卒業報奨金
さぁ、皆!
僕からの餞別だよ~。
ルドヴィークは自らが受け持った生徒たちに、卒業報奨金を渡すために声をかけた。
無事卒業式を迎えた生徒には、王家から多額の報奨金が支給される。
この学校に集まる生徒の大半は、報奨金目当てに黒髪となっていくのだ。
さて、僕の声掛けに対して一番に駆け寄ってきたのは、やはりあのアホな子だった。
なに、なに?
その手にある封筒は何ですか、先生!
ちょうだい、ちょうだーい!!
全く無邪気だ。
報奨金目当ての入学でなかったのは、あの子ぐらいだろう。
最も、あの子には記憶がないのだから、なんで黒髪になったのかは本人にも分からないのだが…。
ほんとにアホな子だな…。それでも、あの子には何かがある、気がする。
というか、あって欲しい。
この僕を変えた君なんだ。
ねぇ、何もない、なんて許さないよ?
突然不穏な目つきをした鬼畜教師。
な、なんだ?別に俺を睨んでるわけじゃないよね、先生…。
と、とりあえず笑顔だ。はい、にっこりー♪
アホな子がアホな笑顔を浮かべている頃、彼の同級達も別の理由から笑顔を浮かべていた。
ひきつった笑顔を。
「先生が餞別っていうと、あのセンベツを思い出して、正直震えが止まらないな…」
「本当だよ。あのルドヴィークが担任でよく生き残れたよな…。」
「でもさ、俺らはまだましだったんだよ。あの子は戦場であの日を迎えたんだ。」
「そうだったな。たぶんルドヴィークは、あの子を殺すつもりだったんだ…。」
「でも、あの子は生きて帰ってきた。ボロボロではあったが…。」
「ああ。…だから俺たちは、センベツを軽く見てしまったのかもしれないな。」
そう、新入生が迎える選別の日。
その日を境に、ある能力以下の生徒はこの学校を去っていく。
9割の生徒が攻撃属性だった俺たちの年。
いくら、あのルドヴィークが担任とはいえ、半分程度は残るんじゃないかと囁かれていた楽観論。
あの日、180人いた攻撃属性クラスの生徒は、わずか9名にまで減らされた。
生死を問わずに…。
「これが現実だよ。」とルドヴィークは言った。
黒髪が行く戦場での生存率はこの程度だと、彼は薄ら笑いを浮かべて俺たちに告げた。
覚悟していた未来よりずっとずっと悲惨な運命に、思わず足がすくんだ。
それでも、選別に生き残った俺たちはこの道を進むしかなかった。
ルドヴィークの厳しさは、俺たちへの優しさだったのかもしれない。
俺たちの道に退路はない。
生半可な覚悟では死ぬだけだと、現実を伝えてくれたのはルドヴィークだけだった。
中途半端な同情より、同じ目線に立つその姿勢のほうが遥かに勇気を持てた。
時は止まらない。
過去に戻ることもできない。
常に歩み続けるしかないのだ。




