぁそっか。ほら、朝、お前が用事を頼んだだろ。ちはるだかって子に、なんとかって言ってほしいとか」


 言われて、わたしはハッと気づく。スポーツマン顔の土岐島くんのことを。


 ふーん、あの人、まもるくんって言うんだ。

 あまり、土岐島くんのイメージに合わないよね。

 健康の健の字で『たける』って名前のほうがいいのに。……あ、関係ないか。


「なに、ぼーっとしてんだよ。早く、帰ろうぜ」

「はぁ、わかったけど。元はと言えば、司が悪いでしょ。待ち合わせの時間に来ないんだもん」

「そうだな。悪かったよ。だけど、わがままを言うなら、おれに言えよな」


 司は、わたしの手を痛くない程度に握った。


 暖かーい。司の手のひらって、すこしゴツイけど、それがまたいいんだよね。


 司の手の熱が、わたしの手に移動してくると、なぜかキスしたくなってしまった。

 だけど、土岐島くんて……。


「わかってるって。ねぇ、土岐島くんてかっこい……あ、ううん。なんでもない」


 これ以上言うと、やばいと思って慌てて止めた。

 途端に、ムッとした表情になり、司は握っていた手に、思いっきり力を入れる。


「い、痛いよ。ばか」


 一向に離さない手を、わたしはムリヤリ引き裂こうとする。


「いいかげんに、離してよっ」


 司の手はびくともしなかった。


「やだね」


 プイッと、司は横を向いた。


「司ってばぁ」


 甘い声を出して、彼を見つめる。


「あいつのほうが、いいのかよ!」


 げっ。やっぱ止めるのが遅かった。しっかり聞こえちゃってる。

 司は軟派っぽいけど、かなりの独占欲がある。

 恥ずいからあまり言いたくないけど、わたしが悪いし。しかたないか。


 大声で怒鳴った彼の顔を、わたしは再度見た。


「誤解しないでよ、わたしは司一筋」

「……ほんとだな?」


 疑いのまなざしで、司はわたしを見つめる。


「うん。司のほうが、いい男だよ」

「そ、そうか。そうだよな」


 ひとりで納得すると、司はわたしの手を擦り、それからやさしく握り直した。


 ……男の子とつきあう期間は、だいたい、三ヶ月が限度だった。

 相手がわたしのわがままに嫌気がさす時期だ、といってもいいのかもしれない。

 だけど、司は違った。つきあって半年以上になっても、相変わらずわたしのわがままを聞いてくれた。

 ……わたしは、司ならライバルが現れたとしても、ずっと自分のことを愛してくれると思っていた。

 もしかしたら、いまでも司はわたしのことを愛しているんじゃないかと、ばかげたことを考えてしまう。

 そのくらい、わたしにとって、彼の存在は大きい……。

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