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1.辺境の地の領主の子として転生。これは内政チートのフラグだろうか?

 結論から言おう。転生チートは無理だった。

 異世界で国境近くを治める貴族の子どもとして生まれたと分かった時は、赤子ながらにガッツポーズをとって歓んだものだ。内心で「農地が痩せていたりしたなら、まずは農地改良からだな」なんて思いながら。

 だがある程度自分で動き回れるようになって屋敷の外に出た俺が見たのは、肥沃な大地でのんびりと農業をしつつ平凡を暮らす人々だった。

 思わず項垂れた俺を誰が責めようか。

 父の治める領地は元より山から流れ込む清水が豊富で水不足に縁がなく、広葉樹や針葉樹などの様々な木々が根付き、そこに色々な動物たちが生息する――長閑としか言いようがない土地だった。それが原因で隣国から狙われたりしていたために古くから王領で、この地を治めるのは名目上は王族だった。実際には王の信頼の厚い貴族が治めていたらしいが。

 しかし父は違う。武にも智にも魔法にも優れた、着任当時の王の同腹の弟だった。当時は隣国に好戦的な主君が立ち、この土地を力で得ようとしていたための選任だったそうだ。

 父は見事にこの地を守り抜いた。その武勲はこの国では誰もが知る英雄奇談として幼い子でも知っている。俺も寝物語にその物語を聞いて育ったし、乳母にねだったこともある。

 残念なことに物語はここで終わらない。その戦いの中で愛しい女性を亡くした父は、その女性が再びこの地に生まれ変わるまで生き続けると――己の時を止めてくださりやがったのだ。この世界に輪廻転生の概念があったことに驚きだが、先の見えない時間を生きることを選んだ父の恐ろしいまでの執念に絶句である。どん引きである。再びこの地に生まれた母には当然前世の記憶などなく、父がその母を口説き落とすまでは涙無くしては語れない熱愛物語として、これまたベストセラーであるという。俺の正直な感想として「光源氏……」だったとだけ、追記しておく。

 自分の寿命まで止めてしまう強大な力を持った魔法使いが治める地に攻め入る輩などいるはずもなく、それまで他国に虎視眈々と狙われていたこの地は一変にして平和になった。更には望郷の念を感じてもらえるようにと最低限の発展に留めながら、豊かな地へと変化させた父の手腕は恐ろしいものがある。

 そんな訳であるから農業改革なんてものは必要なく、更には父の身に何か不幸があって幼い身の俺に領地がのしかかってくる……なんてこともあり得ない。冗談抜きで、あの父はチートだ。その上不老不死に近い。父は母の時間も近いうちに完全に止めて、二人で永遠の時を過ごすのだとのたまってくれている。まあ、父が母にべったりで政務をしなくなる心配なら存在するが、父が暫く仕事をしなくても問題がないくらいには有能な人材を育成済みだってんだがら恐れ入る。

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