0.現実逃避だったことはわかってた。それでも希望として心のどこかで思ってた。
主人公はどちらかと言えばネガティブです。
また、下ネタや下品な表現を含む場合があります。
あらすじにあるように、一話が短いです。
以上をご了承ください。
正直に言おう。俺は現代の知識を持って文明の送れた場所に転生して「俺TUEEE」をしてみたかった。中二病(笑)だってことは百も承知だが、してみたかったんだから仕方ない。
もっとも、ドジでノロマだったせいで色々あって人間不信な自分を自覚している身としては、いま生きている世界に嫌気を感じて、自分をマンセーしてくれる世界に行きたいんだってことは分かってる。
だからテキトーに二十代を過ごして、三十代になったら父方のじーちゃんのところに行って農業でもしようと……かなり本気で思ってた。人間相手に生きるよりも作物や自然相手の方が気が楽だってのもあるし、手をかけただけ返ってくる素晴らしいところも気に入っていた。
そんな訳で、年の半分をじーちゃんのところで農業をして過ごし、残りの半分をアルバイトで金を稼ぎつつ知識を頭に放り込むことにつぎ込んでいた。別に本当に転生チートに使えるからといった理由でなく、農業経営に必要になるかも知れないという理由でだ。
そんなある日のことだった。
夢か現か、俺は転生することになったのだ。トラック前に飛び出した子ども、それを助けに飛び出し――損ねて縁石でこけて頭を強打した俺、薄れる意識の中で子どもを助けた青年を讃える歓声、独り放置な俺を憐れに思った神登場……という、テンプレ乙とはちょっと違う展開によって。