第2話 戦闘艦|白月《はくげつ》、発進!!
俺は死んだはずだった。なのに、生きている。
周囲を見回した瞬間、ここが小惑星に建てた自分の研究所であり、俺が横たわっていたのは自作のコールドスリープ機能付き治療カプセルだと理解した。
だがあの日、何が起きたのか。
そして今、俺はどんな状況に置かれているのか。
疑問が次々と湧き上がる。
「ハルカ……何が起きたんだ?」
問いかけると、ハルカはわずかに表情を曇らせた。
「あの日、自宅にいた私は榛名様から連絡を受けました。榛名様は泣きながらヒロキを助けてと……。状況を聞き、急いで現場へ向かいましたが、到着した時にはマスターはすでに……冷たくなり始めていました。榛名様は治してくれと懇願されましたが……私には……」
「俺の状態を治せるほどの回復魔法は使えない。だから、俺を転移魔法で運び、治療カプセルに入れた……そういうことか」
「はい。そして……」
そこから語られたのは、重すぎる現実だった。
事件の背後には別の国家が関わっていたこと。
真っ二つになった俺の身体を完全に治療するには数千年という時間が必要だったこと。
そして、俺が眠りについた一年後、ハルカも同じように眠りについたこと。
胸の奥が冷たく沈んでいく。
「……榛名は、死んだのか」
「数千年が経過しています。おそらく……生きてはいないかと……」
ハルカの声は静かだった。
その静けさが、逆に現実の重さを突きつけてくる。
「すまん……一人にしてくれ」
「わかりました。……着替え、隣に置いておきますね」
ハルカはそっと服を置き、治療カプセルがある保管庫から静かに出ていった。
残された俺は、声も出せずに泣いた。
自分の判断が、榛名との永遠の別れを招いた。その事実が胸を締めつける。
後悔と自己嫌悪が押し寄せ、息が詰まりそうだった。
そして俺は、涙を拭いながら心の奥で固く誓った。
(……ただ前を向いて生きる)
赤くなった目元をこすり、ハルカが置いていった服に手を伸ばす。
ズボンとTシャツ、上に羽織るジャケットまでは見慣れた形だ。
だが、その下に着るスーツは明らかに現代のものとは違っていた。
左腕のボタンを押すと、薄い布のような素材が一瞬で伸縮し、身体にぴたりと密着する。
まるでヒーロースーツのようだった。スーツ越しに物へ触れても、意外なことに素手で触れた時とほとんど変わらない感触だった。
さらに、温度を自動調節する機能や、どこからともなく瞬時に展開される宇宙ヘルメットのような装備まで備わっているらしい。
数千年の時を経て、俺の知らない技術が当たり前のようにそこにあった。
着替えを終えて保管庫から出ると、ドアの横にハルカが静かに立っていた。
「付いてきて下さい」
促されるまま、俺はハルカの後ろを歩く。
「マスターには、この時代のことをまだ説明していませんでしたね」
「ああ、聞いていないが?」
「現在はG.E.六九三八年百四十二日です……」
「まて、まて。ギャラクティック・イグジスタンス? まずそこから説明してくれ」
あまりに聞き慣れない単語に、俺は思わずハルカの話を遮ってしまった。
「人類が宇宙へ進出し、太陽系を保護区域に設定したことを基準にした新しい紀元です。日付に月が無い理由は、宇宙進出に伴い必要性が薄れたためです。ただ、日付が無いと不便なので、地球の一年三六五日をそのまま日として採用しています」
「なるほど……そういうことか」
その後もハルカの説明は続いた。
人類は宇宙へ進出し、星々を自由に渡る時代となったこと。
地球の国家は形を変えたり消滅したりを繰り返し、いまや銀河全体にコロニーが広がっていること。
さらに、人間以外の知的生命体とも遭遇し、現在は複数の種族が銀河規模の国家を形成していること。
聞けば聞くほど、頭が追いつかない。
「なあ……日本はもう無いのか?」
「あります」
「あるのか!!」
あまりの意外さに、俺は反射的に食い気味で返してしまった。
「あります。現在は政治形態を変え、天桜日皇国と国名を改めています。銀河で最も影響力のある大国だそうです。ここからはかなり遠いですが」
あまりのスケールに、俺はドン引きを隠せなかった。
自分のいた国が、まさか銀河一の大国になっているとは……もはや呆れるしかない。
そんな会話を続けているうちに、両開きの大きなドアの前へたどり着いた。
昔の研究所には無かった設備だ。
自動ドアが開くと、中は真っ暗だった。
俺が一歩踏み込むと、後ろのハルカが照明をつける。
光が満ちた瞬間、息を呑んだ。
そこには、巨大な宇宙船と、その隣に人が乗れるサイズのロボットが静かに佇んでいた。
衝撃の連続で混乱していたが、それ以上に宇宙船とロボットへの興味が勝り、俺はハルカに質問した。
「この機体は?」
「宇宙船と巨大ロボットですが?」
あまりにそのままの返答に、俺は思わずズッコケそうになった。
「いや、そういうことじゃなくてだな! 機体名とか種類名とか、そういうのがあるだろ!!」
ハルカはくすっと笑い、冗談めかして答える。
「冗談ですよ。機体名はまだありませんが、種類名ならあります。宇宙船は戦闘艦大きさは中型クラス。他に小型と大型も存在します。巨大ロボットの方はヒューマノイドパワーアームズ、通称HPA。主に地上での白兵戦に使われています」
「機体名、無いのか……」
「マスターがつけて下さい」
ハルカに機体名を付けてほしいと言われ、俺は腕を組んでしばらく悩んだ。そして、ふと閃く。
「真っ白な宇宙船だから……白月なんてどうだ?」
「いいですね。では、HPAの方は?」
「ホワイトスター……とか?」
「二つとも良い名前ですね。では、白月とホワイトスターで登録しておきます」
ハルカは微笑んだあと、すぐに表情を引き締めた。
「それと、マスターに伝えておかなくてはいけないことがあります。実は……」
数日前、戦闘艦白月のテスト航行をしていた際、この周辺で宇宙盗賊に遭遇したらしい。撃破はしたものの、最近この宙域をうろついているため、研究所が見つかるのも時間の問題だという。
「……それで、この研究所を放棄するのか」
「はい……」
多少なりとも思い入れのある研究所を手放すのは、正直つらい。
「まあいいか。景気づけに、ぱあっと大爆発させるか」
自分に言い聞かせるように、俺はそう口にした。
(形あるものはいつか壊れる……なら、最後くらい派手にいこう)
「わかりました。では私は搬入作業を進めますので、マスターはその間、あのシミュレーターで練習していてください」
ハルカが指差した先には、大小二つの箱のような装置が並んでいた。
「俺が操作するの!!」
「そうですが……? したくないのですか?」
「いや、こういうのって免許とか必要なんじゃないのか?」
宇宙船を操縦するのに免許が必要だと思い込み、ワクワクを必死に抑えていた俺に、ハルカは小さく笑って言った。
「いりませんよ、そんなの」
(納得できない……)
モヤモヤしつつもシミュレーターへ向かう。後部のハッチを開けて座席に座ると、胸の奥が高鳴った。
(……この操縦桿と操縦系統、どこかで見たような)
疑問が浮かんだ瞬間、ハッチの外から覗き込んでいたハルカが声をかけてきた。
「マスター、気づきましたか?」
その言葉で確信した。
これは、俺が昔プレイしていたSFゲームの操縦系統とまったく同じだ。
驚きつつもシミュレーターを起動すると、ハッチが閉じ、ステージ選択の後、戦闘が始まった。
あのゲームは妙にクオリティが高く、コントローラーを動かすと画面の操縦桿も連動していた。
そのおかげで、戦闘艦の操作にはすぐ慣れた。むしろゲーム感覚で楽しくなり、最後のステージだけ少し苦戦したが、一度も撃墜されることなく全ステージをクリアした。
ハッチを開けて外に出ると、無人ドローンと重機を使って搬入作業を進めるハルカの姿があった。手伝おうと声をかけたが、もう一つの小さいHPAシミュレーターをやってほしいと言われ、あっさり却下された。
言われた通りHPAシミュレーターに入ると、こちらは完全に初見で大苦戦した。
まず立ち上がるだけで難しい。何度も転びながら練習し、ようやく立てるようになった。
だが、本番はここからだった。
戦闘に入るとスラスター制御、武器の扱い、姿勢維持、やることが多すぎる。
数時間かけてようやく中盤ステージまでクリアした。
ちなみにピンチになったら即撤退していたので、一度も死んでいない。
(逃げるが勝ちだ)
そんなことを考えていると、HPAシミュレーターのハッチが開き、ハルカが顔を出した。
「マスター、搬入作業が終わりました。この研究所の物はすべて積み込み完了です。残すはHPAシミュレーターだけです」
「わかった。いま出る」
俺はHPAシミュレーターから出ると、白月以外何もなく研究所のあちこちの部屋を最後に見て回った。戻って来ると、白月の後部ハッチの前にハルカが立っていて俺が近づくとハルカは申し訳無さそうに声をかけて来た。
「マスターすみませんこんな事になってしまい」
「いいよ別に気にしなくて。それより、白月の艦内とか武装とかの話を聞いてなかったから教えてよ」
「はい」
ハルカは笑顔でそう言って楽しそうに話してくれた。
この戦闘艦はハルカが10年かけて俺の為に建造したものらしく、先が尖った流線型の機体ですべての宇宙船はじゅうんだはずだった。なのに、生きている。
周囲を見回した瞬間、ここが小惑星に建てた自分の研究所であり、俺が横たわっていたのは自作のコールドスリープ機能付き治療カプセルだと理解した。
だがあの日、何が起きたのか。
そして今、俺はどんな状況に置かれているのか。
疑問が次々と湧き上がる。
「ハルカ……何が起きたんだ?」
問いかけると、ハルカはわずかに表情を曇らせた。
「あの日、自宅にいた私は榛名様から連絡を受けました。榛名様は泣きながらヒロキを助けてと……。状況を聞き、急いで現場へ向かいましたが、到着した時にはマスターはすでに……冷たくなり始めていました。榛名様は治してくれと懇願されましたが……私には……」
「俺の状態を治せるほどの回復魔法は使えない。だから、俺を転移魔法で運び、治療カプセルに入れた……そういうことか」
「はい。そして……」
そこから語られたのは、重すぎる現実だった。
事件の背後には別の国家が関わっていたこと。
真っ二つになった俺の身体を完全に治療するには数千年という時間が必要だったこと。
そして、俺が眠りについた一年後、ハルカも同じように眠りについたこと。
胸の奥が冷たく沈んでいく。
「……榛名は、死んだのか」
「数千年が経過しています。おそらく……生きてはいないかと……」
ハルカの声は静かだった。
その静けさが、逆に現実の重さを突きつけてくる。
「すまん……一人にしてくれ」
「わかりました。……着替え、隣に置いておきますね」
ハルカはそっと服を置き、治療カプセルがある保管庫から静かに出ていった。
残された俺は、声も出せずに泣いた。
自分の判断が、榛名との永遠の別れを招いた。その事実が胸を締めつける。
後悔と自己嫌悪が押し寄せ、息が詰まりそうだった。
そして俺は、涙を拭いながら心の奥で固く誓った。
(……ただ前を向いて生きる)
赤くなった目元をこすり、ハルカが置いていった服に手を伸ばす。
ズボンとTシャツ、上に羽織るジャケットまでは見慣れた形だ。
だが、その下に着るスーツは明らかに現代のものとは違っていた。
左腕のボタンを押すと、薄い布のような素材が一瞬で伸縮し、身体にぴたりと密着する。
まるでヒーロースーツのようだった。スーツ越しに物へ触れても、意外なことに素手で触れた時とほとんど変わらない感触だった。
さらに、温度を自動調節する機能や、どこからともなく瞬時に展開される宇宙ヘルメットのような装備まで備わっているらしい。
数千年の時を経て、俺の知らない技術が当たり前のようにそこにあった。
着替えを終えて保管庫から出ると、ドアの横にハルカが静かに立っていた。
「付いてきて下さい」
促されるまま、俺はハルカの後ろを歩く。
「マスターには、この時代のことをまだ説明していませんでしたね」
「ああ、聞いていないが?」
「現在はG.E.六九三八年百四十二日です……」
「まて、まて。ギャラクティック・イグジスタンス? まずそこから説明してくれ」
あまりに聞き慣れない単語に、俺は思わずハルカの話を遮ってしまった。
「人類が宇宙へ進出し、太陽系を保護区域に設定したことを基準にした新しい紀元です。日付に月が無い理由は、宇宙進出に伴い必要性が薄れたためです。ただ、日付が無いと不便なので、地球の一年三六五日をそのまま日として採用しています」
「なるほど……そういうことか」
その後もハルカの説明は続いた。
人類は宇宙へ進出し、星々を自由に渡る時代となったこと。
地球の国家は形を変えたり消滅したりを繰り返し、いまや銀河全体にコロニーが広がっていること。
さらに、人間以外の知的生命体とも遭遇し、現在は複数の種族が銀河規模の国家を形成していること。
聞けば聞くほど、頭が追いつかない。
「なあ……日本はもう無いのか?」
「あります」
「あるのか!!」
あまりの意外さに、俺は反射的に食い気味で返してしまった。
「あります。現在は政治形態を変え、天桜日皇国と国名を改めています。銀河で最も影響力のある大国だそうです。ここからはかなり遠いですが」
あまりのスケールに、俺はドン引きを隠せなかった。
自分のいた国が、まさか銀河一の大国になっているとは……もはや呆れるしかない。
そんな会話を続けているうちに、両開きの大きなドアの前へたどり着いた。
昔の研究所には無かった設備だ。
自動ドアが開くと、中は真っ暗だった。
俺が一歩踏み込むと、後ろのハルカが照明をつける。
光が満ちた瞬間、息を呑んだ。
そこには、巨大な宇宙船と、その隣に人が乗れるサイズのロボットが静かに佇んでいた。
衝撃の連続で混乱していたが、それ以上に宇宙船とロボットへの興味が勝り、俺はハルカに質問した。
「この機体は?」
「宇宙船と巨大ロボットですが?」
あまりにそのままの返答に、俺は思わずズッコケそうになった。
「いや、そういうことじゃなくてだな! 機体名とか種類名とか、そういうのがあるだろ!!」
ハルカはくすっと笑い、冗談めかして答える。
「冗談ですよ。機体名はまだありませんが、種類名ならあります。宇宙船は戦闘艦大きさは中型クラス。他に小型と大型も存在します。巨大ロボットの方はヒューマノイドパワーアームズ、通称HPA。主に地上での白兵戦に使われています」
「機体名、無いのか……」
「マスターがつけて下さい」
ハルカに機体名を付けてほしいと言われ、俺は腕を組んでしばらく悩んだ。そして、ふと閃く。
「真っ白な宇宙船だから……白月なんてどうだ?」
「いいですね。では、HPAの方は?」
「ホワイトスター……とか?」
「二つとも良い名前ですね。では、白月とホワイトスターで登録しておきます」
ハルカは微笑んだあと、すぐに表情を引き締めた。
「それと、マスターに伝えておかなくてはいけないことがあります。実は……」
数日前、戦闘艦白月のテスト航行をしていた際、この周辺で宇宙盗賊に遭遇したらしい。撃破はしたものの、最近この宙域をうろついているため、研究所が見つかるのも時間の問題だという。
「……それで、この研究所を放棄するのか」
「はい……」
多少なりとも思い入れのある研究所を手放すのは、正直つらい。
「まあいいか。景気づけに、ぱあっと大爆発させるか」
自分に言い聞かせるように、俺はそう口にした。
(形あるものはいつか壊れる……なら、最後くらい派手にいこう)
「わかりました。では私は搬入作業を進めますので、マスターはその間、あのシミュレーターで練習していてください」
ハルカが指差した先には、大小二つの箱のような装置が並んでいた。
「俺が操作するの!!」
「そうですが……? したくないのですか?」
「いや、こういうのって免許とか必要なんじゃないのか?」
宇宙船を操縦するのに免許が必要だと思い込み、ワクワクを必死に抑えていた俺に、ハルカは小さく笑って言った。
「いりませんよ、そんなの」
(納得できない……)
モヤモヤしつつもシミュレーターへ向かう。後部のハッチを開けて座席に座ると、胸の奥が高鳴った。
(……この操縦桿と操縦系統、どこかで見たような)
疑問が浮かんだ瞬間、ハッチの外から覗き込んでいたハルカが声をかけてきた。
「マスター、気づきましたか?」
その言葉で確信した。
これは、俺が昔プレイしていたSFゲームの操縦系統とまったく同じだ。
驚きつつもシミュレーターを起動すると、ハッチが閉じ、ステージ選択の後、戦闘が始まった。
あのゲームは妙にクオリティが高く、コントローラーを動かすと画面の操縦桿も連動していた。
そのおかげで、戦闘艦の操作にはすぐ慣れた。むしろゲーム感覚で楽しくなり、最後のステージだけ少し苦戦したが、一度も撃墜されることなく全ステージをクリアした。
ハッチを開けて外に出ると、無人ドローンと重機を使って搬入作業を進めるハルカの姿があった。手伝おうと声をかけたが、もう一つの小さいHPAシミュレーターをやってほしいと言われ、あっさり却下された。
言われた通りHPAシミュレーターに入ると、こちらは完全に初見で大苦戦した。
まず立ち上がるだけで難しい。何度も転びながら練習し、ようやく立てるようになった。
だが、本番はここからだった。
戦闘に入るとスラスター制御、武器の扱い、姿勢維持、やることが多すぎる。
数時間かけてようやく中盤ステージまでクリアした。
ちなみにピンチになったら即撤退していたので、一度も死んでいない。
(逃げるが勝ちだ)
そんなことを考えていると、HPAシミュレーターのハッチが開き、ハルカが顔を出した。
「マスター、搬入作業が終わりました。この研究所の物はすべて積み込み完了です。残すはHPAシミュレーターだけです」
「わかった。いま出る」
HPAシミュレーターから降りた俺は、白月以外何もなくなった研究所を最後に見て回った。
長い時間を過ごした部屋、作業台、工具棚、どれも懐かしい。
だが、もう戻ることはない。
戻ってくると、白月のスロープ式後部ハッチの前にハルカが立っていた。
俺が近づくと、彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「マスター……すみません、こんなことになってしまい」
「いいよ、気にすんな。それより白月の艦内とか武装とか、まだ聞いてなかったから教えてくれ」
「はい」
ハルカはぱっと表情を明るくし、楽しそうに説明を始めた。
この戦闘艦は、ハルカが十年かけて俺のために建造したものらしい。
先端が尖った流線型の機体で、すべての宇宙船に搭載されている重力ドライブを中心に設計されている。
通常、この重力ドライブには擬似飛空石、この時代では重力コアと呼ばれるものが使われる。
重力ドライブは宇宙船の心臓部であり、ワープ装置でもあり、宇宙船で最も高価なパーツだ。
基本的に一隻につき一基しか搭載されない。
だが、白月は違った。
本物の飛空石を使った重力ドライブを二基搭載している。
その出力は軍の大型戦艦すら軽く超えるほどで、ハルカ曰くとんでもない性能らしい。
武装も完全にオーバースペックだった。
通常の光学ビーム砲を改良し、異世界の魔法銃の機能を組み込んだ光学魔導砲を上下左右に一門ずつ、計四門。
さらに左右のハッチには、大型艦用の五連装ミサイルと、三連装多層レールカスケード砲、実体弾を光速で撃ち出すレールガンを切り替えて使用できる武装が搭載されている。
シールド出力も大型艦並で、守りも万全。
そして極めつけは、異世界から持ち帰った神話級兵器、魔導破壊砲。
最大出力では星一つを破壊できるという代物で、発射時には機体先端が開き、砲身が展開するらしい。
(いや、怖すぎるだろ……いくら再発射に二十日かかるとはいえ)
俺は説明を聞きながら艦内を歩く。
後部ハッチの他に、下部にも大型物資用のスライドハッチ。
リビング、ダイニング、キッチン、トイレ、個室、生活に必要なものは一通り揃っている。
(キッチンは……何もないんだな)
そして最後に、コックピットへ。
そこは一八〇度モニターが広がる操縦席と、四つのサブシートが並ぶ本格的な操縦空間だった。
俺はメインシートに座り、隣にハルカが腰を下ろす。
機体を起動すると、モニターに外の景色が映し出された。
「じゃあ行くぞ。準備はいいか!!」
「準備完了です」
白月の前方にあるエアロックが開く。
俺は操縦桿を握り、息を吸い込んだ。
「戦闘艦白月、発進!!」
ハッチが開いた瞬間、白月は滑るように宙へ飛び出した。
その時、俺は一度でいいから言ってみたかったあのセリフを、ついノリノリで口にしていた。
話を書いていたら8000字くらいになっていました。
次回は…………いつにしようかな……2月中には出します。PV数が伸びいていれば早めに出します。
応援よろしくお願いします。
こんな感じで良いのだろうか……後書きはいつも何を書くか迷う作者です。
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