おっちゃんの餞別2
へぇ、結構ちっちゃい!
「おい、アホ息子…。感想はそこじゃないだろ。家紋を見ろ、家紋を!」
そうでした。
でもさ7年前の服って結構感慨深くない?
成長したなーってかんじで。
「そうだな、身長だけは成長したからな。そこだけは成長したな!」
おい、おっちゃん。悪意込めすぎだろ、その発言。
それにしてもおっちゃんの言うとおり、こんなの覚えられないって。
なんなの、この家紋。
お前理解できる、リオウ?
「確かに相当複雑だが…まぁ、多分大丈夫だ。軍に事情を話せば、この家紋を特定してくれるだろう。」
そんなことまでしてくれるのか。凄いな!
「まぁ…俺たちの家族を知っておくことは、国にとって、いざという時脅しの材料となるからな。」
おい、どこまでもえげつないな…この国は。
「だが、事情を話すにしろ、一つ問題があるな。」
なんで、ニヤニヤしているんだい。リオウ君!
問題があるんだろ?困った顔をしろよ!
「あぁ、大きな問題だ。軍に頼るには、まずお前自身が軍人になる必要があるからな。」
はい、嫌です。絶対嫌だ!
もう、過去なんてどうでもいい。
いーやーでーす。
「そこで親切な俺は、お前の分の入隊申請書も事前に入手しておいたぞ。」
ちょっと待て!いや、落ち着こう。
軍を頼る必要性に気がついたのは今日だ。ってか今だ!
なのに、なんで入隊申請書がここにあるんだ。
「細かいことは気にするな、サインしろ!」
おかしいだろ、ってか、人生を左右する重大な話だろ!
「俺とお前の仲だろ、俺を信じてサインしろ。」
どんな仲だよ!何が悲しくて、お前と自殺行為に走らなきゃいけないんだよ。
「…俺が代筆するか?」
おっちゃんは黙ってろ!
「軍には興味ないんだが、入隊祝い金は欲しくてな。」
あのなぁ…。金を手にいれるのは一瞬だが、軍は一生付き纏うんだぞ!
よく考えろよ。
「ああ。さすがに俺も迷ってたんだが、お前が入隊するなら面白いからな!」
勝手に人の人生決めるなー。
「おい、リオウ。書けたぞ、どうだ?」
は?何が書けた…っておい、それは!
「ああ、素晴らしいです。これで提出出来ますね。」
待て!詐欺だ、犯罪だろ。
俺は黙ってろって言ったんだ、黙って代筆しろなんて言ってない!
こんなの認めないぞ!!
いつになく親友に抗議していた少年だが、突然硬直したかと思うと、ばたりと倒れた。
「やぁ、君たちが軍に入るって聞こえてね。僕も教師をやめて軍人になろうって今決めたよ。」
そこに笑顔のルドヴィークがやってきた。
彼の耳には、間違いなく少年の抗議の声が聞こえていただろうが、はっきりと無視していた。
というか、少年の意識を奪ったのは無邪気なルドヴィーク先生だった。
「君が平穏無事に暮らすなんて許さないよ?事件の渦中に巻き込まれて、もっと面白くして欲しいんだ。」
運命に抗うことを決めたルドヴィーク。
闘志の目覚めた男の、狂気とも言える情熱は凄まじいものであった。
そんな彼にとって少年は、争いの渦中にいるべき人物だった。
「君は僕たちの希望となる。ねぇ、僕が君を希望にしてみせるよ。」
少年にとって非常に傍迷惑な道が、目の前に広がりつつあった。
時は止まらない。
過去に戻ることもできない。
常に歩み続けるしかないのだ。




