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ユリ「敵機、来襲。」

 ユリ【大人型】は、新魔王に膝をついて挨拶をささげている年若い蛇女ラーミアに、敵意のこもった視線を向けていた。

 彼女のドレスは胸元を大きめに開いたデザインだ。むっちりとふくよかな双丘が形作る谷間の始点がまぶしい。

 王座でプルプル揺れる彼の眺めはさぞかし……

「敵機発見」

 詠唱のために軽く息を吸うユリを、スライムが見咎める。

「ユリ、大事な国賓相手に何をする気だよ」

「粉砕、玉砕、大喝采」

「そんなネタ、どこで覚えた?」

電脳魔物グレムリン

「あいつらあああああああっ!」

 スライムはぶよりと頭液を掻き毟った。正直、戸惑っている。

 このラーミアは隣国からの使者だ。それもただの娘ではなく、末の皇女。

 わざわざ尊身が出向いた理由など明らかだ。

「愛人」

「そう言っちまうと身も蓋もねぇな。せめて側室って言ってやれ」

 彼はそういいながらラーミアをちらりと見下ろす。

 ドレスの裾からはみ出した蛇型の尻尾が、恐れに震えていることは先ほどから気づいていた……両手をぎゅっと無意識に握り締めていることにも。

「やっぱり、スライム相手は怖いか?」

 娘の肩がびくりと揺れた。

「気にするな、ふられるのは慣れて……うおっ?」

 ユリが何憚ることもなく、スライムの懐液に飛びつく。

絶倫スライム、可。今夜、希望」

「まっ! マニアックだが絶倫ってわけじゃねぇぞ」

「淡白?」

「そういうわけでもねぇ! 並だ、並みっ!」

 べりっとユリを引き剥がして見れば、ラーミアは両目を大きく見開き、口もぽかんと開けてしまっている。

 スライムは己の痴態に気づいて外皮を真っ赤に染めた。

「まあ、そういうわけで……俺は正直、ユリだけで手一杯なんだよ」

 若い乙女にありがちではあるが、このラーミアの娘は表情が豊かすぎる。

 醜い生き物の愛人を逃れた安堵と、それよりも大きな不安がその美貌に陰さした。

「心配すんな。あんたが国交をかけて俺に差し出されたモンだってことは良く解っている。悪いようにゃしねぇさ」

 こぽりと脳液をあわ立たせるスライムに、ユリが囁いた。

「ユリ、嫉妬。いじめる、追い出す。万事オッケー」

「オッケーじゃねえよ。お前が鬼嫁扱いされるだろう」

「鬼嫁、可。スラスラ、独占」

 柔らかい体に両手を回し、唇が触れそうなほどに顔を近づける。

 それを受けたスライムは細い腰に腕液を回し、額液をユリの額に擦り付けた。

「独占されちまうのか、俺は?」

「浮気、不可」

「しねえよ、ンな面倒くせぇこと……」

 見かねたラーミアがゴホンとわざとらしい咳を鳴らした。

「ああ、すまねぇ! お前のことを忘れていたって訳じゃねぇぞ!」

「いいんです。お二人の間に他の者が入る余地などないことは、見ていて良く判りましたから。それより、私にできることがございますか?」

「ありがてぇ。正直、お前の国とは穏便な関係でありたいんでな。とりあえず……」

 頷きながら指示を聞くラーミアの瞳は、先ほどとは違う甘い輝きを僅かに宿している。

 ふと不安になったユリはスライムを掴む腕に力を込めた。

 ぷよっと心地よい腕液は……それがさも当然であるかのようにユリを強く抱き返す。その幸せな弾力に強く身を寄せて、ユリは小さな声で呟いた。

「スラスラ、イケメン値、∞」


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