表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/38

スラスラがユリちゃんに買った絵草子、気になりません?

ご愛読ありがとうございます。の感謝を込めて!

 がたがたと揺れる馬車の中で、ユリはスラスラが買ってくれた冗談物絵草子ギャグマンガを読み返していた。

 タイトルは『唸れ!アッパーカット』。アッパーカットという究極奥義を極めた一人のおとこが、バンチョウという伝説の称号を得るために、ガクエンという魔窟に立ち向かう、涙あり、友情あり、そして笑いありの幻想戦闘ファンタジーバトル物だ。

 

――俺、闘魂とうこん ごうは、厳しい修行の末、ついに究極奥義『アッパーカット』を会得するに至った。それは禁断のわざ……人間の弱点であるあごを狙い、突き上げるように打ち込むことで肉体を粉砕する。同時に脳を揺すり、軽い脳震盪状態を擬似的に作り出して相手を戦闘不能へと追い込む、まさに破壊神アッパーカット…… その日、修行を終えた俺の元へ尋ねてきたのは、かつてバンチョウだった伝説のセンパイ、『雷拳のシンジ』という漢だ。彼は大きな長持いしょうケースを抱えていた。

「ゴウ、これは俺からの入学祝せんべついだ。」

 ナニィイイイイイ! こっ、これは!

「伝説の装備『ガクラン』だ。受け取れ。」

 俺は震える手でそれを広げた。何代にも亘って戦士に受け継がれてきたというそれは、吸い込んだ汗を酸味の強い香気に変えて放ち、古びれ、すりきれている。

「ガクエンに漢が絶えて久しい。既にそこは『チャラ男』がはびこり、うわついた恋と萌えに染まった魔窟と化している。ゴウ、お前は漢としてガクエンに乗り込み、ケンカと拳に支配された真のガクエンを取り戻すのだ!」

 ガクランに金糸でれられた『喧嘩上等』の文字スペルが俺の双肩にのしかかってくる。

「ゴウ、『バンチョウ』になれ!」

「ふ、上等だ。」

 俺は……ガクランを装備した!

いくぜエエエエ、闘魂ゴォオオー!


 ユリはぱたんと草子を閉じ、すぐ隣で居眠りをしているスライムを揺すった。

「あ?」

「ガクラン、希望。」

「えええ、俺が? 着るのか?」

「ゴウ、トレース。」

「いや、実在してねぇと無理だから。」

「8000イケメン。」

「あああ、お前の基準がますます解らなくなったよ。」

「けち。」

 ぷいと横を向いたユリの唇は、楽しそうにほころんでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ