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瀬能杏子と国本一樹の帰り道 僕の心の中の殺人 1.81話

杏子「なんか、疲れました。」

国本「そうか?」

杏子「国本君は神経が図太いのではないですか?」

国本「なんだよそれ?」

杏子「お母さんを見ていられませんでした。」

国本「ああ。あれでもお袋さん、マシになった方だぜ?」

杏子「・・・そうなんですか。」

国本「当時は痩せちまってさぁ。・・・死ぬんじゃねぇかって思ってたよ。」

杏子「国本君。よく、そんなお宅に顔を出せていましたね?・・・尊敬しますよ。」

国本「まぁなぁ。・・・でもよ、織部が死んだからっていって、急に態度、変えるのもおかしいだろ?・・・うちの親も、なるべく、今までと同じにしてろって言われててさ。」

杏子「・・・国本君のご両親が偉いですよ。」

国本「俺じゃねぇの?」

杏子「こんな事件が起きたら、同じように接するなんて、難しいと思いますよ?」

国本「かもなぁ。俺も、いつまで、こうやって線香立てに来れるか、分かんねぇしさ。」

杏子「・・・ずっと、じゃないんですか?」

国本「なるべく来たいとは思うけどさ。・・・最初に行ったのだって、親が言うからさ。半分、仕方なくだよ。」

杏子「え?親友だからじゃないんですか?」

国本「瀬能さんさ、いくら親友でも、一周忌に顔を出すのは勇気がいるぜ?・・・親戚でもなんでもないんだからさ。」

杏子「そりゃそうですけど。」

国本「親が、織部んちの親、見てていたたまれなくなって、お前が線香、あげて来いってさ。簡単に言ってくれるよな。俺だって、向こうの親御さん、見てらんなくって。それでも、織部の奴、友達だったし、線香ぐらいあげてやんねぇと可哀そうだし、一人で行くのが嫌だったから、友達誘って、行ったんだよ。それが最初。」

杏子「・・・そういう経緯があったんですか。」

国本「でぇ、瀬能さん、中学ん時、線香あげ、行きたかったの?・・・瀬能さんこそ神経図太いんじゃないの?」

杏子「・・・一応、生徒会長やってましたし。ほら、織部君のお母さん、私の事、覚えていてくれたじゃないですか?・・・かわいい子がいたって。」

国本「・・・自分で言うの、そういうの?」

杏子「私、自分でも顔は良い方だと自覚しているので。」

国本「・・・あ、そう?なの?」

杏子「国本君が好きなタイプとは違うと思いますが、でも、私、かわいいでしょ?・・・国本君、スカートが短くて、運動部やっているような、いかにも、さわやかそうな女子が好みですよね?こんな風に、あざとくボディタッチしてくるような?」

国本「あ、やめろ!・・・あ、そうだよ。」

杏子「・・・同じバレーボール部だった、根岸さん。好きだったんでしょう?」

国本「ああああああ。ああ、よく覚えてるな。」

杏子「根岸さんとお付き合いしているんですか?」

国本「あのなぁ、している訳ねぇじゃん!」

杏子「・・・そうですか。てっきり告白でもしたのかと?」

国本「する訳ねぇじゃん!する訳ぇ!」

杏子「ああ。そうでしたか。・・・根岸さんなら、国本君が押せば、いけたと思いますけど?」

国本「・・・えっ?・・・え!・・・ほんと?」

杏子「国本君。・・・・当時の話ですよ。当時の。根岸さん、男子とよく話していた印象ですが、あれで、意外と奥手で、男子と二人きりになるとてんでダメで、女子の間では、わざとやっているのか、天然なのか、よく話題になっていましたよ。」

国本「ああああ。ああああ、そうなの。そうだったんだ。ああああ。」

杏子「あ、今はもうダメですよ?根岸さん、彼氏いるから。」

国本「なんだよぉ!いんのかよぉ!」

杏子「そりゃ、モテるでしょ?ばんばん、ばんばん、ボディタッチしてくる子がいたら。ほらほらほらほらほら。」

国本「・・・・はい、はい、はい、やめて、やめて、痛いから、痛いから。・・・一瞬、その気になっちゃったじゃん!・・・根岸、彼氏いるのかぁ。」

杏子「ちなみに、私、今、彼氏、いませんけど?」

国本「あ、瀬能さん?・・・ああ、いいわ。また今度にするわ。」

杏子「どういう事ですか?目の前に、全国級の美少女がいるというのに、その薄い反応は?」

国本「瀬能さん、なんか違うもん。俺の趣味じゃないし。いらない情報、放り込んでくるし。・・・・って、言うかさ。根岸に彼氏がいるの知ってて、今、俺と付き合っているとか、聞いたわけぇ?頭、おかしいの?」

杏子「アハハハハハハハハハハハハハハハ。・・・よく言われます。」

国本「・・・言われるんだ。言われるよね?瀬能さんなら。」

杏子「織部君のお母さんも、私が卒業式で、代表の答辞、やってたの覚えてくれていましたよね。」

国本「そりゃそうだろ。・・・織部、いねぇのに、卒業式に出るんだからさ。あれも供養の一つなんだろ?」

杏子「う、ううん。私は違うと思いますけど、ご供養というよりかは、けじめじゃないですか?たぶん、学校側からも出席してくれるよう打診したと思いますから。」

国本「瀬能さん、知らないの?」

杏子「そういうのは学校関係者しか知りませんよ。卒業式自体に生徒会は関係ありませんし。それに私、元生徒会長だったし。」

国本「あ、そうか。そうなるよな。ま、でも、お袋さん、喜んでたじゃん。・・・やっぱり同級生が線香、立てに来てくれるだけで嬉しいんだろうな。」

杏子「・・・引っ越した先にまで押しかけてしまったのは、今更ですけど、失敗したかなとは思いました。」

国本「事件も三年経っても、何も解決してないしな。そりゃ親御さんからしてみたら、気の毒な話だよ。」

杏子「そう言えば、警察の人、いましたね?」

国本「ああ。担当の刑事さんっぽいな。去年と、違う人だったけど。・・・事件、進展ねぇのかなぁ。」

杏子「やっぱり、捜査報告に来るんでしょうか?」

国本「そうだろ?・・・最初、来た時、やっぱり聞かれもん。俺達。・・・事件の時の事。散々、話したんだけどな。もう話す事ないっていったら、思い出す様な事があったら教えてくれってさ。・・・俺達、正直、学校で部活やってたから、分かんねぇんだよ。分かんねぇ事、聞かれても、答えようがないし。・・・はぁ。織部の奴も、なんで死んじまったのかねぇ。」

杏子「・・・やっぱり事件だったんですか?」

国本「・・・。いきなり人間が腹から血を出して倒れていて、これが事故です、って言えないだろ?」

杏子「私達には、どういう原因で亡くなったのか、説明はありませんでしたよ。」

国本「あ、・・・。あ、そうか。」

杏子「・・・なんですか?いやらしい目で見ないで下さい。」

国本「・・・警察も織部が殺された、とは言わないんだ。織部の親御さんには、話していると思うけどな。事件があった時から、アーケード街で、不審者がいたらしくて、そいつの事を聞かれたよ。・・・でも、俺達、学校で部活やってたから知らねぇんだ。丸三年だぜ?瀬能さん、事件がまるで進展しない理由、分かる?」

杏子「・・・いやぁ。そんな事、聞かれても。」

国本「物的証拠が見つからないの。」

杏子「・・・証拠?」

国本「腹から血を出させる物だよ。」

杏子「・・・包丁とか、って事ですか?」

国本「警察は、俺達に、不審者と凶器、それを見なかったか?とみんなに聞いてる。・・・そりゃぁ、色々、噂はあるぜ。どこまで信憑性があるかは謎だ。瀬能さんさ、まったく織部と関係ない奴が、バカな噂を流してたりするんだけど、織部に近い、俺からすると、頭にくるような話ばっかりだったよ。不審者でも凶器でも、どっちかが見つかれば、話が前に進むんだろうけどな。」

杏子「・・・一つ、いいですか?織部君の、お腹。傷口を見れば、凶器は特定できるんじゃないのですか?」

国本「・・・。ま、そうだろうね。」

杏子「仮に、大量出血を招く血管を傷つけられたとして、そんな血管は、背中側に近い方にあります。・・・お腹から傷つけられたのか、背中から傷つけられたのか、それによっても、話が変わってくると思うのですが?」

国本「・・・瀬能さん、織部の死因に興味があるの?」

杏子「いやぁ、そういう訳では。先程も話していたように、事件でも事故でも、織部君の問題がすっきりしないのでは、余計、親御さんも気の毒ではないかと思ったものですから。・・・本当に、警察は何をやっているのでしょう。」

国本「けっきょく、話はそこに戻っちゃうんだよ。警察なにやってんの!ってさ。」

杏子「凶器が出てこないって事は、犯人が未だに持っている、可能性があるって事ですよね?」

国本「そうだろう?犯人と凶器が一緒にある訳だから、見つかれば、一気に解決なんだけどな。」

杏子「ああ、そうだ。国本君に聞くことがありました。」

国本「・・・?なんだよ?」

杏子「織部君に、当時、彼女、いました?」

国本「・・・織部に?・・・いねぇだろ?」

杏子「ザーメン安田さんの事が好きだった、というのは周知の事実として、他に、例えば、インターネット上の友達とか、古いですけどペンフレンドとか、あと、ラジオのリスナー仲間とか、織部君に女の影はありませんでしたか?」

国本「瀬能さんの言っている意味がまったく理解できないんだけど。・・・瀬能さん、織部の事、好きだったの?」

杏子「それは断じて無いと以前、話しましたよね?そうではなく、織部君に女の影が無かったか、それを知りたいんです。」

国本「そういう奴がいたら、墓前に線香、あげに来るだろ?今日だって。一回もそういう奴、見た事ないし、お袋さんも言ってなかったしなぁ。・・・あいつ、女としゃべれねぇだろ?」

杏子「私、織部君の事をそれほど知らないので、そういうの言われても分からないのが本当の所です。」

国本「それからさ、安田の事が好きだったって、みんな言ってるけど、織部、それほど安田の事、気にしてなかったんだぜ?周りが言うから、ムキになってただけで、そんなに好きじゃなかったんだよ。本当は。」

杏子「それ、本当ですか?・・・ザーメン安田さんが反対にかわいそうじゃないですか?」

国本「ほら、安田も安田でああいう性格だからさ。織部っていうと安田っていう図式がいつの間にか出来ちゃったからなぁ。冷やかしてた奴らも悪いけど。」

杏子「・・・国本君は、普通に女子と話が出来てましたもんね?・・・根岸さんとだけしゃべれなかっただけで。」

国本「根岸ともしゃべってた。告白できなかっただけで。・・・あのねぇ、女子だから、とか気にする方がどうかしてると俺は思うぞ?」

杏子「うっわ。・・・モテ男の意見です。・・・ちなみに、私もそれは同意見です。」

国本「・・・ああ、瀬能さんはそう思うよ。あと、なんか、聞いたけど、なに、地域の高校で、合同祭やるんだって?その委員やってるとか聞いたけど?」

杏子「ええ。話が早いですね?そうです。実行委員やってます。」

国本「相変わらずだね、瀬能さんは。」

杏子「?・・・そうですか?」

国本「人前に立つのが好きというか、目立つの好きというか、」

杏子「ううん。そうですねぇ。天性の性格なので。何とも言えません。今日は、国本君のおかげで、中学の時にやり残した課題が一つ、解決できました。あとは、事件が早く解決して、本当の意味で、織部君の墓前に報告できたらいいですね?」

国本「・・・はぁ。そうだな。じゃ、俺はこっちだから。あ、瀬能さん、織部の事だけじゃなくても、何かあったら、連絡くれよ。」

杏子「・・・国本君が、顔面偏差値の高い友達を幾人か用意できるのであれば、連絡します。」

国本「・・・。瀬能さんと同じ位、性格の良い女子を集めてくれたら、俺も、連絡するよ。」

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