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うっひゃ~! 久々に次回予告っ!

 ユリとスラスラが夫婦になって200年が過ぎた。子供は13人も授かり、一番下の子は今年大学生になる。

 それだけの年月を共に過ごしながら、この二人は未だにラブラブである。

 ええ、そりゃもう、子供たちも呆れるくらいに……


 陶器の割れる音に驚いて食堂に駆けつけた息子スライムは、柔らかな父スライムに向かって手当たり次第に物を投げつけている母親の姿にため息をついた。

「またか……」

 それでも放っておくわけにはいかない。たくましいケンタウロスに姿を変えて母親を後ろから抱え込む。

「はいはいストップ~。今度は何をしたの?」

 母は美しい銀の瞳を涙で潤ませていた。

「浮気」

「へえええ? 父さんにそんな度胸があるとは思えないけど」

「巨乳。食事、酒場」

「あー、はいはい。胸の大きな女性と食事して、お酒を飲んでたわけね」

 片の意見のみで判じるのは不公平だろう。息子は父に視線を向ける。

「で、父さんの言い分は?」

「あれは某国の密使だったんだが、確かに女だったし、飯を食いに行ったのも、胸がでかかったのも本当だ」

「浮気?」

「うううううう、正直、ぐらっときたさ。何と言っても見事な乳! それがこう……かがむたびにちらり、ちらりと谷間がさあ……」

「でも、別に何かあったわけじゃないんでしょ」

「当たり前だ。あんな見え見えの色仕掛けに引っかかって、弱みを握られてたまるかよ」

 スキャンダルを自作自演して、国交に利用しようとする……ありがちな話だ。仮にもこのノーニウィヨを平らげた策士でもあるスライム王に、その程度のちゃちな手が通用するはずも無い。

「それによぉ……」

 父親の瞳液は、もはや息子の姿など映していなかった。少しむくれた愛妻を引き寄せ、外皮で包むように抱きしめる。

「俺が浮気なんかしたら、お前、泣くんだろ」

「当然」

「俺はお前の泣き顔が苦手なんだよ」

 夫はささやきを乗せた口唇液を妻に寄せる。妻は夫に応えようと顎を上げた。

「お前が泣くと思ったら、女抱く気なんか失せらぁ……」

 愛の言葉が口移しで、夫から妻に……と思った刹那!

「いい加減にしてくださいませんか」

 食堂に踏み込んできたのは、禍々しい異形の左腕を包帯で覆ったヤヲの一人娘、カムチだ。

「そうやっていちゃいちゃいちゃいちゃと……イェノスさまの情操教育に悪影響だとは思わないのですか?」

 父スライムが息子にこそっと訊ねる。

「随分と、ご機嫌斜めじゃないか?」

「ああ、受験に向けて大詰めだからな。ここ4日ばかり、勉強漬けなんだよ」

 勉強という点では、カムチはイェノスに遠く及ばない。それでも主の傍らにあろうと、超難関といわれる大学を受験しようと決めたのである。無謀だと解かっていても、主の隣に居るためには通らねばならぬ道。

「そもそもが! イェノスさまは受験を間近に控えておられるのですよ! 少しは勉学に集中できるよう、ご配慮願えませんか」

「いやあ、集中が必要なのはカムチちゃんの方じゃ……」

「王陛下っ! 口答えしないっ!」

「はい……」

「イェノスさまもっ! オチのわかっている喧嘩に毎回首を突っ込まないっ!」

「ううう……はい」

 親子スライムは、ぷるんぷるんと震えながら首液をすくめた。


 イェノスが自ら入れたホットミルクが効いたのだろうか。ベッドの端に腰掛けたカムチは口をつけたカップにため息を落とした。

 スライムがぷるりと震えながらその表情を覗き込む。

「もう、怒ってない?」

 ユリの方針で庶民風に狭くあつらえられた部屋だ。二人の距離は触れ合いそうなほどに近い。

「別に、怒っていたわけじゃありませんよ?」

 カムチは床に下りて、ぺたりとイェノスの隣に座り込む。肩と肩液がふっとふれた。

 だがそれは男女を感じさせる触れ合いではなく、もっと心安い幼馴染の無邪気さ。

「王陛下と王妃様は、理想的なご夫婦です。私も、あんな風に誰かと心を許しあってみたいものです」

「誰と?」

「それ……は……」

 肩がふいと離れ、彼女は顔を背けた。

「誰か、です。まだ決めておりません」

「ふうん」

 イェノスがぷるりと揺れる。自分がこの少女に向けている思いは……恋なんかじゃない。絵草子まんがに良くあるドキドキだの、キュンなんて感じたことも無い。それでも……執着を感じるのは、隣にいることが当然過ぎるからだろうか。

「あのさあ、その誰かってのが、もし、見つからなかったら……」

「あああああ、そんな浮かれたことを言っている場合じゃありません。勉強しなくては!」

「……」

「イェノスさま?」

「うん。とりあえず、勉強、しようか」

 焦る必要は無い。彼女も自分も、運命の相手を見つけるのは当分先の話だ。今は目先の受験に集中しなくては……。

「どこまで教えたっけ? ああ、この解を求める公式だったね」

 ぱらぱらと教科書をめくりながら、スライムはドキドキとも、キュンとも違う、焦燥感のようなものを感じていた。


と、いうわけで!! この二人のお話を始めちゃいます。

6月6日、新連載スタート! 乞うご期待~~

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