スラデレラ
本編、お気に入り登録200突破、ありがとうございます。の気持ちをこめて。ありがちなネタではありますが、作ってみました。
ちなみに作者、ナレーションにて参加!
ひゃぁはああああああ! 祭りだああああ!
昔々、あるところに、スラデレラというスライムがいました。彼は毎日、継母と意地悪な姉たちにいじめられて暮らしています。
実の父母がなぜ亡くなったかというと、まだ幼かったスライムが敵兵に捕まり、拷問、そして洗脳。極限の苦痛の中で救いを求めた彼は……
「おい、本編のど暗い設定はいらねぇンだ。さっさと進めろ!」
そっスね。そして、口の悪いヒロインですね。
「うっせえ。それより、こういう企画ものなんだ。当然、王子は……」
やだなあ、ちゃんとユリを仕込んでおきましたよ。もちろん、【大人型】で♡ ゲットしてきてください。
「うっし! 俄然、やる気出たああああ! もう面倒なところは飛ばせ、飛ばせ。舞踏会に出かけるところからでいい。」
と、いうスライムのご希望により、今日は舞踏会。継母はきれいに着飾った姉たちを連れて出かけてゆきました。
一人、家に残された醜いスライムは……
「馬鹿め、俺にトレースという能力があることを忘れているな。イケメンをがんがんトレースして、げっへっへ……」
一応ヒロインなんで、その笑いはやめてくださ~い。ほら、魔法使いのヤヲさんが来ましたよ。
「ああ、可哀想なスライム……何を泣いているのですか?」
「はあ? べつに泣いてねぇし。」
「えっと……台本どおりに進めてくれないと……」
「だからお前はダイコンなんだよ。ンなもんはアドリブ、臨機応変だ!」
「あああ、やめてくださいいいいい!」
スライムは魔法使いをまっぱにひんむき、ずるりと飲み込みました。
「うおえええ」
はい、トレース終了です。
「ヤヲの姿だけじゃ弱いな。まあ、二、三十人もトレースすれば、一人ぐらいはユリ好みの男がいるだろう。いくぞ、作者!」
スライムはお城を目指してガンガン突き進みます。彼が通った後には、まっぱにひん剥かれ、ずるりと飲み込まれ、「うおえっ」ってされたイケメンたちが累々と……いや、スライム、勘弁して。R-18ひっかかっちゃう。
「ごちゃごちゃ言ってる間に城だぞ。とっととおっぱじめろ。」
え~、お城では宴もたけなわ。いい感じに盛り上がっているところへのイケメン登場に、宴の熱気はさらに上がります。
でも、彼は何者にも目をくれず、まっすぐにユリ王子の前に進むと、その手をそっととり、唇で触れました。
「ンだよ、王子姿も可愛いな。」
「スラスラ、おかしい。」
「本編とは関係ねぇンだ。こういうときぐらい、本音を言わせろよ。」
二人は踊り始めました。銀髪麗しい王子の、華麗なステップに皆は感嘆のため息を漏らします。そして、そのお相手は……
「どうだ、好みのイケメンはいるか?」
くるくると変わる姿は、どれもそろいもそろってイケメン。女性たちがどよめきます。
しかし、ユリ王子は浮かない顔です。
「お前のためなら、世界中のイケメンをトレースしてやる。絶対にお前好みの男になってやるよ。だから、こういう祭りのときぐらい、お前の本当の気持ちを聞かせてくれ……」
声帯液を低く震わせた甘い囁きに、ユリ王子は小さくはにかみました。
「スラスラ、本当、好き。」
「へ? あ? 俺の本当の姿が好き?」
驚きとしあわせに、スラデレラがずるりと本当の姿に戻ります。
「いや、俺はこんな無表情生物だしな、それに、いろいろと……アッチのほうも触手以上にマニアックって言われるぐらいで……」
はい、それを言ってるの、うちの息子です。
「ナレーターは黙ってろ!」
はい……
「ユリ、そんな俺でも、いいのか?」
ユリ王子が大きくうなづきました。
(ユリが相手なら、『いつまでも仲良く暮らしました』ってオチも、悪くねぇ。)
スラデレラはユリ王子の細い肩を抱き寄せ、緊張で乾いた唇液をぺろりと湿らせます。
(そうか、醜い姿を愛してくれる、美しい姫を手に入れました……ってパターンだな。作者め、味な真似を……)
そうは問屋がおろさないっ! 再び出番ですよおっ!
「私の花嫁に何をしているんですか、ユリ王子!」
ばん!扉を開いて、『この国の』王子、ヤヲ=ケネセッスが入ってきました。
「はああああ? ユリは?」
「国、隣。」
「だって、ヤヲはさっき魔法使いで……」
「作者、お得意の屁理屈で丸め込んでやってください。」
はいはい。実は、いとしのスラデレラを城に招くため、ヤヲ王子自らが魔法使いとなって彼女のもとへ出向いたのでした。
「やられたああああ! てめえ! なぜこっちではヤヲエンドに落とそうとするっ!」
……面白いから?
「そんな理由で、俺の貞操をっ!」
いろいろと文句はあるようですが、進めます。
ヤヲ王子はスラデレラをずるっと抱えあげました。
「さあ、行きましょう。私の花嫁。」
「待て待て待て、十二時! もうすぐ十二時だから、な。」
「何を言ってるんですか。十二時までは姿を偽る魔法、それが過ぎた後の真実の姿を王子は愛しました、って言うのがシンデレラの主題でしょう?」
広間を後にする二人を、十二時の鐘が祝福します。
こうして二人はいつまでも仲良く……
「待てぃ! それだけは絶対に言わせねぇからなっ!」
ちっ!
「舌打ちするな! なんとかしろっ!」
じゃ、いつものあれ、いっとく?
こうして、スライムの貞操の危機は続く……
「続けるなあっ!」