恋人《スライム》はサンタクロース②
あらかじめトレースしておいた街人の姿を借り、真っ赤な服を身につけたスライムがユリの寝台へと忍び寄る。
「?」
気配に聡いユリのことだ。スライムが居ないのに眠っていることなどあろうはずも無い。だが、小さな体を飲み込んで丸みを帯びた布団が動く気配は無かった。
思い切って布団を跳ね上げたスライムは驚きにずるっと形を崩す。
「なんつーカッコしてんだ!」
そこに横たわるユリはスケスケランジェリー姿だった。
シャボンのように艶のある薄い絹の下は平らな胸を申し訳なさそうに隠すミニブラジャー、ほっこりとなだらかな腹は露で、その下にぺったりと張り付いたお子様ショーツ……猫のようにしなやかな仕草で腰をひねって、ユリがくいっと指をひく。
「カモン」
「カモンじゃねえよ。何やってるんだ」
すっかりもとの姿に戻ったスライムは、赤い服から這い出す。
「悩殺」
「バカか。俺はロリコンじゃねぇって言ってるだろ」
小さく頬を膨らませたユリがスライムに飛び乗った。
「姿、大人、可」
「ああ、むしろこっちからオネガイしたいぐらいだ」
「姿、ドラゴン、可」
「あれも……尻尾とか、意外に……ツボなんだよ」
「姿、子供」
「それだけは絶対に無理だな。ぴくりともしねぇよ」
ユリがスライムに強く抱きつき、突然に口唇液を奪う。
「んむっ!」
小さな舌が不器用に割り込もうとするその感触はしびれるように甘く、スライムは脳液がおかしく湧き立つのを感じた。
「やめろ! 本当にしゃれにならねぇ」
細い肩を押し返して唇から逃れたスライムは、既に外皮を赤く欲情の恥じらいに染めている。
「お前は男を舐めすぎだ」
「舐める……」
「どこを見てんだ、この耳年増っ! 真面目に聞け!」
「大人。ドラゴン。子供。全部、ユリ!」
「んなこたあ解ってんだよ! どの姿でも、お前が俺の一番大事な女であることに変わりはない。だからこそ、子供の姿のお前には手が出せねぇんだ」
「スラスラ専用!」
言い争う二人の耳に、窓の外からしゃんしゃんと鈴鳴る音が聞こえた。
「!」
ユリを後ろ手に庇ったスライムが目にしたのは、堂々としたトナカイが曳くそりに乗った、赤い服の優しげな老人。
「だれだ、あんた」
老人はニコニコと笑いながら空を指差す。
「雪!」
ちらちらと儚く舞う白色にユリが喜声をあげた。窓の外にはもう、老人の姿は無い。
「誰だったんだ、あれは?」
ユリは寒風が吹き込むのも構わず窓を開け放った。
「ホワイトクリスマス」
スライムは赤い服をごそごそと探ってビロウド張りの小さな箱を取り出す。ユリの隣にずるっと寄り添い、その小箱を握らせた。
「あのな……三田からプレゼントだ」
ユリが首を傾げる。
「三田、から?」
「うう、いや……俺からだっ!」
ユリが開けると、中には小さな宝石が光る指輪が入っていた。
「王になる女にこんな安モン贈るのもどうかと思ったんだが、けじめってことで……な」
大人サイズのそれをそっと指にはめれば、ユリの中指にはかなり大きい。
「何やってんだ。ここにはめてくれよ」
スライムがそれを左手の薬指に移す。
「ただ付き合うだけのつもりなら、泣かそうが嫌がられようが構わねぇ、すぐにでも抱いちまうさ。でも、お前はそれだけの女じゃねぇから……家族になって、俺たちの子供が出来て、子供のためにクリスマスの贈り物をお前と二人で選んでやりたい」
「永遠?」
「そうだ。永遠の誓いってのを、俺と……って、だめか?」
「許可」
ユリがスライムに飛びつく。
雪空の彼方から微かに鈴の音が聞こえたような気がした。
アザとー「リア充のかたも、そうでない方もメリー・クリ……」
ヤヲ「ヤヲキーック!」
アザとー「ぐぶっ! な、何するんだ、いきなりっ!」
ヤヲ「はっ! すみません。シモネタばかりのあなたにそれを言わせてはいけないような気が……」
アザとー「やだなあ、そんな使い古されたオヤジ的シモネタ、言うわけないじゃん?」
ヤヲ「そうですか?」
アザとー「と、言うことで、メリー・クリト……」
ヤヲ「自重してくださいっ!」
アザとー「ごふっ!」




